みなさんはムラサキカムリクラゲという名前を聞いたことがあるでしょうか。
初耳だという方がほとんどだと思います。
それもそのはず、ムラサキカムリクラゲは目撃例の少ない貴重な生き物なのです。
今回は、そんな謎に包まれたムラサキカムリクラゲの生態をみなさんにご紹介していきます。
ムラサキカムリクラゲってどんな生き物?
ムラサキカムリクラゲは、カムリクラゲ目ヒラタカムリクラゲ科に属します。
世界中の海域の深海に生息していますが、個体数が少ないのか捕獲例は滅多にないため、詳しい生態はほとんどわかっていないというのが現状です。
ムラサキカムリクラゲの外見
カムリクラゲは漢字で「冠水母」と表します。
カムリクラゲ目に属する仲間は、その名のとおり冠のような特殊な形状をしています。
英語では「Coronate Medusa」と呼ばれているそうです。
Coronateは「冠、王冠」を意味し、Medusaはみなさんご存知ギリシャ神話に登場する怪物の他に「クラゲ」を意味する言葉でもあります。
クラゲは「水母」の他に「海月」と表すことができます。海の月と書いてクラゲと読ませる日本語名もロマンチックですが、触手を蛇になぞらえた英語名もなかなか情緒があるといえるのではないでしょうか。
少し話が逸れてしまいましたが、ムラサキカムリクラゲは「冠」という言葉で片付けることができない特殊な形状をしています。
円盤状の傘の周りに20を超える長い触手がざわめく様は、さながらUFOか宇宙生物のようです。
カムリクラゲの仲間
カムリクラゲ目の仲間に、クロカムリクラゲというものがあります。
ヒラタカムリクラゲ科に属するムラサキカムリクラゲと違い、クロカムリクラゲはクロカムリクラゲ科に属します。
円盤状の傘をもつムラサキカムリクラゲとは違い、烏帽子のような円錐状の傘をもっています。
多くのクラゲの仲間と同じように傘の色は半透明ですが、発光性のプランクトンを捕食しても光が外に洩れないようにその胃袋は真っ黒です。
ムラサキカムリクラゲと同じように世界中の海域の深海に生息していますが、個体数が多いのかムラサキカムリクラゲよりも多くの捕獲例が報告されています。
エフィラクラゲはカムリクラゲ目エフィラクラゲ科に属します。
ムラサキカムリクラゲと同じように円盤状の傘をもっていますが、大きさは7.0~10mmと非常に小ぶりなクラゲです。
10cm以上にも達する群体を形成し、その群体は「イラモ」と呼ばれます。
ムラサキカムリクラゲの特殊能力
ムラサキカムリクラゲは「Alarm Jellyfish」という異名があります。
直訳すると「警報海月」。その名のとおり、ムラサキカムリクラゲは高度な警報機能を備えています。
捕食者に襲われそうになると強い光を発しますが、その目的は捕食者を驚かせることではありません。
捕食者よりも大きな深海生物を呼び出し、捕食者を襲うように仕向けるために発光するのです。
一見するとよく発達した生態のように思えますが、広大な深海の世界で果たしてそのように上手くことが運ぶのか、疑問は残ります。
ただムラサキカムリクラゲから発せられる光自体かなり強力なものだそうで、目くらましの役割も果たしているそうです。
そちらがメインなんじゃないかとツッコまずにはいられませんが、実際のところはどうなのでしょうか……今後の研究に期待です。
ムラサキカムリクラゲと人との関わり
前述したように、ムラサキカムリクラゲは捕獲例が少なく、その生態はいまだ大きな謎に包まれています。
深海に生息しているため、わたしたち人間と関わることはほとんどありませんが、その特異な形状と稀少性が相まって、多くのマニアにとって憧れの存在となっています。
深海生物の飼育は非常に困難とされています。
また、体のほとんどが水分で構成されるクラゲは標本にすることも難しいため、生きたムラサキカムリクラゲを目にする機会はほとんどないでしょう。
しかし、国内でもわずかながら捕獲例が見られるため、いつの日かわたしたちの目に触れる機会もあるかもしれません。
(ライター:國谷正明)