これからの行楽シーズン、楽しい登山の最中に、もしかしたら出くわしちゃうことがあるかもしれない ツキノワグマ。十分に注意が必要です!
ツキノワグマの生態
ツキノワグマは胸の部分が白く月形やV字型の模様が入っているのが特徴ですが、中には模様のないものもいます。体長は110~130㎝、体重はオスで80㎏、メスは50㎏程度。
1967年に宮城県で捕獲されたツキノワグマで220㎏という記録も残っています。
牛のように反芻器官が発達しているわけでもないクマは、柔らかいものを好んで食べるようで、季節によって食性が変わっていきます。
春には柔らかな植物の新芽や葉っぱ、夏にはアリやハチ、サワガニなどの昆虫や甲殻類、ハチミツなどもたべるようです。そして秋になるとドングリや甘い果実などを食します。
特にブナ類には脂質とたんぱく質が豊富に含まれていて、ブナの実は好まれるようです。
逆に繊維質で硬い植物は避ける傾向にあります。
クマの食性の調査では、およそ90種類ほどの植物や昆虫を食べていたというデータも残っています。
時には鹿などの死骸も食べるそうです。
ツキノワグマは夏は高度3,600mほどの高地まで移動しますが、冬になると低地に降りてきて冬を越します。
ヒグマとの違い
一方、北海道に生息しているヒグマは体長が200~230㎝、体重は200~230㎏。
遺伝的には3つのグループに分かれると言われています。
2002年には斜里町で400㎏のヒグマが確認されるなど、ツキノワグマの倍の大きさです。
ヒグマは春にはフキやウド、イラクサ、水芭蕉などを食し、夏はアリやハチ、秋には山ブドウやサルナシなどの果実を好んで食べますが、多くの地域で農業への食害が報告されています。
大規模に栽培されているテンサイやトウモロコシは甘くておいしく、ヒグマたちの恰好のエサになってしまいます。
近年ではエゾシカの増加に伴う駆除が原因で、シカの死骸や処理後の残骸などで鹿の味を覚え、自らも鹿を襲うようになってきているのだとか。
このことで肉食になったヒグマは凶暴化し、人を襲う確率も増えているという報告もあります。
ヒグマも明治時代には多くの人間を襲ったという記録が残っていて、この大きさと重量で襲われてしまっては太刀打ちできないのが現状です。
実際ハンターの高齢化や減少に伴って、ヒグマの被害も年々増加してきているようです。
ツキノワグマの分布
ツキノワグマは30~50万年前に大陸から渡ってきたと考えられています。日本が大陸と分断されてから、日本のツキノワグマは日本亜種として独自に分化してきました。
現在日本には3種類のツキノワグマが琵琶湖以東と中国、四国地方に生息していて、そのうち紀伊半島や四国、中国地方に生息するツキノワグマはレッドリストに載っているほど数が減少しているといわれていますが、実際クマの頭数の調査の仕方は地域によってばらつきがあり、また毎年のように駆除も行われていることから、正確な頭数は分かっていません。
ツキノワグマの食害
本州で農業に関するツキノワグマの被害は割合的にはそれほど多くはありません。
ツキノワグマよりももっとたちの悪いイノシシ、シカ、サルなどの被害が多く、全体の7割を占めていて、ツキノワグマの被害は全体の2%ほどだそうです。
ツキノワグマが狙うのは果樹や飼料用の作物で、特に果樹ではカキ、クリ、リンゴなどを好んで狙っているようです。
飼料用作物であるトウモロコシのデントコーンも対象となり、この被害は主に北日本で報告されています。
その他、スギやヒノキの樹皮を剥いで、木の成長に重要な役割を果たす形成層部分をかじる被害も出ていて、林業への影響もあるのだとか。
この現象は「クマハギ」と言われていて、長い間、これはなわばり表示のために、臭いをつけていると考えられてきたのですが、最近の研究では初夏にかけての食料としての役割が大きいという考え方が有力になってきたそう。
しかも、すべてのツキノワグマ特定の家系に引き継がれているのではないかとも言われています。
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ツキノワグマの人への事件、事故
ツキノワグマの大きな人的事故としては1999年に尾瀬ヶ原で木道を散策中の夫婦がツキノワグマに襲われ、顔や腕などに重傷を負うという事件がありました。
ツキノワグマは死体になってしまったものを食べることはあるかもしれませんが、基本的には人間を、食べるために襲うということはありません。
しかし、突然出くわしたり、びっくりさせてしまった場合には襲ってくる可能性は大いにあります。
実際ここ数年のことで言うなら、2004年には109人、うち死亡者2人、2006年には145人、うち死亡者3人、2010年に147人うち死亡者2人という報告があります。
人的被害の多い月は圧倒的に10月で、その多くが山林内で起こっています。
被害件数の多い年は特にブナやナラなどの秋の実りが悪かった時と考えられるのですが、その時は人里まで降りてくるクマも多く、被害は森林地帯と人の生息域の境界あたりで起こっているようです。
人とクマとの距離を縮めている要因は他にも考えられていて、耕作放棄地が増えたことです。
農業人口が減るに従って、それまで耕作していた土地が放棄され、そこまでクマたちが生息域を広げてきているのです。
こうしたことが人間とクマとが遭遇する機会を増やし、人的事故の増加を後押ししていると考えられます。
ツキノワグマに会わないために
ツキノワグマに遭遇した人の中には、戦って投げ飛ばしたという強者もいますが、できればお互いのためには出くわさないのが一番です!
ツキノワグマに会わないようにするには、まず自分の存在をツキノワグマに知らせることが重要です。
山などに散策に入る場合にはなるべく一人では入らずに、数人で入るようにすること。
ラジオやクマ鈴などを鳴らして、音をだし、存在をアピールしながら歩くこと。
特に沢などの近くを歩くときには沢の音で人の気配が消されることがあるので、いつも以上に大きな音を出すか、大声で歌いながら歩くこと。
クマが冬眠を開けて空腹状態でいる春先やしっかりと蓄えをして冬眠に入ろうとしている秋口などは特に注意が必要です。
丁度私たち人間の山菜採りやキノコ採りの時期や場所とも重なって、そういう楽しみのある人は特に危険です。
山菜採りは、夢中になっている間に、帰り道がわからなくなってしまうほど奥に入っていしまうことがあるので危険がいっぱいです。
もしもツキノワグマに会ってしまったら・・・・
一般的にはクマよけ対策としてクマ鈴やクマスプレーなるものが販売されています。
クマスプレーは実際持ち歩くのならリュックの外や腰にぶら下げて、必要な時にすぐに使えるような状態にしていなければ意味がありません。
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また、風向きにもよりますが、かなりの至近距離までクマと接近しなければならなく、安心材料としては役立ちますが、実際にクマと遭遇した時に使えるかどうかは疑問が残ります。
一般的に言われているのは、遭遇してしまったらまずはクマの目をじっと見て、目をそらさない。大きな音を出さずに少しずつ後ずさりをして距離を離していくということ。
後ろ向きに逃げたり、大声を出して叫ぶのは逆効果。
それでもクマが接近してきてしまったら、頭部と首を手で守り、屈んでじっとしている。
後は運を天に任せるしかありません!クマがその場を離れるのをじっと耐えて待つという方法です。
(ライター ナオ)