害虫でありながら実はマニアの間ではかなり人気のある昆虫のヨコバイたち。
独特の綺麗な模様は害虫であることを忘れさせるほど美しく、目を惹くものもあります。
今回はそんな綺麗なヨコバイの一種、ツマグロオオヨコバイについてその特徴と見分け方について詳しくお話します。
ツマグロオオヨコバイの特徴と生態
ツマグロオオヨコバイはカメムシ目ヨコバイ亜目オオヨコバイ科に分類される大型のヨコバイです。
日本各地では本州、四国、九州、対馬に分布し低山地の森林地帯でごく普通に見られ、農業害虫としても知られています。
体長は13㎜程。背面は全体に美しい黄緑色をしていて、死ぬと色あせて橙黄色になります。
頭部は前胸より幅狭く、背面に大きな黒い楕円系の斑紋があります。前胸背には円形の黒斑が3個入り、正三角形に配置されています。上翅の付け根部分の真ん中にあたる小楯板に中央部分に丸い黒斑が入り、これが名前のツマグロの部分の由来になっています。
前翅は全体に橙黄色で先端には青黒い色の幅広い帯があります。後翅は全体に黒褐色で半透明になっています。
幼虫は外形はひし形に近く、全体としては光沢があり、透明感のある黄色です。
ツマグロオオヨコバイの生態
ツマグロオオヨコバイは外敵から逃げる時に横歩きに逃げることからヨコバイの名前がついています。
成虫で越冬し、4月下旬頃より植物の若葉などに生息し、交尾したメスは5月半ばに植物組織内に数粒ずつ扇状に並べて産卵します。
1匹のメスの産卵数は50個程度で卵は白く長楕円形、長さは2㎜程です。
孵化までの期間は2~3週間で、幼虫は夏に羽化します。
春から初夏にかけて幼虫が出現し、8月には林縁の草の上などで5齢虫の終齢幼虫が出現し、メスは秋に葉裏などに卵を産み付けます。
多くの植物の汁を吸いエサとしていて、その植物の中には大豆や落下し、クワ、茶、ブドウ、かんきつ類、柿、イチジクなども含まれる為、害虫として扱われますが実害が出るほどではありません。
ツマグロヨコバイとの違い
ツマグロオオヨコバイはツマグロヨコバイと間違われることが多いようです。
名前もオオがつくかつかないかだけで、実際体色はツマグロオオヨコバイによく似ていて、体長だけが4~6㎜とツマグロオオヨコバイに比べ半分程の大きさです。
身体は上下に平たい紡錘形をしていて、胸部が一番幅広く、それ以降は長い翅に沿って後方へと狭まるのが特徴で、オスの全身はツマグロオオヨコバイと同じく黄緑色、先端の3分の1ほどが黒くなっていますがメスは先端部分が黒くはならず、わずかに褐色になる程度。
ですから間違いやすいのは正確にはツマグロヨコバイのオスとツマグロオオヨコバイということになります。
生態的な違いとして、ツマグロオオヨコバイが多くの植物の汁を吸汁するのに比べツマグロヨコバイは田のイネや他のイネ科雑草の葉の上に止まりイネの汁を吸汁し、イネの伝染病を媒介する害虫として扱われています。
その他の紛らわしいヨコバイたち
他にもいくつかツマグロオオヨコバイと見間違うヨコバイたちを紹介しておきます。
オオヨコバイは体長8~10㎜程度で全身が淡緑色で日本全土の他東アジアからヨーロッパに広く分布しています。
頭部は黄色く黒点が2つあり、翅端は少しだけ薄黒くなっていますがツマグロオオヨコバイほどはっきりとした黒さはありません。
林縁や草原に多くみられる普通種で色々な植物の汁を吸います。
クロスジツマグロヨコバイは南日本以南に生息し、上翅の先端分がかなり黒く、他に上翅に左右対称の綺麗な筋が入るのが特徴です。
いかがでしたでしょうか。
思わず見過ごしてしまっていた綺麗なヨコバイたち。どこかで見かけたら観察してみてくださいね。
(ライター ナオ)