クスサンという名前の生物について何かご存知ですか?クスサンはシラガタロウなるものと関連する生物です。
どんな特徴の生物なのでしょうか。
クスサンの生息地や成体の特徴
クスサンは蛾です。ヤママユガ科のガで、クスサンは日本全国に分布する大型の茶系のガです。
ヤママユガ科はチョウ目の中で最も種類が多いと言われています。
クスサンの成体の特徴は翅を広げた状態で10cmを超える事です。
翅の色はベージュや茶褐色で、細かい毛があり、質感は薄い皮革のように見えます。
胴体の毛はベージュ色の事が多く、正面から顔を見ると、オスの方が触角が大きいように見えます。オスの方が全体的に茶色が濃く、翅の形が直線的です。
メスはベージュ色で、翅に丸みがあります。クスサンの後翅には大きい眼状紋があります。
クスサンは時折前翅を上げて後翅の眼状紋を見せて、威嚇するような行動を見せます。
クスサンの成体は年に一度、9月~10月頃発生します。羽化したクスサンは灯りに集まり、クスサンは蛾の姿になると口が退化しており、何も摂取せず交尾を終えるとオスは死亡しメスは産卵し死亡します。
クスサンの特徴は生涯通じて体が大きい事です。
クスサンの幼虫は大きくなると80mmに達します。
卵から孵化して幼虫になり、繭をつくり蛹化し、羽化するという完全変態を辿る時期ごとに俗称が多いのも特徴です。
シラガタロウはクスサンの幼虫の終齢幼虫の時期の姿をそのまま表現したものです。
クスサンの幼虫の特徴やシラガタロウになるまで
クスサンは卵から生まれます。卵は越冬したもので、落葉広葉樹の木肌などにまとまって産卵されます。
クスサンの卵は白く黒い模様の様なものがある楕円形で、大きさはやや不ぞろいです。
孵化は4月頃です。クスサンの幼虫は若齢幼虫の間、8mmほどの黒い体色でまとまって生息します。
白い毛が生え始めるのは2齢幼虫の頃です。
この時点ではまだ体色が黒く、芋虫に真っ白く長い毛がまばらに生えています。
3齢位になると、毛量が増え始め、体の側面に黄色い帯模様が出てきます。
4齢幼虫になるとすっかり多毛です。このあたりからクスサンの幼虫はシラガタロウ的風貌になります。
体色は黄色で側面の気門は水色、体に白く長い毛が増えています。
幼虫は脱皮するたびに成長します。繭をつくる直前のクスサンの幼虫は、側面の水色も目立ち白い毛も長くなります。
全体的に青みがあるような白い毛虫です。クスサンの幼虫が姿を現すのは4月~6月頃です。
蛾の幼虫というと、黒い毛虫やトゲトゲしいものもいますがクスサンの幼虫は真っ白な毛を生やし、モフモフした感じになるのが特徴です。
クスサンの幼虫は広葉樹の葉を好みます。
特に好きな種類はクリの樹だとも言われますが、広食性で葉は何でも食べるようで、太い葉脈を残すのがクスサンの幼虫の食べ方の特徴です。
時折大発生するので食害する幼虫と扱われる事もあります。
クスサンの繭は透けている!
クスサンの幼虫は7月頃になると繭をつくり始めます。繭の形態もクスサンの特徴のひとつです。
クスサンの終齢幼虫は、糸で葉を綴るようにして繭を編みます。
昆虫には器用で緻密な繭作りをする種がいるようですが、クスサンのつくる繭も個性的です。
一見、蛾の繭だとは思わないのではないでしょうか?クスサン幼虫が作る繭は薄い茶色の竹細工の様にも見えます。
クスサンの繭の大きさは細長い俵形で縦4cmほどです。
繭は幼虫が摂食する為の口とは異なる部位から糸を吐き、自らその中にくるまれていくという不思議なものです。
しかし多くの場合、繭の中の幼虫の姿は見えません。
繭の状態の幼虫は色合いなどが似ているのでよほど見慣れていないと区別しにくい事もありますが、クスサンの繭はスケスケで茶系の俵形ですから、他の蛾の繭と見間違える事はあまりありません。
クスサンが繭を作る頃には、落葉広葉樹の多くが葉を落とす時期になりつつある事もあり、クスサンの繭は目立つのです。
スカシダワラは漢字で「空俵」と書く事もあります。その通り、中身が空っぽになるからです。
クスサンの幼虫は繭の時期が終わると、繭に開けた穴から出て羽化し、蛾の姿になって出ていきます。
クスサンの幼虫の白い毛ですが、これはスカシダワラ状態になった繭の周囲にバラバラ散っている事もあるそうです。
クスサンの呼び名が多いのはなぜ?
クスサンの幼虫は樹の葉を多食し時には多く発生するので、害があると言われながらも異名が多いようです。
という事は、昔からそれとなく可愛がられていた虫なのでしょうか。
クスサンは漢字で書くと「楠蚕」です。昔は野蚕として、彼らの作る糸が糸として使われる事もあったとされます。
確かにクスサンの作る繭は中身が見えてしまうものですが、羽化してからも木の枝に残るほど丈夫に作られています。
クスサンはテグスサンと呼ばれていた事もあります。
クスサンの終齢幼虫を解剖して糸をとり、釣り糸にしていたと言われています。
クスサンは栗の木によくいる事から、クリケムシとも言われますが、クスサンの終齢幼虫のシラガタロウの姿は栗の花の白い垂れ下がる花序に擬態しているとも言われます。
英語で繭はcocoonです。このアルファベットの並びは繭のように丸いようにも見えます。
クスサンの作る繭は丸くありませんが、光にかざすと透き通った飴細工のようでもあります。
繭という漢字はくさかんむりに囲いがあり、中に糸と虫があります。
成り立ちには諸説ありますが、蚕が糸を吐き囲いを作る様子を表したものだとも言われます。
繭は羽化のために必要な蛹を守るような役割にも思えますね。
クスサンの見分け方
ヤママユガ科のクスサンは見る人が見れば、幼虫、繭、成虫どの段階でもあれはクスサンだな、と分かる特徴があります。
クスサンの卵は冬に葉を落とす落葉広葉樹の樹にまとまって見つかります。
4月頃に孵化し、クリやクルミ、トチノキなどの大きい葉をつけるところにいる黒い幼虫ですが、初夏から夏になると真っ白い毛を生やします。
そののち竹細工風の中身が見える茶系の繭を作り羽化します。クスサンは幼虫、成虫ともに害はありません。
むしろ無害で、こんな姿の蛾の幼虫もいるんだ、という新鮮な驚きを白く長い毛を持つシラガタロウに見出すかも知れません。
(ライター:おもち)