夏になると地面から出てきて草木の周りを歩き回っているトカゲと、ぴったりと窓に張り付いているヤモリ、どちらも爬虫類で長い尻尾が付いた生き物ですが、違いが分からないという人は多いと思います。
今回は、そんなよく似たトカゲとヤモリの違いについて説明します。
素早く動き回る忍者のようなトカゲ
トカゲとヤモリは同じ爬虫類の仲間ですが、スリムな流線型の体と細い手足と尻尾が特徴です。
トカゲは主に陸上で生活しますので、捕食者から逃れる為にチョロチョロととても素早く動き回る事が出来ます。
トカゲの尻尾切り
「トカゲの尻尾切り」という言葉を知っていますか?
これはトカゲがピンチに陥ると自分の尻尾を切り捨てて逃げるように『不祥事などが露見したとき、下位の者に責任をかぶせて、上の者が追及から逃れること』を意味しています。(デジタル大辞泉より)
この言葉にあるようにトカゲは捕食者に追われて逃げる時、後ろにある長い尻尾を掴まれると、根元から尻尾を切り離します。
切り離された尻尾はウネウネと動き回り、捕食者が尻尾に気を取られている間に持ち前の素早さを生かして安全な場所に退避します。
トカゲは強い再生能力を持っていますので、切れた尻尾は徐々に再生して生えてきますが、完全に元の形には戻りませんし、体の1/4程度を失うのですからトカゲにとっては再生には大きな負担が掛かります。
ですから、育や観賞用にトカゲを捕まえてみるのも良いと思いますが、尻尾をつかんでも逃げられてしまいますし、出来るだけトカゲに負担を掛けない為に尻尾ではなく胴体や頭の部分をつまむのが良いでしょう。
トカゲの生態
小型のトカゲは主に植物や小さな虫を餌として生きていますが、中には動物の死骸などを食べるものも存在するようです。
また、トカゲの生態で面白い部分は、亀や蛇などのほとんどの爬虫類は卵を産んで幼生が卵から生まれますが、一部のトカゲの中には卵を産まずに幼生を直接出産するものがいることです。
卵を産む場合と比べて、一回の出産で産むことが出来る子供の数が少ないので、トカゲは生存率を高める為にかなり成体に近い形で生まれてきます。
また、出産数が少ないという事により、種として子孫を残していく為には成体になるまでに高い生存率を要求されますが、素早い動きと尻尾切りの技を駆使する事で生存率が高まり、このように「胎生」という爬虫類としては特殊な生態が可能になっているのかも知れません。
なかなか自然の理にかなっている生態だと言えそうですね。
トカゲが忍者なら、ヤモリはスパイダーマン?
トカゲとよく似た外見で、トカゲと勘違いしてしまいそうなヤモリですが、ヤモリはトカゲよりも動体や手足が、尻尾が太いのが特徴です。
ヤモリは首や手足、尻尾の付け根にくびれがあるので、よく見ればトカゲとの違いが分かります。
また、ヤモリの最も大きな外見上の特徴は、手足の指先が広がっている点です。
ヤモリの面白いところは、この指先の広がっている部分が吸盤のような働きを持っており、垂直な窓ガラスや壁にピッタリと張り付くことが出来ることです。
ところで「吸盤のよう」と表現はしましたが、これは実は吸盤ではなく(吸着するわけでなないので)、毛が生えているだけです。
なぜ吸盤もないのに垂直な壁に張り付くことが出来るのか?
これは最近まで良く分かっていなかったそうなのですが、現在では「原子や分子の間で働く引力」を使用しているのだと考えられています。(ファンデルワールス力)
ヤモリは足の角度を変える事で「原子や分子の間で働く引力」の強さを調整することが出来る為、自在に垂直の壁を動き回る事が出来るのです。
また、さらに驚くべきことにヤモリは4本の手足で自分の体重の50倍もの重さを支える事が出来るだけでなく、ノロマに見える外見とは裏腹に1秒間に自分の体の20倍の距離を移動する事が出来る瞬足の持ち主でもあるのです。
「原子や分子の間で働く引力」を上手に利用して、天井だろうが壁だろうと自由に張り付き、動き回ることが出来るヤモリは、まるで映画のヒーロー、スパイダーマンのようですね。
ヤモリの生態
ヤモリは主に小さな昆虫や虫などを餌にして生きており、家の内外の気持ち悪い蛾やゴキブリなどを食べてくれるので「家守(ヤモリ)」と呼ばれています。
壁に張り付く特殊能力は、トカゲの「逃げる能力」に対して、どちらかと言うと木や壁に張り付いている虫を捕食する為、つまり獲物を「捕まえる為の能力」と言えそうです。
トカゲもヤモリも見た目が似たような爬虫類の仲間ですが、彼らの外見や生態の特徴を見ていると、生態に適した進化を遂げていると納得できて面白いですね。
(ライター まるお)