栗はお好きですか?袋入りの甘栗のみならず、甘栗むいちゃいました、などどいう商品も販売されており、1億年以上前の栗の実が炭化した化石が出土するなど日本人と栗の関係は長く深いものです。
しかし世の中は広いものです。
そんな栗好き日本人よりも栗にきわめて密着した生態の虫が存在します。それがクリシギゾウムシです。
クリシギゾウムシの体の特徴
クリシギゾウムシはゾウムシの仲間です。ゾウムシは口吻が長いのが特徴です。
中でもクリシギゾウムシの口吻の長さはちょっとした見ものです。
体長より長い事が多いこの口吻はふとした思いつきから調子に乗って伸ばしてしまった、というわけではなく、重要な役割と目的があります。
クリシギゾウムシのオスの口吻は3mm程度だそうですが、メスの口吻の長さは実に8mmにもなります。
体長は6mm~10mm程度なので、クリシギゾウムシの成体の姿はユーモラスな恰好になります。
クリシギゾウムシの見分け方
クリシギゾウムシはゾウムシのシギゾウムシ科の甲虫です。
シギゾウムシ科の虫たちは果実や種子など硬いものに穴を開ける為に長い口吻を持っています。
彼らは外見がとても良く似ています。
中でも口吻が長く、黒く横から見るとやや下向きに湾曲しているのがクリシギゾウムシのメスです。
体つきに丸みがあり体色は暗褐色です。近くで見ると薄い茶色の鱗毛があります。
体の後方に帯のような灰色の模様があるのが特徴です。
腹部から3対の脚が出ており爪があります。
彼らが出現するのは8月~10月頃です。クリシギゾウムシは北海道から九州まで分布するとされています。
クリシギゾウムシの口吻の使用法
クリシギゾウムシのメスは口吻を使い、栗の実に穴を開けて内部に産卵するのです。
人間の可食部の栗の実は栗の種子のような部位です。
厳密に言うと外側の鬼皮や渋皮が果実にあたる部分です。
クリシギゾウムシのメスはこの栗の実を覆うイガがまだ青いうちに、イガの隙間から巧みに口吻を差し込み、硬い渋皮まで貫く穴を開け、産卵します。
その為、クリシギゾウムシの口吻はたいへん頑丈にできています。
クリシギゾウムシの特異な産卵行動が見られるのは9月頃が多く、ブナ科の樹の栗の樹あたりで見られます。
クリシギゾウムシの育ち方
クリシギゾウムシの卵は栗の種子の中で孵化します。
中で育つ幼虫の数はだいたい5~8匹です。クリシギゾウムシの幼虫が栗を食べて成長するようになると、中で糞をします。
クリシギゾウムシの産卵があった栗の種子は幼虫の糞が充満し、栗の実は食べつくされた状態になってしまいます。
10月頃になると幼虫たちは栗の種子の皮に穴を開け、12mmほどになった姿で出てきます。
その後土の中に潜り込み越冬します。蛹になるのは多くは7月頃です。
時が来ると彼らは羽化し、クリシギゾウムシの成体になるのです。
クリシギゾウムシは羽化まで時間がかかる傾向があるのも特徴で、越冬や休眠は1年~2年かかる個体もいるとされます。
害虫としてのクリシギゾウムシ
このような生態のクリシギゾウムシは、栗の栽培者から見ると害虫です。
育ち始めた栗の実の内部にドリルのような口吻をつき刺しあろうことか内部に産卵し、育っている途中の栗の栄養を利用し子育てまでしてしまうのです。
そういった目で見ると、クリシギゾウムシの姿はどこか油断ならない顔つきにも見えてきます。
クリシギゾウムシの産卵場所は栗の種子以外になる事もあると言われていますが、主に栗に穴を開けるのがクリシギゾウムシです。
古くからクリシギゾウムシ対策がされているようですが、羽化し成虫が出現する時期が微妙にずれたり、産卵時期が秋頃まで続き長いので、なかなか難しいようです。
クリシギゾウムシの見分け方
クリシギゾウムシは、口吻が体長より長く黒い事が多く、体は丸みがあり暗褐色な事が大きな特徴です。
ゾウムシには多くの種がいますが、体の丸いものはだいたいシギゾウムシ科のゾウムシであり、7月以降の夏、特に9月頃栗の樹の周囲で口吻が長い虫が発見されればたいていクリシギゾウムシであるようです。
(ライター:おもち)