地球上に存在する生物には、不思議なことに擬態という特殊な能力を備えたものが多く存在します。
人工的に作られた生物ではありませんが長い進化の過程において自身が生き残るため、周りの環境に適応しようと手に入れたのでしょう。
擬態にもいくつかのパターンがあります。
周囲の背景に溶け込むような見た目をするものや違う生物に似せようとするものまで様々です。
アゲハモドキというガは名前から分かるようにアゲハチョウに見られるよう擬態しています。
ではアゲハチョウに似ることでアゲハモドキにとってどんなメリットがあるのか、そしてそれぞれの特徴と見分け方を紹介します。
アゲハモドキの生態
アゲハモドキはアゲハモドキガ科に分類されるガの1種です。
アゲハチョウに擬態していると言いましたが、詳しくはジャコウアゲハと呼ばれるアゲハチョウに擬態しています。
これこそがアゲハモドキの特徴と言えるでしょう。
名前もこのアゲハチョウに擬態していることが由来して「アゲハモドキ」と名付けられています。
成虫は大きさは3センチから4センチ程度で、翅を開いた場合5センチから7センチです。
四国や九州、本州にも広く生息し、北海道でも分布を確認することができます。
ガの多くは夜行性ですがアゲハモドキの場合昼間にも活動します。
しかし完全な昼行性とは言えず夜間の街灯に集まってくることもあります。
ジャコウアゲハについて
ではアゲハモドキが擬態しているジャコウアゲハとはどんな生き物なのでしょうか。
ジャコウアゲハはアゲハチョウ科に分類されるチョウの1種です。
多くのチョウ同様昼間に活動し河川付近にあるウマノスズクサの近くを飛んでいます。
実はジャコウアゲハの特徴及びアゲハモドキが擬態している理由はこのウマノスズクサと関係があります。
ジャコウアゲハの幼虫はウマノスズクサを食べて育ちます。
しかしこれにはアリストロキア酸という毒を含んでおり幼虫の体内に蓄積されていきます。
成虫になってもこの毒は保有され続け、ジャコウアゲハ自身は毒に耐性があるので問題ありませんが、鳥や他の虫が捕食した場合毒によって中毒を起こしてしまいます。
このことを本能的に分かっている虫もおり、鳥も一度食べると危険であることを学習し食べなくなります。
そのためジャコウアゲハの天敵は少ないです。
アゲハモドキはジャコウアゲハに擬態することで自分にも毒があるように見せかけて守っています。
アゲハモドキの見分け方
アゲハモドキは模様をジャコウアゲハに似せることで擬態しています。
個別に見比べると非常に似ており見分けることが難しいように思えますが細かく見ていけば異なる点も色々と気付くことができます。
成虫の模様に関してはほぼ差がなく細かな部分までよくできています。
しかしサイズはジャコウアゲハのほうがだいぶ大きいです。
アゲハモドキは大きくても4センチほどでしたが、ジャコウアゲハは6センチを超えます。
翅を含めると10センチにもなります。
また幼虫期には全く違う外見をしており、アゲハモドキは全身が白くふわふわした毛のようなもので覆われ、ショッキングな見た目をしています。
また東北地方や北海道に住んでいる人であればより簡単に判別ができます。
ジャコウアゲハはこの地域にはほとんど生息していません。
そのためこの地域にまで生息しているジャコウアゲハのようなものを見つけた場合アゲハモドキであることが多いです。
アゲハモドキの見分け方はサイズと生息地
一番ポピュラーな判別方法はサイズです。手のひらにすっぽりと収まってしまうようなサイズであればアゲハモドキである可能性が高いです。
また毒性のあるウマノスズクサの付近に飛んでいる場合にはジャコウアゲハであることがほとんどです。
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