紙魚というと、「???どんな魚だっけ?」と思う方もいらっしゃるでしょうか。
これ、実は魚ではなくれっきとした昆虫。
あまり馴染みのない紙魚ですが、そんな紙魚について詳しくお話します。
紙魚の特徴
紙魚はシミ目に分類される昆虫。
日本にはシミ科に分類される日本在来の室内種であるヤマトシミと移入種であるセイヨウシミが生息している他、マダラシミという種類がエサとして飼育されています。
シミ目に分類される昆虫は最も原始的な特徴を持っていて、昆虫類の中の無翅類はシミ目を含むごくわずかです。
また、昆虫の中では珍しく無変態で、卵殻孵化した幼虫はほとんど成虫と同じ形をしていて、脱皮によって変化するのは大きさだけ。
しかも、成虫になってからも絶えず成長し続けるので、一生脱皮し続ける習性があります。
体はやや扁平で、細長い涙滴形をしていて、頭には長い触覚が伸びています。
胸部から腹部にかけては滑らかにつながり、腹部には各大切に一対の腹毛があります。
動きが速く、くねるように走る姿が魚のようなところから、紙魚の字をあてられたと考えられており、寿命は7~8年と、昆虫の中ではかなりの長さを誇ります。
室内で紙や乾物を食べるのがとても有名で、野外でも樹皮下などに生息するものや、アリの巣に入るものもいます。
ヤマトシミ
日本できららむしやきらむしと言われ、古くから知られてきた紙魚の一種で、大陸アジアにも分布しています。
小林一茶などが詠んだ俳句にも登場し、夏の季語として有名です。
体長は10㎜弱で淡黄色の触角と小顎肢、尻尾の毛が目立ち、まるで足が沢山あるように見えます。
肢は通常の昆虫と同じく、3対6本であり、腹部大切の左右には腹肢と呼ばれる毛状の付属肢があります。
体節は柔軟に曲げることが出来て、びっくりさせると蛇行やUターンをしながら素早く逃げる姿と、全身が銀から灰黒色の金属光沢を帯びた鱗粉をまとっている姿がまるで魚のようでもあります。
高温多湿の環境を好み、日本では7月下旬ころ、2週間にわたって畳の隙間や紙の折れ目など狭い所に一度に10個前後の卵を産みます。
セイヨウシミ
セイヨウシミは本来ヨーロッパが原産とされますが、人間や物の移動に伴って世界中に広がりました。
日本でも人家を中心に生息して、在来種であるヤマトシミよりも頻繁に見られます。
光を避ける性質があり、砂糖や澱粉食品などを好み、炭水化物のあるところにいることが多くいます。
体表は金属光沢をしていて、銀色の鱗粉が三回目の脱皮の後に初めて出現します。
成虫になるまでには少なくとも4か月が必要で、時には3年かかることもあります。
一年で最大4回の脱皮を繰り返すことが可能で、寿命のある限り脱皮し成長します。
多糖類や澱粉を好みますが、数ヵ月もの絶食に耐えることも出来ると言われています。
紙魚の幼虫と成虫の違い
紙魚の卵は1㎜ほど。とても小いのですが、肉眼で確認できる程度はあります。
卵殻は薄く、発生途中の眼などが外から透けて見え、孵化までにはおよそ25日を要します。
孵化したばかりの幼虫の体長は2㎜ほど。成虫との違いは大きさと色だけで、形態は全く成虫と同じです。
卵が孵化すると紙魚の幼虫は4か月~4年の期間をかけて脱皮を繰り返します。成虫までの期間は紙魚の置かれている環境の気温によって違いがあります。
幼虫の体表は孵化したばかりは白色をしています。成長と共に徐々にイワシのようにピカピカとした銀色になり、成虫になる頃には銀~灰黒色の金属光沢を帯びた鱗粉を纏った姿になります。
成虫の大きさはヤマトシミで10㎜ほど、セイヨウシミは7~9㎜と言われますが、見た目にほとんど違いはありません。
ただし、よく見ると各腹節の毛と尾端の形態が異なり、ヤマトシミの方は頭部が丸みを帯び、2~3腹節が胸部と同程度かそれ以上に幅広く、10節が扁平な台形になっています。マダラシミは名前の通り体表がまだら模様なので明らかに違いが判ります。
(ライター ナオ)