姥鮫と書いてウバザメ。
一番大きなサメはジンベイザメですが、次に大きいサメがウバザメです。
ウバザメの大きさ
ウバザメは大きい個体で頭から尾まで10~12m、体重は1t~2tなどといわれる巨漢です。
極付近を除く温帯や亜寒帯、寒帯などの海を泳ぎ回っていると考えらえています。
普段はほぼ深海とされる海域を泳ぎ、暖かくなると浅い海にくる事もあるようです。
ウバザメはきわめてゆるやかな速度で海中を移動します。
尾ヒレを使い体をゆっくり左右に動かすような遊泳法のようで、時速は約3,6kmと自転車並みです。
その姿はBGMにスケーターズワルツでもかけたくなる程悠然としています。
頭部の形が船の舳先のようですが、ウバザメの体つきはネズミザメ科のサメに特有の、泳ぎに適した原始的な姿なのだそうです。
ウバザメはネズミザメ目ウバザメ科のサメです。オスの方が体は小さく、5,6mほどだそうです。
ウバザメの繁殖
軟骨魚類であるサメの特徴に交接器が外部から確認しやすいという点があります。
ウバザメのオスの腹部の下の方にある、小さなヒレの腹鰭の排泄孔の近くに1対2本の交接器を持ち、成熟すると内部の軟骨が石灰化し1mほどに伸びてきます。
ウバザメは卵胎生ではないかとみられていますが、ウバザメの繁殖は不明点が多くはっきりしません。
赤ちゃんのウバザメでも体長は1,5mくらいあると言われています。
メスの妊娠期間は2、3年などとされる事もあります。
ウバザメの口と餌
ウバザメは口を開けっぱなしの姿で写真や画像に写っています。
時折海岸に打ち揚げられる時ですら、口はやや開いている事が多いようです。
また、ウバザメの骨格標本を見ると生物の口の中とは思えないような作りになっています。
骨がアーチのように見えますね。ウバザメは海中のプランクトンを餌としています。
口を開けて海水ごと捕食し、体の側部にある大きな鰓でろ過しています。
プランクトン類を餌とするサメはジンベイザメなどがいますが、何とウバザメは自ら進んで海水を取り込むことがあまりできず、従って口を開けっぱなしにしているのです。
このような習性ですので、大きな鰓が必要です。
この鰓もウバザメの身体的特徴で、しわのように見えるので「ウバザメ」という名前がついたとも言われます。
ウバザメの鰓の構造
ウバザメの鰓はとても大きく、腹部から背中のあたりまで大きく皮膚が裂けたような巨大な鰓です。
この鰓は鰓弓(さいきゅう)といわれています。
何しろ口を開けっぱなしにするので多量の水分を体から排出しなければならず、このようなろ過装置のような鰓がついているようです。
鰓の内部にはプランクトンを濾しとるのに必要な、粘液が付いた細かい襞のような突起状の鰓杷(さいは)がびっしりついています。
鰓の下の方にはガス交換を行うとされる弁がついています。
ウバザメは酸素を得る為に海の表層部に現れる事はないと言われています。
深海の魚類なので時折ものすごい姿で水揚げされるウバザメですが、多くは北半球です。
2015年にはオーストラリア南東部のポートランド沖でウバザメが見つかったという珍しい事例があったようです。
ウバザメの敵
ウバザメを好んで捕食するものはあまりいません。
しかしヤツメウナギはウバザメの皮膚にしばしば喰いつき吸血します。
傷を負ったウバザメも確認されています。
ウバザメの悲哀
サメ類は体に対して大きな肝臓を持つとされます。
ウバザメも例外ではなく、肝臓から採れる肝油は高値で取引される事などから個体数が減ったと言われています。
サメといえばフカヒレですが、ウバザメの大きなヒレも狙われる対象のようです。
ウバザメは餌を探しに水深1000m付近まで潜水するくらい海中深くに棲息するようですが、おっとりした動きが災いしたのか狙われやすいのです。
今では保護対象になっているところもあるようですが、大昔から海を悠々と泳いでいたと考えられているサメの中で最も生態が不明といってもよいウバザメの何かがそのうち明かされるのかも知れません
(ライター:おもち)