ミズウオ、という名前を聞いてどんな生物を連想するでしょうか。

水という流動的なものでできた、とろとろに溶けて流れそうな魚でしょうか。

中らずと雖も遠からず、ミズウオは不思議な生物のひとつです。

ミズウオとは

ミズウオは海の中の中層あたりに棲息する硬骨魚類です。

深海魚というと、骨が柔らかいだとか、光るような気がしますが、ミズウオの骨は比較的硬く、体は光りません。

 

どちらかというと大型です。1mを越す事もあります。ミズウオというのは実に的を射たネーミングで、ミズウオの体の約90%以上は水分でできています。

こんな体でよく水深1000m付近を泳げるものだと思うくらいです。ミズウオの体は平たく鱗がなくつるりとしており、ギザギザした立派な背びれがついています。

顔付近をみると、目が大きすぎる気もしますね。

ミズウオの口

ミズウオの分かりやすい特徴は、口の作りにあります。ミズウオの口ときたら顎があったら外れるであろう角度にまで開くのです。

大きな獲物もどんどん飲み込むように食べる、強烈な肉食の魚です。

ミズウオ、という妙にあっさりしたネーミングですが、ミズウオは実によく食べます。

 

大きく開けた口の中には立派な犬歯があります。ほぼなんでも口にいれてしまうミズウオの体内には、ビニール袋などの人工物も出てくるくらいです。

ミズウオは日本近海でも見つかる事があります。季節は12月から5月頃が多いようで、イカやエビなどの甲殻類、魚類などが胃から出てくるそうです。

打ち揚げられるミズウオ

頑丈そうな深海魚のミズウオですが飼育は難しく、沼津港深海水族館では生体展示が行われていたようですがあえなく亡くなった、という出来事もあります。

駿河湾にほど近い沼津ではいろいろな生物が網にかかります。

 

2014年にも沼津で揚がった魚のなかにミズウオが見つかったようです。

日頃中層部という比較的深い海域を泳ぐミズウオですが、海水温が下がる冬には表層部に姿を現す事があるようです。

 

また、夜間に現れる事もあります。しかし打ち揚げられたミズウオは普段とは違う海域にいるので元気ではない事が多く、2014年に見つかったミズウオは内臓が露出した哀れな状態でした。

 

体の中からはミズウオが食べたものがどんどん出てきたという事ですが、中にはミズウオ本体より大きいタチウオもが出てきたようです。

ミズウオは立派な歯をもちながら、獲物を丸呑みするので胃の内容物がそのまま出てくる事もあり、食べ過ぎで腹が膨れ上がっている事すらあるのです。

 

最近ではミズウオを食べてみよう、という話も聞かれますが、体の殆どが水分であり、ミズウオは何を食べるか分からないくらい多様なものを口にしてしまうので、積極的におすすめできる魚類というわけでもありません。

水族館は海に近い場所に設けられる事が多いのですが、こういった普段は見る事が少ない生物が揚がった場合、保護をしている事もあります。

ミズウオの化石

ミズウオは硬骨魚類です。仲間もしくは先祖と思しき魚類の化石が見つかる事があります。

愛知県新城市では今いるミズウオやミズウオダマシに近いと考えられる、ホウライミズウオという魚類の化石が発掘されており、時代はおおよそ新生代頃のものとされています。

 

ミズウオに近い魚なので、体は細長く、なめらかに連なる脊椎の数はなんと173個もあるそうです。

ミズウオの特徴である歯は、大きな物が3本確認できるようです。

ミズウオダマシというのは、ミズウオから背びれをなくしたような姿の魚類ですが、全く種類が違う魚です。

丸呑みするミズウオ

ミズウオは主に静岡県の駿河湾付近、冬に打ち揚げられてしまう事があります。

ミズウオの最大の特徴である、何でも丸呑みする習性のせいか、最近は海の汚れを考える為として打ち揚げられたミズウオの解剖が行われる事もあります。

 

ミズウオは何故なんでもあんなに丸呑みしてしまうのか、よく分からないようです。

しかしあんなに食べなくても、と思うのも人間の側から見て思う事で、ミズウオ本体からするとまぁ普通だよ、という事なのかも知れません。

(ライター:おもち)