深海は人の手が入らない神秘の場所。
それゆえに、古代からその姿を変えずに生きてきた「生きた化石」たちもたくさんいます。
その中の一つが、「ラブカ」。
一体、ラブカとはどんな生き物なのでしょうか。
今だ多くの謎に包まれた生物ラブカ…その生態などについて、少しだけ見ていきましょう。
ラブカってどんな生き物?
ラブカは、水深500~1000mの深海に生息しているサメです。
より原始的なサメの特徴を残していることから、「生きた化石」とも呼ばれているのですが、その生態の多くは謎に包まれたまま。
その歴史は古く、5000万年~8000万年前の地層から化石が見つかっています。
さらにそれによく似た化石が3憶5千万年前の地層から見つかっていることから、もしかするとその頃から既にラブカは生息していたのかもしれません。
3億年前なんて聞くと、人間の歴史なんてほんの一瞬に思えてきますね…。
ラブカは太平洋・大西洋全域に広く分布しており、日本でも相模湾や駿河湾などで見られることが多いようです。
とは言え、個体数自体はそう多くなく、深海に生息していることから人間との遭遇も少なく…。
まれに漁網にかかることがあるようですが、水圧の変化に耐えられず死んでしまっていることが多いようです。
(しかも、見た目が気持ち悪いので「縁起が悪い」とそのまま捨てられてしまうことが多いんだとか!)
そのため生きたラブカを観察できる機会は少なく、その存在は「幻」とも言われるほど。
時折、生きた個体が捕獲されて水族館で展示されたりなどもしますが、飼育方法などが確立していないことから、数時間から長くても数日で命を落とすことがほとんどだそうです。
ラブカの見た目はサメというよりもウナギによく似ていて、全長100~150㎝ほど(大きいものでは2m以上)で体は細長い円筒状。
現代のサメは鼻先がとがり、口が少し後ろ側にあるものがほとんどですが、ラブカは鼻先が丸みを帯びており、先端に口があるのが特徴。
これは古代のサメならではの特徴でもあります。
そして一際目を引くのが、6対の真っ赤なフリルのようなエラ。
通常のサメはエラが5対なのに対し、6対というのは古代ザメならでは。
見た目からして現代のサメとは全く違いますし、その姿は恐ろしいながらも少しロマンを感じますね。
まだまだある!ラブカの秘密
ここまででも、既にたくさんの独特な特徴が見られるラブカ。
しかし、ラブカにはさらに多くの秘密や謎が隠されているのです!
まずその一つが、繁殖について。
魚はその多くが卵生ですが、ラブカはお腹の中で卵を孵化させる「卵胎生」という形で子どもを産みます。
これ自体は他のサメにも見られることなので、そう珍しいわけでもないのですが…。
驚くべきは、その妊娠期間の長さ。
ラブカの稚魚がお腹から出てくるのは、体長が60㎝を超えるほどに大きくなってからなのです。
稚魚は1年で15㎝ほどしか成長しないと言われているので、単純計算でも3~4年はお腹の中にいる計算ですね。
また、もう一つの謎とされているのが、ラブカの捕食について。
ラブカが餌とするのはイカやタコなどの頭足類をメインに、魚や小型のサメなどです。
歯が細かい棘のように生えているので、一度噛みついてしまえば逃がす可能性は低いのですが…問題は捕まえる方法。
ラブカは非常にゆっくりと緩慢に泳ぐため、どうやって動きの速い獲物を捕らえているのでしょうか。
もしかすると捕食の時だけは素早く動けるのか?それとも待ち伏せなどのスキルに秀でているのか?そのあたりは今だ謎に包まれています。
ラブカについてのまとめ
日本の駿河湾や相模湾などでは、ラブカは比較的浅瀬(100~200m)に出没することがあるそうで、漁網にかかることも多いそうです。
そのため、タイミングさえ良ければ、水族館などで展示された生きたラブカを見ることができるかもしれません。
ぜひとも長期飼育に成功してほしいものです。
(ライター もんぷち)