海中の映像を見ていて、サンゴ礁のような、孔がポコポコ開いた石灰質のところから青やオレンジ、白や黄色いイソギンチャクの様なものが出たり引っ込んだりしているのを見た事がありますか?あれは何でしょう。
イバラカンザシについて
イバラカンザシはゴカイの一種です。
イバラカンザシ科ケヤリムシ目イバラカンザシ属のイバラカンザシは英語でchristhmas tree wormです。
学名のspiobranchus giganteusはイバラカンザシの特徴を表しているとも言われます。
イバラカンザシは定住型のカラフルなゴカイであり、イバラカンザシゴカイ、と呼ばれる事もあります。
ゴカイの仲間ですが、ゴカイにも種類がたくさんあるのです。
イバラカンザシは何故動く?
イバラカンザシは浅瀬のサンゴなどにくっついて定住しているようですが、動くのは具体的にどこでしょうか?イバラカンザシの体には鰓冠(さいかん)と呼ばれるものが上の方についています。
よくみると、イバラカンザシのカラフルな部位はらせん状に巻いているのがわかります。
spiobranchusという学名の意味は、螺旋状の鰓、というものだそうです。
イバラカンザシの動く部分はこのカラフルな鰓冠です。
この動きは呼吸しているようにも見えますね。
鰓冠は呼吸も行い、捕食も行う器官であると考えらえています。
この動きは振動や光に反応して動いているようでもあります。
イバラカンザシの構造と成り立ち
イバラカンザシは温暖な海域に棲息しています。日本では本州以南で見る事ができます。
イバラカンザシに必要なものは石灰です。
ゴカイの仲間は幼生時代に棲管という棲息する巣のような役割のものを必要とし、粘着質のもので巣をつくる種もいるようですが、イバラカンザシは棲管を石灰質のもので作ります。
イバラカンザシは岩やサンゴに埋まっているように見えますが、主にイシサンゴ科のサンゴの上を棲み処とするそうです。
イシサンゴ科のサンゴは、サンゴ礁を作るタイプのサンゴです。
主な種にハマサンゴなどがあり、沖縄地方で見られます。
イバラカンザシの大きさは5~7cm程である事が多いですが、体のすべてが見える場所にある生物ではありません。
イバラカンザシは通常、石灰質のもので作られる棲管の中に体を収納しています。
我々が目にする、カラフルな海のお花!と言っている部位は鰓冠です。
体が大きくなるにつれ、石灰質の棲管は大きくなります。
サンゴの中に細長い管を作っているような感じです。
ハマサンゴなどと共生している状態の事が多いようです。
イバラカンザシは幼生時代を小さいプランクトンとして過ごします。
その時に石灰でできているサンゴなどにくっつきます。
するとイバラカンザシのくっついた部分のみサンゴの成長が阻害され、孔ができて徐々に棲管ができるというのです。
イバラカンザシの棲管の作りや自切り行動
この棲管ですが、イバラカンザシの棲み処なので蓋があるものもいます。
部屋のドアのような感じでしょうか。
出ている部分の鰓冠を引っ込める時に蓋を閉めるのです。
蓋を持たないあけっぴろげな性格のイバラカンザシに、オオナガレカンザシというイバラカンザシの一種がいます。
鰓冠は白く根元が少し赤いみたいですね。この根元の部分を「胸膜」と呼びます。
このあたりもイバラカンザシ科の生物の特徴だそうですが、胸部という鰓冠の部分の胸膜に分泌腺を持ち石灰質の物質を分泌し、棲管を形作るそうです。
あんなに綺麗に見える鰓冠ですが、イバラカンザシは鰓冠を自切りする事があります。
本体である棲管さえ元気であれば、半年ほどでまた鰓冠が出てくるようです。
イバラカンザシの成長は少しずつなので非常にわかりにくいですが、成長はしています。
環境が良ければ推定50年ほどのイバラカンザシも棲息するといわれます。
イバラカンザシの餌
イバラカンザシは小さなプランクトンなどを捕食します。あの鰓冠からです。
食虫植物を思わせる生態のイバラカンザシですが、光合成は行わず動物食です。
鰓冠には繊毛と呼ばれる微細な毛があり、これを動かす事でプランクトンやバクテリアを捕食するといわれています。
イバラカンザシの棲息する海は水深10m~15mほどの浅瀬ですから、太陽光線も届き餌も豊富でしょう。
定住していても、毛によって海中に漂っているそれらを捕える事は容易です。
変異に富む鰓冠の色彩は、黄色いものによってきた捕食者は黄色を食物として認識しまた食べにくるので、食べられないように違う色の鰓冠を作っているなどともいわれます。
イバラカンザシは面白い
イバラカンザシは魅力的な生物です。
特に捕食する際に動かす鰓冠の動きは、見ているうちに渦巻きに取り込まれるような感覚に陥るような気がしますね。
しかし、スキューバなどをされる方によると、写真を撮ろうとすると鰓冠を引っ込めてついでに蓋を閉めてしまうのだそうで、ますます魅惑的な海の生物なのです。
(ライター:おもち)