冬にスズメがチュンチュン鳴いているな、と思い電線を見上げるとずいぶん丸い鳥がいてあれはスズメじゃないのかな?
と思った事があります。スズメに似ているように見える鳥は沢山いますしね。
一年中どこにでもいるように思えるスズメは、冬になると何をして過ごしているのでしょうか?
スズメの冬
実はスズメは大食漢であり、冬になるとコロコロになるまで肥え太り動くのが億劫になってしまうという、いわゆる冬太りをしているのです、というわけではなく、枯れ木の枝に止まっている丸っこいチュンチュン鳴く鳥はスズメです。
掌で転がしたくなるほど丸いスズメですが、なぜ冬のスズメはあんなに丸いのでしょうか。
冬になると北半球では気温が下がります。生物の中には休眠状態になって寒さをしのぐ種も多くいます。
スズメの場合は羽を工夫して外気温から体を守っているのです。
スズメの羽の仕組み
スズメの羽は、飛ぶ時に主に使用すると考えられている「切羽」、体を覆うように生えている「正羽」、「尾羽」に大別されます。羽には軸があるものとないものがあり、羽布団などにもよく羽毛が利用されているように保温性に優れるといわています。
その羽の間に空気を含ませる事で保温性を高めている状態のスズメが、ふっくらした冬のスズメです。
スズメの種類や生態
同じように見えるスズメにはたくさんの種類がいます。
国内の民家や都市部に棲むスズメはスズメ目のスズメ(passer montanus)です。
林や森の中に棲むスズメはニュウナイスズメです。日本でよく見かけるスズメはこの2種であることが多いです。
第3のスズメとして、イエスズメ(passer domesticus)がいます。
国内で発見されたのは1990年の夏だそうで、ユーラシア大陸に近い北海道の離島だそうです。
彼らは主にユーラシア大陸などに広く生息しているとされます。
英語ではhouse sparrowとよばれ、民家の軒下に巣を作ったりしているようです。
スズメの分類については諸説あるようで、スズメ目スズメ科には多くの種の鳥がいます。
日本のスズメの生態
日本国内でも生息地により生態が異なるようですが、スズメは全国的に分布する留鳥であり野鳥の一種です。
ひとつところにとどまっているようでもありますが、スズメは国内で移動するようでもあります。
体は14cmほど、茶系の切羽に模様があり腹のあたりは白くなっています。
スズメは3月~7月にかけて繁殖時期を迎えます。樹の上の方に巣を作り、群れになる事もあります。
スズメの寿命ははっきりとしませんが、野生では1年ほどとされます。
森林に棲むスズメ
駅前のロータリーなどにもいるスズメよりも珍しい気がするニュウナイスズメ(passer rutilaus)は、スズメ科スズメ属であり森の中に巣を作り暮らしています。
農家や酪農地帯、林縁などがあると見かける事があるようです。
春先になると餌を求めてヤナギの木の花付近などに発見されるようです。
スズメは雑食ですが、意外にいろいろなものを餌としています。
ニュウナイスズメたちは森に棲むので、花に集まる虫の幼虫を食べにくるようです。
外見は一般的なスズメよりも赤茶色です。お腹周りは白いようです。
くちばしは黒く普段見かけるスズメとは少し違う顔つきです。
入内雀、黄雀とも表記される事があります。入内雀については奇妙な逸話が伝えられています。
歌人の藤原実方が、その死後に雀の姿になり恨みを持つ相手のもとに現れた、という話です。
都市部に棲むスズメは、昆虫の幼虫なども食べますが、人間の残したパンくずや生ゴミも食べます。
夏にマイマイガの胴体をつつくスズメを見た事があります。
道路が羽根だらけだったので何だろう、と思ったらスズメがマイマイガの胴体を突っついて食べていました。その姿は意外に獰猛でした。
ふくら雀
冬を過ごすスズメの姿は、ふっくらしている事から縁起が良いとされています。
「ふくら雀」は冬の季語でもあり、女性の着物の帯結びに「ふくら雀」があります。
慶事の際に用いられる華やかな結び方です。基本的に未婚女性のみです。
雀色時(スズメイロドキ)とは、夕暮れ時の事です。スズメたちが巣へ帰り休む時間帯の事です。
すずめ踊り
「すずめ踊り」は葛飾漫画でも知られています。スズメの動作をまねた踊りだそうです。
確かにスズメはちょんちょん飛ぶように歩く事もありますね。
ホッピングとも言われるこの動きですが、スズメは樹上で暮らす鳥なので枝や電線に足を揃えてとまるようになっており、地面をすたすた歩く事はなく、あのようなステップになるようです。
現代では和歌山県御坊市小竹八幡神社の秋の例大祭、仙台市のすずめ踊りがあります。
300年ほど続いているとされる御坊市の祭りは御坊祭りともいわれ「人が見たけりゃ御坊祭」といわれるほど熱気はすさまじいものだそうです。
仙台市の夏に行われるすずめ踊りは、仙台・青葉祭ともいわれます。
1603年の宴席に披露した踊りが由来だそうです。
19世紀頃に流行したとされるスズメ踊りも即興的なものであったそうなので、よほど日本人はスズメが好きなのでしょうね。
人間とスズメの距離は近いようですが、詳細な生態ははっきりしない事も多いのです。
主たる理由は、スズメは体長14cmほどの小さな茶色い鳥であり、いつもいる気がするがあまり目立たない事、すぐにどこかへ飛んで行ってしまい、飛べない人間としては後を追いにくいという事もあるでしょう。
しかもスズメは意外に警戒心が強いのです。
人間はすずめ踊りをアレンジしつつ長年続けている程愛でているのですが、野鳥であるスズメにはどうも伝わりにくいようです。
ふくら雀は縁起が良い
冬のスズメは「福良雀」ともいわれ、縁起が良いようです。
見た目も可愛いですしよく見慣れた光景のひとつです。
スズメは日本が農耕文化に移行する時期頃にユーラシア大陸から移入してきたと考えられています。
葛飾北斎が北斎漫画に雀踊を描いたのは19世紀初頭頃とされますので、江戸末期には農民も増えスズメのいる風景はお馴染みのものであったと推測されます。
スズメは冬になると寒さをしのぐために、羽に空気を入れて時にはくっついて目を閉じています。
(ライター:おもち)