謎に包まれた深海の世界…そこには見たこともないような生き物たちがひしめいています。
陸上の生き物とは全く違う、独自の生態を持ったものたち。
その中から今回紹介するのは、「ハオリムシ」という生き物です。
一体どんな生き物なのか、詳しく見ていきましょう。
ハオリムシの生態
ハオリムシは「チューブワーム」という生き物の和名です。
棲呼ばれるチューブ状の棲管の中に入り込み、頭だけをのぞかせる姿からその名が付きました。
大きさは数十センチから大きいものではなんと3m!
しかもコロニーをつくって群生するので、一見すると植物のように見えますが…一体どのような生き物なのでしょうか?
まず名前に「虫」とついていますが、分類上は「環形動物門」というミミズやヒルなどの仲間です。
釣り餌としてよく使われる「ゴカイ」と近い生き物ですね。
まぁ感覚的に言えば、虫と言えば虫なのかも…?
でもやっぱり植物にしか見えません。
先端についている赤い部分はエラであり、色が赤いのは血液の色が透けて見えているから。
そう考えると、やはりハオリムシ植物ではなくてれっきとした深海生物なんですね。
水深1000~3000mの深海に生息していますが、100m程の深さのところでも発見例があります。
日本でも九州鹿児島湾で「サツマハオリムシ」が発見されており、水族館でも展示を行っているところがあるそうです。
しかもハオリムシ自前の棲管から人工的な透明な管に移すこともできるらしく、ハオリムシの中身がじっくり観察できる技術も開発されているんだとか。
管が取り外しできるってのにも驚きですね。
てっきり、カタツムリの殻のように一体化しているものだと思っていました…。
ハオリムシのここが凄い!
ハオリムシが特殊なのは、その見た目だけではありません。
その他にも私たちの常識を覆すような、特殊な生態を持っているのです。
口も肛門もない
植物は光合成をしたり土中から栄養を得ていますが、動物は基本的に口から栄養を摂取し、肛門から排泄物を出します。
それはミミズやヒルでも同じことですよね。
しかし、ハオリムシには口も肛門もありません。
深海なので、当然「じゃあ植物のように光から栄養を…」というわけでもないです。
それでは一体、何から栄養を得て生きているのでしょうか。
その答えは「硫化水素」。
ハオリムシが生息するのは深海の熱水噴出孔や冷水湧水帯付近で、噴き出してくる水の中には硫化水素が含まれています。
人間にとっては有毒な硫化水素ですが、ハオリムシにとっては大事な栄養源。
とは言っても、当たり前ですが硫化水素が直接栄養になっているわけではありません。
ハオリムシは体内に細菌を共生させており、細菌が硫化水素を得て有機物を排出。
その有機物を栄養源としていると言われているのです。
しかし中には硫化水素があまり含まれていない場所に生息しているものもおり、エネルギーの仕組みについては多くの謎が残っているようです。
寿命が長い
人間の寿命は長くても100年程度。
植物はともかく、生き物の中で人間よりも長く生きるものは少数派です。
しかしなんと驚くことに、ハオリムシの寿命は170~250年!
正直、0を一つ取ったとしても、ミミズなんかと比べたら驚くほど長寿だというのに…。
暗い海の底で、管に入ったまま100年以上生きる…スケールの大きい引きこもりですね。
ハオリムシについてのまとめ
深海には驚くような姿をした魚や生き物たちがたくさんいますが、その中でもハオリムシの不思議さは群を抜いていますね。
食べ物を食べないという時点で、動物とも植物とも違う、新たなジャンルの生き物のような気がします。
まだまだ生態は多くの謎に包まれていますが、水族館での飼育も成功していることですし、さらに研究が進むことを期待したいです。
(ライター もんぷち)