セスジスズメ(theretra oldenlandiae)はスズメガ科ホウジャク目の一種です。比較的よくみかける蛾のひとつですが、幼虫はどのような姿なのでしょうか。
セスジスズメの幼虫
セスジスズメの幼虫の特徴は、体の側面に眼球のような丸い模様がついていることです。
セスジスズメの幼虫が卵から孵化するのは初夏から夏頃です。
セスジスズメの幼虫の体色は最初透き通っており、まだ模様は見えません。3日後くらいには3齢幼虫になります。
このころになるとうっすら丸い紋のような模様が出てきます。スズメガの特徴である、長い尾角はすでに出てきています。
3齢ほどになると体色はグレーから黒っぽくなり、体の横側に黄色い紋があらわれます。
体の節ごとに均等に7つほどです。体全体をくねらせて、枝や葉に下からくっつくポーズも見られます。
脱皮を繰り返し徐々に体色が黒くなり、眼状紋(ガンジョウモン)といわれる丸い模様がよりくっきりしてきます。
この時点でかなり食べるようにもなります。
セスジスズメの幼虫が好む主な植物は、ブドウ科のヤブガラシ、サトイモ科のサトイモ、ツリフネソウ科のホウセンカ、サツマイモの葉なども食べます。
柔らかい花蕾も食べます。
そのため害虫扱いの側面もあります。セスジスズメの幼虫は目立つ外見の芋虫です。しかし、毒はありません。
セスジスズメの幼虫の顔にはよく見ると小さな眼があります。
黒い粒のようなものですが、これがれっきとした眼です。両側に6つずつついています。
セスジスズメの幼虫には合わせて12個の眼球があります。
セスジスズメの蛹と羽化
セスジスズメの幼虫もまた、たくさん食べます。そのためなのか無関係なのか、成長スピードは早くひと月ほどで蛹になります。
セスジスズメの蛹は最初は透き通ったベージュですが、徐々に暗褐色になります。
羽化するまであっという間です。セスジスズメは蛹で越冬しますが、幼虫は年に2回ほど発生するので早めに蛹になったものは時期がくると羽化するようです。
セスジスズメの成虫
セスジスズメの成虫の特徴は、胴体部分の真ん中にある2本の白線です。
体全体はほぼベージュ系の毛でおおわれていますが、毛量や毛の長さはそれほどでもないので、スマートな印象の蛾です。
翅の形も飛行機のように綺麗なラインです。セスジスズメのオスとメスは触角の太さが少し違います。
オスの触角のほうが太いようです。成虫がみられる時期は、6月から10月ころだそうです。
また、成虫の翅を広げた大きさは約50mmから70mmほどです。幼虫のほうが大きめです。
スズメガと眼状紋
蛾の翅に、眼球のような模様をもつものは見かける気がします。
あの模様が気持ち悪い、という人もいそうです。チョウ目の中にはこうしてニセの眼を翅にもちそこを顔部分だと見せかけ、鳥類などの天敵の眼を欺く一種の擬態のようなものとされています。
しかし、芋虫状の幼虫の体の側面に眼状紋があっても変に目立つだけな気がします。
しかもスズメガの場合、黒っぽい体色に黄色の紋が規則的に配列されているので、緑の中にいるとよけい目立ちます。
幼虫に眼状紋があるのはスズメガの蛾の特徴です。頭部に眼のような模様をもつ種類もいます。
ベニスズメガの眼状紋を正面からみるとたしかに顔らしくみえ、芋虫状の体つきもあいまってヘビのように見えなくもありません。
捕食者を欺くためだといわれれば分かる気もします。
しかしスズメガのように体の側面に眼状紋があったとして、それが捕食者から逃れる術になるかは意見がわかれるところでしょう。
セスジスズメガについて
セスジスズメの幼虫はグラフィカルな外見の黒い芋虫です。
幼虫も成虫も毒はありません。
特徴的な眼状紋も、無地よりもなにか模様がついていたほうがいいかもしれないな、という感じで案外適当につけてしまっただけかもしれません。
(ライター:おもち)