モモスズメは漢字で「桃雀」と書く蛾です。

どんな蛾なのでしょうか。

モモスズメの幼虫の特徴

モモスズメの幼虫は、6月から10月の間に2回発生します。

幼虫の外見の特徴は、斜めの線です。体色は緑色のごく普通の芋虫なのですが、頭の方向から斜めの模様のようなものがついています。

 

側面から見た体節はまっすぐなので、ねじれた線のような模様がよく分かります。頭の形は三角形気味になっており顔を間近にみると、頭が尖った芋虫です。

若齢幼虫のほうが、頭のとんがり具合が大きいようです。体の表面には細かなつぶつぶがあり、尾には尾角もあります。

 

体色は主に緑色ですが黄色い個体も出現するようです。これまた鮮やかな真っ黄色です。体長は70mmから80mmほどで、バラ科のサクラ、ウメ、モモ、リンゴ、ニシキギやスイカズラ、ツゲの葉などを沢山食べます。

モモスズメはスズメガ科ウチスズメ亜科の蛾の一種です。モモスズメの生息地は北海道から離島までほぼ日本全国です。

モモスズメの成虫

もも、と呼ばれるからには桃色の蛾なのかと思いきや、成虫のモモスズメは全体的に褐色です。

大きさは翅を広げると70mm~90mmほどで夜行性、口器は退化しているのでモモスズメの成虫は何も食べません。

 

翅は二辺が長い三角形のようで、ひらひらしています。背中から見ると内側についているようにも見える後ろ翅は暗めの桃色です。

モモスズメが木にとまっている時にはこの後翅はよく見えないため、他の褐色の蛾とよく似ているといわれます。

 

モモスズメの体を観察すると、後翅から胴体部分の腹側や脚はうっすら桃色になっています。

また、前翅の内側部分が暗褐色になっているのもモモスズメの外見的特徴です。モモスズメの成虫が見られるのは、5月から8月にかけての夏の夜です。

モモスズメの越冬

モモスズメは、繭をつくらずに土の中で蛹化して越冬します。

モモスズメの幼虫は、終齢になり蛹化が近づくとますます肥えてきて、体色がうっすら桃色がかってきます。

 

土に潜る直前にはこの桃色が濃くなります。夏の間は盛んに食べるため、木の枝にしがみついているのですが、この時期になると地面に降りてきます。

そのまま土の中に入り蛹化します。

モモスズメの幼虫と寄生

繭をつくらず土中で行う蛹化ですが、モモスズメの幼虫が寄生されているとうまくいかず羽化できないことがあるようです。

ヤドリバエがモモスズメの幼虫に産卵し孵化してしまうと体の内部まで入り込んでいることもあり、そうなると悲惨な状態です。

 

緑色の芋虫の体から白いウジ虫たちが孵化し、グロテスクな惨状になります。

こうなると蛹化はおろか羽化も不可能です。寄生されたモモスズメの幼虫から出てくるのは、モモスズメの成虫ではなく沢山のヤドリバエということになってしまいます。

 

チョウやガは、天敵に捕食される場合も多いでしょうが、ダニやハエに寄生され、成虫になれないことも多そうです。

そのため、芋虫状の元気そうなものを駆除しようかと葉をかきわけてよく見てみると何かの異物か虫の様なものが発見され、異様な状態のものに変わっていることもあります。

 

不思議なのは体に産卵されている状態でも、幼虫がすぐに死亡せず、別段変わったところがない場合もあることです。

そのおかげなのか、モモスズメの幼虫の体から発生するヤドリバエの存在に気付くのが遅れるということもあるようです。

モモスズメ

モモスズメというと蛾の一種であっても綺麗な個体を期待しますが、名前の由来についてはよく分からないようです。

強いていえば、モモスズメの幼虫がしきりにモモの葉を食べること、蛹化の直前に幼虫の体がやや桃色を帯びること、成虫になると後翅と腹部などがやや桃色っぽいことなどのようです。

 

一度、蛾の集団を見たことがあります。夏の合宿で夜間授業が終わり宿舎に帰ろうと、ぞろぞろと靴置き場に行ったところ、靴という靴に蛾がひしめいていました。

四角い靴置き場が主にベージュ系の蛾で埋まっていました。皆ぎょっとしたと思いますが、驚きすぎると人は無言になります。

 

偶然前の方にいた自分が靴と思われる箇所に足を近づけると、蛾は音もなく飛び立ちました。

そのような蛾たちが、おそらく幼虫時代に寄生を免れ成虫となっていたのはめでたいことかもしれません。

 

蛾の集団はひどく静かです。

モモスズメには幼虫も成虫にも毒はありません。

(ライター:おもち)