コマユバチの特徴
コマユバチはコマユバチ科に属するハチの総称です。
世界では5000種以上見つかっていて、日本には300種以上が分布していると言われています。
全ての種が他の昆虫に寄生する寄生蜂で、生態の近いヒメバチなどと混合される場合もあります。
日本に分布している代表的な種としてはアオムシサムライコユバチ、カリヤコマユバチ、ウマノオバチ、テントウハラボソコマユバチ、ギンケハラボソコマユバチなどが挙げられます。
コマユバチの分類
コマユバチ科は30以上にもなる亜科からなっていますが、その多くが寄主を発育させながらその体内に寄生する飼い殺し型の寄生と産卵時に寄主を永久麻酔してしまう殺傷型の寄生をするものに分けられます。
コマユバチ科は大きくコマユバチ亜科群、ツヤコマユバチ亜科群、アブラバチ亜科群、フチガシラコマユバチ亜科群、サムライコマユバチ亜科群に分類されますが、そのうちコマユバチ亜科群に含まれる多くのハチが殺傷型の寄生をすることで知られています。
サムライコマユバチ亜科群の寄主は蝶や蛾類にほぼ限られ、フチガシラコマユバチ亜科群のオオハラボソコマユバチ亜科は蝶・蛾類や甲虫類の幼虫の飼い殺し型の寄生をします。
アオムシサムライコマユバチ
モンシロチョウに寄生するアオモシサムライコマユバチは幼虫の体内に約80個の卵を産卵します。
モンシロチョウ以外にもシロチョウ科の幼虫に寄生するようです。
産卵後約14日でアオムシサムライコマユバチの幼虫は宿主の体を食い破り、繭を作って蛹化します。
蛹化後は約7日で成虫が羽化し、性決定は受精卵からはメス、未受精卵からはオスが生まれます。
キャベツなどのアブラナ科植物はモンシロチョウの幼虫に食害されると、特徴的な揮発性の化学物質を放出します。
この物質はカイロモンと言われ、アオムシコマユバチのメスはこのカイロモンを頼りに飛来し、そのご触覚で葉をドラミングすることでモンシロチョウの幼虫の居場所を突き止めることが出来ます。
メス蜂がモンシロチョウの幼虫に産卵する時は寄主制御物質として毒液とポリドナウィルス、卵巣タンパク質を卵と共に宿主に注入します。
モンシロチョウの幼虫は免疫物質を持っているのだが、これらがアオムシサムライコマユバチによる寄主制御物質によって抑制されるので、卵や孵化したアオムシサムライコマユバチの存在を異物と認識することがないのです。
そのため、アオムシサムライコマユバチは寄主体内で安心して生育が出来るというわけ。
アオムシサムライコマユバチの幼虫
モンシロチョウの幼虫に産卵された卵は3日ほどで孵化し、1齢幼虫が孵化すると幼虫はモンシロチョウの幼虫の体液を吸収して生育します。この体液の代わりになるのは卵を形成していた細胞や親バチの注入した物質、そしてテラサイトと言われる成分です。
その後、一度の脱皮をし、寄生後約14日で80匹が一斉に奇主表皮を食い破り、最後の脱皮をしながら外部に出てきて、寄主の上で繭を形成します。
アオムシサムライコマユバチの幼虫はモンシロチョウの幼虫と同じ緑色をしているので、一斉にモンシロチョウの幼虫から出てくる様は、まるで幼虫が卵を産んで孵化させたのかと錯覚するほどの光景です。
ウマノオバチ
ウマノオバチは体長が15~24㎜程度でコマユバチ科の中では例外的に大型種になります。
体翅ともに黄褐色で前翅に3個、後翅に1個の明瞭な黒褐色斑があります。
触角は黒色でやや太く、棒状で、メスの産卵管は非常に長くて体長の数倍もあるのが特徴です。
ウマノオバチはこれを腹端から垂らしながら緩やかに飛びますが、死後は蒔かれます。
ウマノオバチの名前はこの長い産卵管の様子から付けられてたと考えられます。
クリなどの材の中に生息するシロスジカミキリの幼虫に寄生し、本州、四国、九州、台湾に分布します。
(ライター ナオ)