樹木にとって天敵である「イセリアカイガラムシ」。

最近ではそれほど話題となることはないので、植物を育てている人でもその存在を知らない人が多いかもしれません。

 

しかし、かつてはかなり厄介な害虫として駆除されてきた歴史があります。

今回はそんなイセリアカイガラムシの生態や、植物への害などについてまとめていきたいと思います。

イセリアカイガラムシの生態

イセリアカイガラムシは「ワタフキカイガラムシ」の別名であり、カイガラムシの一種です。

元々はオーストラリアが原産の虫ですが、国内でも本州から南西諸島にかけて、広い範囲に分布。

日本には明治時代に、苗気について侵入してきたと言われています。

 

成虫は楕円形で扁平な体をしており、大きさは約5㎜ほど。

体色は赤みがかっており周辺から白い毛が伸びていますが、体の後ろ半分は白いロウ物質に覆われているため、一見すると虫には見えません。

 

この白いロウ物質は卵嚢であり、これを割ると中には多数の卵が入っています。

ちなみに、これはメスのイセリアカイガラムシのお話。

 

オスの成虫は全く違う姿をしているのです。

オスには翅があり、まるでハエのような姿をしています。

 

知らなければ、同じ種の生き物とは思えないほどの違いですね。

オスは滅多に出現することはなく、その詳細はいまだ多くの謎に包まれたまま…。

 

「じゃあ、オスがいないのにどうやって繁殖するの?」と疑問が浮かびますよね。

もちろん、オスとメスが出会えば有性生殖での繁殖を行うのですが…多くの場合はメスのみでの繁殖が行われるそうです。

 

単為生殖だとか雌雄同体であるという説がありますが、実際のところは詳しく分かっていません。

見た目も虫っぽくありませんが、生態までなんだかエイリアンっぽいですね…。

イセリアカイガラムシの害

イセリアカイガラムシはみかんなどの柑橘類を中心に、ナンテンやモコックなど300種にものぼる植物に寄生。

オーストラリアや日本だけではなく、世界的に広がって害を及ぼしている厄介な虫なのです。

 

イセリアカイガラムシの幼虫やメスの成虫は、枝や葉脈に寄生し、汁を吸い取ります。

そして大量の排泄物から、植物がすす病にかかる原因となってしまうのです。

 

酷い場合は樹木全体が枯れてしまうことも。

見つけたらすぐにブラシなどで除去するか、枝や葉ごと切り落として駆除しましょう。

 

ただし、イセリアカイガラムシは他のカイガラムシとは違って歩行することが可能なので、生きたまま取り逃がすと、再び植物についてしまうことがあります。

駆除の際は、すり潰したり燃やしたりして、確実に息の根を止めてくださいね。

 

また、イセリアカイガラムシの天敵である「ベダリアテントウムシ」を保護し、食べてもらうのも有効。

このベダリアテントウムシ、イセリアカイガラムシの駆除においては大変優秀で、現在イセリアカイガラムシの姿をあまり見かけることがないのも、このベダリアテントウムシのおかげなのです。

 

かつてアメリカでイセリアカイガラムシの被害が甚大になった際、ベダリアテントウムシを導入したことで、その数が激減。

ベダリアテントウムシが放たれた周辺は、イセリアカイガラムシがほぼ絶滅状態だったと言います。

 

ベダリアテントウムシは、樹木たちの救世主ですね。

農薬など使わず駆除したいという人は、ぜひベダリアテントウムシを探してみてください。

イセリアカイガラムシについてのまとめ

ベダリアテントウムシさえいれば、イセリアカイガラムシも怖くないですね!

こういった天敵による駆除が大きな効果を上げる例はそう多くないので、本当にベダリアテントウムシ様様です。

逆に…ベダリアテントウムシがいる所にはイセリアカイガラムシがいる可能性も高いので、植物をチェックしてみましょう。

(ライター もんぷち)