ヒイラギというと葉のギザギザで子供の頃に手に切り傷を作ったな、などと思う人もいるかも知れません。

生垣等の樹木の葉に、手をざーっと当てながら歩く癖があった、という人もいるかも知れませんね。

 

ヒイラギという名前は「痛む、疼く(ウズク)」というのを昔言葉で「ひいらぐ」とも言い、転じてヒイラギとなったようです。

その為か、疼木と書いて「ひいらぎ」と読ませる事もあります。葉が気になりがちなヒイラギですが、花も咲きます。ヒイラギの花は冬の季語です。

ヒイラギについて

ヒイラギはモクセイ科モクセイ属の常緑樹です。

樹高は1~5mほどで、日本では東北以南に植えられています。

東アジアでは台湾にもあるようです。

丈夫で長持ちし特別な手入れも必要がない事から、刈り込まれて生垣などになっています。

成長は遅く大きく育つタイプの樹です。

 

ヒイラギの特色は葉のギザギザです。

ギザギザの葉は少し内側に曲がり気味であり、葉は地厚で手に突き刺さりやすいですね。

 

ギザギザを鋸歯(ギョシ)というそうですが、樹齢が長くなると丸くなるようです。

葉のつやつやした方を向軸面といい、腹面ともいいます。

 

葉は平べったいものですが、表と裏があります。

しっかりした葉をつける事から好んで植えられているようですが、花も咲き実をつける事もあります。

ヒイラギの花の特色

葉は対になっており、その付け根に5mmほどのヒイラギの花が咲きます。

時期は11月から12月にかけて、ちょうどキンモクセイの開花時期の後くらいでしょうか。

 

色は白く花弁は4つ、花の根元はくっついており花弁は外側へ丸まっています。

雄蕊は2本、雌蕊は1本で、花の中央から突き出ています。

ヒイラギの花の特徴は両性花(リョウセイカ)というものがある点です。

 

ヒイラギの雄株に咲く花は、雌蕊が未成熟な為結実しません。

未成熟というより、雌蕊はほぼ目立たないようです。

 

両性花とよばれている花の雌株の花は雌蕊も花粉をつけるまでに成長しており、雄蕊との受粉が可能となり結実する事になります。

ヒイラギの樹は雌株のみ両性花をつけるようです。

この場合、花粉がついているので外見ですぐに分かります。

 

両性花自体は珍しいものではなく、バラ、タンポポ、サクラなど多くの植物に見られる現象です。

雌雄同花といいます。

 

一つの花に雌蕊と雄蕊があり、一つの株で受粉可能のものです。

単性花(タンセイカ)という花もあります。

 

雄花には雄蕊のみ、雌花には雌蕊のみで、結実が不可能な場合です。

アケビやカボチャなどがそうで、雌雄異花といいます。

 

これはややこしいですね。

ごく普通の場合は花が綺麗ですね、などと言って喜んでいればいいのですが、結実させたい場合や農作物の場合は困りますね。

 

温度により両性花をつけるものもあるようで、果樹栽培などに利用されているようです。

爬虫類の卵にみられる温度による性決定のようでもありますね。

ヒイラギの花のその後

ヒイラギの両性花は、花の時期が終わると果実をつけます。

翌年6月から7月に、これまたあまり目立たない果実をつけます。

 

色は黒っぽく大きさは約1cm程で、細長い卵型です。

果実は鳥の餌になり、糞に混ざって散布されます。

 

そういう訳でヒイラギは植えた覚えがないのに、山中などに突然発芽する事もあるようです。

クリスマス時期に鋸歯の葉と共に見かける赤い実の樹は、モチノキ科のチャイニーズ・ホーリーまたは西洋ヒイラギだと考えられます。

柊という漢字について

漢字そのものは柊葉(シュウヨウ)というちまきを包む葉を表すものだそうです。

日本語の意味は、そのまま「ひいらぎ」とされ、木の部分は印鑑やそろばん玉に加工されていました。

 

そろばん玉としての柊は、摩耗が少なく狂いが少ないため、現在の兵庫県あたりになる藩州(ばんしゅう)では、江戸時代頃に柊のそろばん玉が使われていたようです。

播州は播磨の国の別称です。そろばんには「算盤」の他、「十露盤」など色々な当て字があるようです。

ヒイラギがつく場所など

埼玉県朝霞市には柊塚古墳という前方後円墳があります。

こういった地名のようなものに「柊」のような漢字がつくのは珍しいような気がします。

 

小ぶりの古墳のようです。

柊が植えられていたのでしょうか。

 

国内には「柊」を含む地名は多くないので不思議です。

前方後円墳と思われるものは国内に1000基はあるらしいのですが、一時期流行ったのでしょうか。

古墳にはいろいろな形がありますが、前方後方墳というものは数も少ないようです。

 

アメリカカリフォルニア州のhollywoodは柊の樹が沢山生えていた土地だったからだとかいわれています。

稀にholyと混同されているようですが、発音がだいぶ違うと思います。

ヒイラギについて

柊の花を季語とした俳句は沢山あります。

「柊の花一本(ひともと)の香りかな」は高野素十という人の句だそうですが、柊の花の持つ控えめな美しさに合うように思います。

 

俳句に詳しい方ならヒイラギの花がいつ頃どのように咲くのか、ご存知だと思います。

木へんに春だと椿になり「赤い椿白い椿と落ちにけり」は河東碧梧桐の一句ですが、いかにもほたりと音が聞こえそうです。

椿は春の季語で「冬椿」とすると冬の季語になるそうです。

(ライター:おもち)