香り高い松茸。秋になるとあちこちで松茸が市場に出回るようになります。

なかなか高価で手も出ない松茸ですが、今回はそんな松茸について詳しくお話します。

松茸の特徴

松茸はキシメジ科キジメジ属キジメジ亜属マツタケ節のキノコの一種です。

腐植質の少ない比較的乾燥した土壌を好み、秋にアカマツの単相林のほか針葉樹が優占種となっている混合林の地上に生えます。

菌糸体の生育温度範囲は5~30℃、最適温度は22~25℃、最適PHは4.5~5.5ですが菌糸の成長速度は遅くなっています。

松茸はマツタケオールという独特の強い香りを持っていて、日本においては食用きのこの最高級品に位置付けられています。

松茸の旬の季節

松茸の旬の季節は7月~11月までで、出荷がピークになるのが9月頃です。

国産松茸の収穫時期は東北地方で9月中旬~10月中旬、中部は9月下旬~10月中旬、近畿、中国、四国は10月上旬から10月下旬です。

 

日本国内では長野県の生産量が最も多く、次いで大きく差をつけ岩手県、岡山県、和歌山県となっています。

近年松食い虫などの影響で極端に生産量が減っているというのが現状。

 

有名な丹波松茸は京都や兵庫県で摂れていますが、かなり高価なしろものです。

一方比較的安価で手に入るのは中国、アメリカ、カナダなどからの輸入ものです。

松茸の生態

アカマツの樹齢が20~30年になると松茸の発生が始まり、30~40年が最も活発で70~80年で衰退します。

マツ属などの樹木の根と外生菌根または外菌根と呼ばれる互いにとって利益のある相利共生体を形成して生活しています。

 

松茸は直径数メートルの環状のコロニーをつくって発生します。

発生時期には地域差があり、高緯度の冷涼な地域での発生は8月末頃から始まり、球種などの比較的温暖な地域では11月末頃まで発生し、そのコロニーをシロと言います。

シロの地下にはマツタケの本体である菌糸体と菌根が発達していて、土壌が白くなっています。

 

マツタケは貧栄養な乾燥した鉱質土壌にクサレケカビ属真菌などと共に生息して、シロに分布している宿主の吸収根と共生します。

地表には落枝、落ち葉等が蓄積して富栄養化が進み、分厚い腐葉土のようになるとマツタケの生息環境としては不適です。

発生初期の若い菌糸のシロと最盛期を過ぎたシロの水分量は違っていて、最盛期を過ぎたシロには不透水層が形成されます。

 

8~9月の降水の間隔は発生本数に大きな影響を与えます。

松茸の菌には腐植生物のシャクジョウソウが寄生し、また松茸のシロを縮小させるケロウジの存在は松茸に乗っては大敵です。

松茸の歴史

日本では縄文時代中期頃の遺跡からキノコの形をした土製品が多数発見され、その頃からキノコの食していたことが伺えます。

松茸は万葉集に登場し、平安時代になると当時の貴族が松茸狩りを季節の行事として楽しむようになり、安土桃山時代では武士も松茸狩りをしていたことがわかっています。

江戸時代は一般大衆の間にもマツタケが広まり、江戸時代の料理本にも記録があるほどです。

松茸の毒

松茸には実は弱毒であるが毒が存在します。

きわめて高価なキノコであるため、通常食べる量では中毒は起こしませんが、多量に食べると吐き気などを催すことがあります。古くなった松茸のアミノ酸が有毒成分に変化し、これが原因と考えられています。

松茸の栽培と偽松茸

松茸はエノキタケやブナシメジのように完全な人工栽培はまだ実現していません。

林地栽培ではいくつか効果を上げているところもありますが、シロを健全に保つことが難しいのが現状です。

 

2003年にシイタケと松茸の菌を混合して人工栽培に成功したと称する融合マツタケが大きく取り上げられていましたが、実際、正体は単なるシイタケで、松きのこという名前で市場に流通しています。

(ライター ナオ)