大きな葉をつけるいちじくの旬の季節はいつでしょうか?
いちじくの仕組み
いちじくと特殊な関係にあるのは、「イチジクコバチ」と呼ばれるハチです。
イチジクコバチは成虫でも2mm程度の小さなハチです。
イチジクコバチは、いちじくの果実が青く未熟なうちに飛んできます。
このいちじくの果実は「花嚢(かのう)」といわれます。
花嚢というのは小さな花の集まりで、中にイチジクの雌花が咲きます。
イチジクコバチはこの花嚢の中に入り込みます。
この入口は蓋のようなものがされていて、簡単に中に入れないようになっています。
花嚢の中に入ったイチジクコバチは、その時に飛ぶための翅や触角をなくします。
もう使う必要はないのです。イチジクコバエはイチジクの花嚢の内部で産卵し、幼虫が孵化します。
このイチジクコバチが成長していく時期は、いちじくの花嚢の中で雄花が咲く時期とも重なるといわれます。
虫も成長し、果実も生育するのです。
成虫となったイチジクコバエは、花嚢から出ていくときにまた花粉をくっつけ、他のまだ若いいちじくの花嚢へ飛んでいき、内部に入り込みます。
この繰り返しを恐らく何万年も繰り返しているのです。
イチジクコバエはなぜかいちじくの花嚢の中の雌花の存在を探し当てる事ができるのです。
いちじくの雌花が咲くのは6月頃で、ちょうどよい時期に飛んできます。
イチジクコバチがどのようにいちじくの花嚢を見つけるのかはよくわかっていません。
匂いが関係するのではないかとも考えられています。
日本にはイチジクコバエは棲息しません。
いちじくの樹の特徴
日本にあるいちじくの樹は単為結実性です。
受粉せずに果実のようなものをつける性質の事です。
いちじくの実を二つに割ると中に白い部分と無数の粒が見えます。
あれは花のようなものです。いちじくの果実のようなものは、花托という部分が肥大化したものだそうです。
単為結実性を示す作物は他にもバナナやキュウリなどがあります。
この性質だと種はできない事になります。いちじくの原産地は現在のイラン付近などともいわれます。
温暖で雨の少ないいちじくの樹に適した環境下では樹齢は長く、樹高も10mにもなるといわれています。
いちじくの大きな葉は、長さ10cm~20cmにもなり、いちじくの実より大きいくらいです。
乾燥した気候を好むようですが、いちじくは根を深くはる樹木です。
地中深くから水分を吸収することができるのも特徴です。
しかもいろいろなところの地下水から水を吸い上げているともいわれる不思議な樹です。
そのため、極端に水が少ない時季が続いても生育します。
標高のやや高い地域にも自生するとされ、いちじくの原産地では年に二回収穫されています。
今では生産地も広がり、アラビア地方や地中海地方のみならずインドでも栽培されています。
日本におけるいちじくの栽培は、生食を主とした目的として始められたようです。
欧米ではドライフルーツの食用が一般的になので、ちょっと品種改良の方向性が異なるようです。
1900年代に広島県出身の桝井光次郎という人が、いちじくの苗を持ち帰り研究を重ね、その後各地に点在するようにいちじくの生産が始まったといわれています。
千葉県の九十九里浜付近の砂地の地下水のある土地では、昭和4年頃には小規模ながらいちじくの栽培がされていたそうです。
いちじくの原産地域と似たような気候だったのかもしれません。
現在、国内生産が最も多いのは愛知県です。ハウス栽培と露地栽培がおこなわれ、いちじくは秋にとれる秋果の中でも旬が長いのです。
初夏から秋口にかけてがいちじくの旬の季節です。
ペクチンやカリウム、食物繊維などが豊富です。人によっては食べすぎるとお腹が緩くなるかもしれません。
いちじくはあまり日持ちがしませんので、洗ってすぐに食べきるか、ジャムにするなど火を通すと保存できます。
イチジクの葉の利用
いちじくの葉は青い香りがします。3つ~5つ、大きく切れ込みが入っていますが、風が吹くと香りが漂います。そんな事からか、香水の原料になっています。今では合成のものが主ではありますが、fig reafはグリーンノートのやや癖のある香りのような感じです。
最近はいちじくの葉を乾燥させたお茶もあります。
いちじくの旬の季節
いちじくの季節は6月~10月頃までです。
ザクロやブドウなどのように古い歴史をもち多様なイメージがある果実のひとつです。
(ライター:おもち)