コオニユリはオニユリよりひと回り程小さいオレンジ色のユリです。
花の直径は約10cmほど。
雄蕊と雌蕊がすらっと長く、うつむきがちに咲きます。何か辛い事でもあったのでしょうか。
外見はオニユリとよく似ていますが、全体のバランスが少し違うようにも見えます。
別名としてスゲユリともいいます。
もしかしてスゲーユリなのでしょうか。
一体なにがどのようにスゲーのでしょうか。
そんなコオニユリについての話です。
コオニユリの花
コオニユリの開花時期は7月から9月頃です。
コオニユリは山中の開けたところや海岸付近など自生地域が幅広く、地域によって花の季節は異なります。
草丈は約30cm~1,5mくらいです。
茎の頭頂部に花をつけます。
花弁は外側にカールしていて、6枚あるように見えます。
花被片(カヒヘン)は内側は内花被片(ウチカヒヘン)が3枚、外花被片(ガイカクヘン)が3枚になっています。
多くの場合、内と外の花被片は同じように見えます。
見えるのではなく同じなのではないかとも思われますが、植物学的にはどうも違うようです。
コオニユリの花被片は、長さが6cmほどで反り返る為に、雄蕊と雌蕊が突き出した格好になります。
雄蕊は6本で、中央に雌蕊があります。
柱頭といわれる雌蕊の先端部分には赤茶色の花粉が多量についています。
これは顔及び衣類などに付着すると取れにくいので、積極的にユリの花粉を付けたい場合を除いてユリの花粉が付かないように気をつけましょう。
葉は交互につき、細くて目立ちません。
日本ではあらゆるところにコオニユリが自生しています。
あらゆるところにはないのではないか、と思ったそこの誰かさん、実は今現在近所の道端にコオニユリは咲いてるのです。
しかも他の植物より元気です。
北国では真夏から秋口まで花を咲かせています。
特に自分でコオニユリを植えたわけではありませんが、降雪時期以外は常に何かが咲いています。
コオニユリの特徴
コオニユリの特徴は種子を作って飛ばすことです。
花の時期を終えると果実のようなものが付きます。
果実といっても特に綺麗なものではなく、茶系で乾燥した地味なものです。
内部には種子が緻密に詰まっており、花茎が風に揺られるとコオニユリの果実は真ん中からパックリと裂けて種子を飛ばします。
コオニユリは風媒花です。花茎(カケイ)というのは、球根部分から直に茎をするすると伸ばして花をつけるタイプの植物の茎です。
さて、コオニユリはユリ科ユリ属の多年草であり、球根植物でもあります。
コオニユリのもう一つの特徴は球根部分です。
ユリ科の多くの種は鱗茎(リンケイ)です。
鱗茎は球根ともいわれますが、実際の働きは根のようなものです。
茎から不定根といわれる根っこのようなものを出して成長します。
コオニユリの場合、匍匐枝(ホフクシ)という根のようなものを出します。
この辺りの仕組みも謎が多いようですね。
コオニユリにはムカゴがありません。
オニユリの場合、この珠芽(シュガ)ともいうムカゴも生育に関連しているものと思われますが、コオニユリはそれを作らず沢山の種子を飛ばします。
ユリ根について
ユリ科といえば食用のユリ根です。
コオニユリの球根は苦みが少なく食用向きです。
だからといって、自生しているコオニユリのユリ根をとって食べようとしてはいけません。
流通しているユリ根はあくまで食用になるように栽培されているものです。
地域によっては山の中の方に咲くユリを「ヤマユリ」とし、より人の暮らしに近い田畑の近くにあるユリを「オニユリ」と呼んでいたという話もあります。
このことは、コオニユリの鱗茎が古くから食用にされていたことを示唆するものかも知れません。
コオニユリのある風景
山や丘を登ってきてふいに視界が開けた時、コオニユリのような放射状に咲く花を見ると非常に驚きます。
野生のユリは案外背が高く、とても綺麗だからです。
とても綺麗なものというのは日常的にあまり目にしない為、どこの山かは失念しても体験として残っていたりします。
コオニユリの別名であるスゲユリですが、漢字では「菅百合」です。
「菅」という漢字には、細長い多年性の植物に使われることがあり、オニユリより細いが見分けがつきにくいコオニユリと区別するようなものとして使われていたのかも知れません。
※参考『絵でわかる植物の世界』清水晶子著/講談社/2004
(ライター:おもち)