秋の味覚にはいろいろありますが、そのひとつに「キノコ」があります。
秋を中心に多種多様なキノコがでまわり、鍋に入れたり炒め物にしたりとキノコにはたくさんのレシピがありますよね。
さらに食物繊維が豊富で低カロリーなのでダイエットフードとしても人気なキノコですが、中には毒をもったキノコがあります。
店頭にでまわっているものは大丈夫ですが、キノコ狩りをするときには注意しなければいけません。
「ドクササコ」の毒はものすごいと言われますが、いったいどんな毒なのでしょうか?
見た目が地味~なドクササコ
ドクササコはシメジ科のキノコで、カサの直径は5~10cm、カサの中心は窪んでおり、ふちは内側にカールしていますが成長するとカサが開き漏斗型になります。
色は薄茶色でどこにでも見かけられがちな地味な姿をしています。
ドクササコの発生地
ドクササコは、東北、北陸、近畿、山陰地方の日本海側に多く見られます。
秋になると、広葉樹林地帯のタケやササ薮に多量に、しかも何週間にもわたって発生し続けます。
ササ薮に多く発生するというのが名前の由来です。
日本の毒キノコ御三家!
「猛毒キノコ御三家」をご存知でしょうか。
死に至る可能性の高い猛毒をもっているので、絶対に食べてはいけないキノコです。
ドクツルタケ、タマゴテングタケ、シロタマゴテングタケの3種です。
さらに食中毒の発生事例が多く強い毒性をもっている「食中毒キノコ御三家」にあげられるものは、ツキヨタケ、クサウラベニタケ、カキシメジの3種です。
ドクササコの「毒」の恐ろしさ
さて、ドクササコは御三家には入っていませんが、ドクササコの毒とはどんな毒なのでしょうか。
ドクササコの毒は、「致死毒」ではありませんが、激痛をもたらすという意味で「猛毒」と言われているのです。
まず、色や見た目に「毒キノコ」という毒々しさがなく、味も普通で食用キノコに似ているというところが第一の落とし穴です。
さらに、普通の食中毒は、食後数時間~2、3日で症状が現れますが、ドクササコの場合は、1週間近くたってから症状が現れる場合があり、他の病気と間違われることも多く初期対応が遅れがちになります。
最初は、普通の食中毒のように目の異物感や軽い吐き気がします。
次第に足や手の指先が赤く腫れ、痺れるような痛みが走ります。
さらには四肢の末端、指先だけではなく、鼻先、耳たぶ、外性器にまでも激痛が走り、熱した鉄を押し当てられたようと形容されるほど、火傷を起こしたように腫れ上がり、歩行も困難になります。
熱感・膨脹・疼痛は昼夜別なく1ヶ月以上も続き、成人であれば死に至ることはまれですが、老人やこどもには重症化や死亡する例も発生しています。
激痛を緩和するために患部を水に浸し続けた結果、皮膚のただれや壊死部分から二次的に感染症を起こし死亡したり、排尿痛や睡眠障害のために体力が消耗して衰弱死したり、長引く激痛による精神的苦痛から自殺したりする例もみられるとのことです。
ドクササコ中毒の治療法
では、ドクササコによる食中毒の拷問のような長期の痛みから逃れるにはどうすればいいのでしょうか。
ドクササコの毒の成分は、強中枢神経毒のアクロメリン酸、中枢神経毒のスチゾロビン酸やスチゾロビニン酸、クリチジン、異常アミノ酸、オピン類などであることがわかっています。
けれども、どの毒が主原因なのか、毒が体内でどのように作用しているかなど、詳しいメカニズムは解明されていないのです。
そのため現在のところ、ドクササコによる食中毒の有効な治療法は「ない」ということになります。
痛みをやわらげる対症療法しかないのですが、よく使用されるアスピリンやロキソプロフェンなどの痛み止めは効かず、モルヒネの効果も期待できません。
神経ブロックのような局所麻酔が効きますが、切れれば痛みが復活します。
ドクササコ中毒が現代でも起きる理由
非常に恐いドクササコの毒ですが、ドクササコに毒があるとわかったのは、大正~明治時代と割と最近だということです。
毒キノコだとわかっていても、昭和、そして現代でも中毒にかかる人がでています。
食用キノコに似ている地味な見かけや潜伏期間の長さなどによる原因特定のむずかしさなどのため、ドクササコの恐ろしさが十分に周知されていないためと思われます。
まとめ
キノコ採りの名人によると、実際に生えているキノコは、図鑑の写真とは形や色がまったく違うことがあるそうです。
そのためキノコを見るのではなく、キノコが生えている場所やキノコが生えている木の種類で判断するといいます。
ドクササコの毒がこれほど恐いものだということ、素人が軽々しくキノコを採って食べることは絶対にしてはならないということを思い知らされました。
(ライター sensyu-k)