「アケビコノハ」は落ち葉のような羽を持つ蛾の一種です。
昼間は木の陰に隠れていることが多く、なかなか見つけることができませんが、幼虫のときは一度見たら忘れられないような特徴的フォルムをしています。
庭木などに発生することもあるので、見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。
身近だけれど珍しい、そんなアケビコノハの生態を紹介します。
アケビコノハの生態
幼虫は、頭のあたりに目玉模様がある、なめらかな肌をした赤茶色のイモムシです。
危険を感じると、頭を内側に折り曲げて威嚇をするという珍しい特徴を持っています。
体長は最大で75mmほどです。
突然出会ったら、異様な見た目と大きさで、びっくりしてしまいそうですね。
成虫は前翅が50mmほどもある、大型の蛾です。捕食者から見つかりにくいように前翅が落ち葉に擬態されています。
地面に止まっていたら、気づかず通りすぎしまいそうなほど、落ち葉にそっくりです。
一方で、後翅は鮮やかな黄色をしていて、幼虫と同様に目玉模様がついています。
危険が迫ったとき、後翅を見せることで、鳥などの捕食者を驚かし、その隙に逃げるために使うと考えられています。
幼虫は5~6月、7~9月頃に現れ、成虫の姿で冬を越します。
アケビコノハの生息域
アケビコノハは日本全国、北海道から沖縄まで、どの地域でも見ることができます。
海外では、ロシアのアムール地域や中国、台湾、インドなどの温暖な気候の地域に幅広く分布しています。
アケビコノハの名前の由来
その名の通り、アケビの葉を好んで食べることや、成虫の羽が、コノハ=枯れ葉にそっくりなことからその名前がついたと言われています。
そのまんま!と言っていい位、とってもシンプルなネーミングですね。
アケビコノハは何を食べている?
アケビのほかに、メギ科、ツヅラフジ科の葉を食べます。成虫になると、木の実の汁を吸って餌としていますので、果樹園などに大量発生することがあります。
アケビ科のムベやメギ科の南天などは、庭木にもよく使われているため、住宅街でも見かけることがありますよ。
アケビコノハの害
庭木などでも多発することがありますが、多発は1年で終わり、食害によって木の調子が悪くなったり、枯れてしまったりした報告はありません。
しかし、幼虫に葉が食べられてなくなる、枝や葉上に幼虫がいて気になるなど、外観が悪くなってしまうのは否めません。
気になるときは幼虫を取り除いて駆除しましょう。
果樹園では悪者!?アケビコノハとの戦い
アケビコノハは成虫になると、強靭な口吻を果実につきさして、果樹を吸って餌としています。
果樹園などではリンゴやナシ、ブドウやモモなどのさまざまな果実に大害を与えることがあります。
アケビコノハに果汁を吸われると、果実に食害痕ができてしまい、出荷できなくなってしまうのです。
最悪の場合、果実が全滅する可能性もあるので、果樹園では妨害対策が欠かせません。
防虫ネット
果樹園全体を防虫ネットで覆ってしまう方法です。
大掛かりで手間がかかりますが、アケビコノハなどの蛾には最も有効な防止法です。
6mm程度の細かい目のものをかけることで、アケビコノハが果実に近寄れないようにしています。
防蛾灯
アケビコノハは夜行性の蛾です。
夜行性の蛾は1ルクス以上の明るさで食べなくなる習性があります。
これを利用して、果樹園に照明を置き、被害を抑えています。
余談ですが、防蛾灯のある果樹園は夜見ると、とても綺麗です!
昔、偶然見て、その幻想的な風景に感動した覚えがあります。
私がのんきに見惚れていたその裏では、農家さんたちとアケビコノハの攻防があったのですね。
まとめ
身を守るために驚きのビジュアルへと進化したアケビコノハ。
まだ出会ったことがないと思っていても、落ち葉のような外見の成虫には、どこかで会っているかもしれませんね。
興味のある人は、秋に向けて落ち葉をじっくり観察してみてはいかがですか?もしかしたら、アケビコノハかもしれませんよ。
ライター:さくら