優雅で華麗に飛び回るアゲハチョウ。
美しい模様の翅に思わず目がとまってしまいます。
幼虫も成虫に負けずインパクトの強い色彩で、子供たちにもその存在を存分にアピールしているアゲハチョウ。
冬を越せないということは何となくわかってはいるのですが、正確な彼らの寿命は一体どれくらいなのでしょう?
アゲハチョウの生態
私たちがアゲハチョウという場合、アゲハチョウ亜科のアゲハチョウ族に分類されるナミアゲハやキアゲハを指すことが多い様に思います。
アゲハチョウ族には他にもクロアゲハやモンキアゲハ、ナガサキアゲハなどが含まれるのですが、今回は北海道から南西諸島まで全国に多く分布しているナミアゲハについてみていきます。
ナミアゲハは人家の周辺でもよく見かける馴染みの深いチョウです。
単にアゲハとかアゲハチョウと呼ばれることもあります。
成虫の前翅の長さは4~6㎝ほどで、翅の色は黒字に黄白色の斑紋や線が多数入ります。
後翅には水色や橙色の斑紋が入り、尾状突起の内側には橙色の円形の斑点があります。
橙色の斑点は目玉模様になっていて、鳥などから頭を守る役割があると考えられています。
似た種類としてキアゲハが挙げられますが、ナミアゲハの場合は翅の根元まで黄白色の腺が入っていて、全体的に黒い部分が太いのが特徴です。
天敵はスズメバチや鳥類、アシナガバチ、カマキリ、トンボ、クモなどで、卵に寄生して中身を食べてしまうアゲハタマゴハチなどは幼虫に産卵して体の組織を食いつくしてしまいます。
また、アゲハヒメバチなどの捕食寄生バチも強敵です。
エサは成虫になってからは様々な花の蜜ですが、幼虫の頃はミカン科の植物を食べます。
交尾は3~8月の間の行われ、交尾を終えたメスはミカン科の植物の新芽に止まり、一粒ずつ産卵します。
卵の直径は1㎜程で球形。
最初黄白色をしていますが、中で発生が進むと黒色になります。
成虫になるまでにミカン科の植物の葉を食べながら4回の脱皮を繰り返し、5齢幼虫になる頃には体長5㎝ほどに成長します。
これまで鳥の糞に擬態した黒褐色の地に白色の帯模様が入った体色から、私たちに馴染みのある緑色のイモムシに代わるのもこの時期。
胸部に黒と白色の目玉模様ができ、まるで緑色のヘビのような風貌になり、一気に成長します。
十分に成長した幼虫は蛹になります。蛹の期間は暖かい時期では1週間程度ですが、越冬する場合は数か月ほど蛹のままで過ごします。
蛹の中で組織の再編成が起こり、成虫の体が出来てくると蛹自体が黒ずんで成虫の模様が透けて見えるようになります。
こうして、暖かい日に羽化し、チョウになっていくのです。
アゲハチョウの寿命
アゲハチョウがチョウになってからの寿命は平均2週間です。
幼虫の期間が約25日程度ですから、合わせても40日間ということになります。
とても短命で、その間に何度も脱皮を繰り返し成長するのですから、短い期間にギュッと中身が凝縮された生涯ということになります。
蛹の状態で越冬するものは、その分数か月は寿命が長いということになるでしょうか。
美人薄命!?なかなか私の周りでは耳にしない言葉ですが、思わずそんな言葉を思い出してしまいます。
アゲハチョウの生態と寿命に関するまとめ
日本ではナミアゲハチョウのことをアゲハやアゲハチョウと呼ぶことが多い。
北海道から南西諸島まで幅広い地域に分布している。
ミカン科の植物を好んで産卵を行い、幼虫はミカン科の植物の葉を食べて生長する。
5齢虫まで4回の脱皮を繰り返して後に蛹になる。
チョウになってからの寿命は2週間ほどで、幼虫の期間を合わせても40日間ほどしか生きられない。
(ライター ナオ)