地球の生命の秘密が隠されているのではないか、ともいわれるのが深海の底にある熱水噴出孔です。
初めて発見されたのは1977年、ガラパゴス諸島沖のガラパゴスリフトであり水深は2500mです。
孔から噴き出す熱水は実に400℃にもなるそうです。
酸素はありません。
あれから40年。
有人潜水探査機「しんかい6500」などの活躍もあり、深海の様子が分かるようになってきました。
ウロコフネタマガイの発見された経緯、場所など
ウロコフネタマガイは、2001年にアメリカの研究者たちにより発見されました。
場所はインド洋かいれいフィールドの熱水噴出孔、水深2420m~2450m付近です。
インド洋の熱水噴出孔には注目が集まっているようです。
熱水噴出孔自体は海底に沢山あるらしいのですが、大西洋と太平洋で見つかる生物は異なっており、インド洋の孔には両方の生物が見つかり更に新しい生物が見つかる事もあるからです。
地球のへそはインド洋の深海にあるのかも知れません。
ちなみにこの辺りの海底は大きなプレートが3つ集まっている場所でもあります。
インド洋かいれいフィールド自体は、2000年に日本の無人深海探査機「かいこう」により発見されました。
スケーリーフットが硫化鉄の殻を持つ貝だという事で、2001年に日本チームも再調査に乗り出し個体の採取に成功、2011年にはイギリスの研究チームが初めて生きた個体の採取に成功しました。
いまやインド洋の深海はホットスポットになっています。
ウロコタマフネガイは通称名がscaly foot(鱗を持つ足)です。
スケーリーフットと呼ぶ方が一般的なようです。
彼らが生息していると考えられる熱水噴出孔の周囲にある物質は鉄、水素、硫化水素などで通常の生命体は生まれにくい環境です。
しかし、熱水噴出孔の周囲には一見毒になりそうなものを利用して生きている生物がわりといます。
生きていくのは大変ですが、天敵はいません。
ニュータイプの生命体の発見でもありますが、熱水噴出孔付近の環境は古代から変化があまりないと考えらえています。
しかもだいぶ古代、27億年前くらいだそうです。
陸上ではまだ大陸はなく、海底火山の活動によって少しずつ陸地ができそうかな、というくらいの頃です。
ウロコタマフネガイの生態について
スケーリーフットは腹足鋼の一種です。
全体の大きさは3、4cmほど。アンモナイトの様な巻き貝の中に細かい鱗状にみえる軟体部分が入っており、貝殻の表面には細かい筋模様があります。
色は黒。これは硫化鉄の色だそうです。
硫化とは物質と硫黄が化合したものですが、スケーリーフットの場合、硫黄と鉄が硫化した硫化鉄を貝殻にしています。
鉄を含むため磁石にくっつきます。
ごく普通の貝殻には炭酸カルシウムが含まれますが、これでは強度が足りず浅瀬にしか生息できません。
普通の貝類は危険があると貝に蓋をしますが、スケーリーフットは蓋がなく足をすぼめて殻の方を見せます。
これだけ頑丈な殻があれば、蓋など要らないのかも知れません。
鱗を持つ足、という名前ではありますが、細かなぶつぶつのように見える身体部分と、頑丈すぎる殻とのコントラストが少々グロテスクに見えます。
新たに白いスケーリーフットが見つかりました。
場所はプレートがひしめくインド洋海底で見つかった、新しい熱水噴出孔です。
水深は約2600mほどの海域です。
白い貝殻には硫化鉄を含みません。
黒いスケーリーフットの生息付近は水素が多めだったそうで、この環境の違いが貝殻の成分に影響を与えている可能性が考えられているようです。
貝殻の色合いから、黒スケ、白スケ、などと呼ばれたりします。
重量などは不明ですが、大きさの割には重みがあるような気もしますね。
スケーリーフットの貝殻の特徴と仕組みなど
ウロコタマフネガイの貝殻は三層で構成されています。
外側の層は硫化鉄です。
二層目はごく普通の貝にあるような成分だそうで、三層目は炭酸カルシウムでできています。
中間部分の層が一番厚いようです。
外側の外殻部分が何らかの衝撃を受けた時、その衝撃を和らげる為のクッションのような役割を担っていると推察されます。
おたる水族館の実験によると、深海1000mでは約100kgもの圧がかかるとのことです。
100kgを単純に想像すると、5kgのお米20袋分です。
金属合金の外殻を持つ生命体がいてもおかしくない世界かも知れませんね。
特徴の貝殻ですが、スケーリーフットが死ぬと錆びてしまうようです。
地層の様に発達した殻をもつスケーリーフットですが、寿命は今のところ不明です。
ウロコフネタマガイについて
今まで熱水噴出孔付近で発見される生物は、どちらかというと見た目はぼんやりした柔らかそうな生命体でした。
ウロコタマフネガイは鉄の鎧を持つ強固な生物です。
いずれにしても酸素もないため光合成も不可能、水圧も高く、餌となるものもない場所です。
生命体の原始的な姿である可能性もあり、大きく考えると我々の祖先のような存在かも知れません。
(ライター:おもち)