スエヒロタケという名前のキノコをご存じだろうか?
名前を聞いたことがなくても、山歩きをする人ならどこかで一度は目にしている極一般的なキノコ。
このキノコが実は益もあれば害もある、人に寄生するかもしれないキノコだったってことをご存知でしょうか?
スエヒロタケの生態
スエヒロタケはハラタケ目スエヒロタケ科スエヒロタケ属に分類される適応範囲の広いキノコで、針葉樹や広葉樹の倒木の樹皮や切り株の断面などに群生しています。
しいたけを栽培するほだ木などに発生することもあります。
一年中、特に春から秋にかけての時期に多く見られ、天候によってカサの部分が縮んだり、開いsたりするキノコです。
湿ると開いて扇型のようになることから、名前がついたと言われ、逆に乾燥したときには縮んで猫の足先のように見えることから、ネコノテという名前で記述のあるものもあります。
カサの直径は1~3㎝程度、縁の部分に不規則な切れ込みが入っていて、飛騨のように見えます。
半円形から扇型で、表面の色は茶褐色ですが、その上を荒い灰色っぽい毛が覆っているので、白っぽく見えることもあります。
一般的なキノコでいう、ツカのような部分はなく、直接木から生えているという感じ。
スエヒロタケと人間の関係
スエヒロタケは制癌剤として利用されています。
シゾフィランという成分が放射線治療に用いられ、副作用が少ないとされています。
特に子宮頸がんなどの放射線治療法では直接的な効果を上げるための増強として使われていますが、全く副作用がないわけではなく、注射時の疼痛や腫張、発熱などは伴うようです。
スエヒロタケ感染症
通常は何の問題もないスエヒロタケですが、まれに抵抗力の弱った人や病気がちの人が近づいたときに、肺の中にキノコの菌糸が入り、成長してしまうということが起こります。
これを、スエヒロタケ感染症と言いますが、症状としては咳や痰が多く出て、喘息のようなになったり、気管支アレルギーのような状態になったりするのだそう。
肺炎と間違われることも多く、レントゲンを撮ってもその区別はつかないのだとか。
外国では肺炎から脳炎になり、死亡した例もあるのだそう。
2012年までにスエヒロタケを病原菌とする症例は世界では71例の事例があり、そのうち日本からの報告は44例。
スエヒロタケの分布を考えると、感染する確率は非常に低いと言えますが、体調が芳しくない時に、山に入るのは危険ということ。
空気中に漂っている菌糸を吸うことによって感染するということですから、知らないうちに感染している危険性があるわけです。
日本でスエヒロタケ感染症の心配があるときは・・・・
日本では千葉大学の真菌医学研究センターというところが詳しい検査を行ってくれるそうで、レントゲンから血液検査、また痰の中や気管支の中に菌糸があるかどうかも調べることが出来るそうです。
直接外来などで見てもらうことはできませんが、近くの医療機関に相談すると、連携して診断や治療を手伝ってくれるシステムがあるそうです。
スエヒロタケのまとめ
スエヒロタケは広く一般的に針葉樹や広葉樹の倒木や切り株などに生えているキノコ。
環境の変化に強く、湿度の変化に応じて縮んだり広がったりと形を変える。
毒はないが、菌糸が動物や人間の肺に入って引き起こされるスエヒロタケ感染症という病気にかかる場合がある。
空気中に漂っている菌糸が肺に入るので、免疫の落ちている時や体の弱い人は山歩きの時にも注意が必要。
外国では肺炎から脳炎になり、死亡した例もある。
日本では千葉大学の真菌医学研究センターという機関で詳しい検査をすることができる。
(ライター ナオ)