サシバ(差羽)は鳥の名前です。
この鳥に名前がついた頃には、差し歯というものはまだ開発されていなかったのかも知れません。
江戸時代には差し歯がもうあったらしい、なんていう話もありますが、一般の庶民には贅沢な物だったのではないかと推測されます。
サシバの生態
矢切の渡しならぬ、サシバの渡りが有名。特に秋になると大規模な渡りを繰り広げます。
サシバはピィー、クィーッといったよく通る独自の鳴き声を出します。
上空を旋回する様子は、鳶に少し似ています。
成鳥のサシバの特徴は、虹彩が黄色っぽいこと、くちばしと脚も黄色で、先端が黒っぽい。
全体の羽毛の色合いはグレー含みの茶色。メスの方がオスよりやや色合いは淡いようです。
尾はそんなに長くはなく、黒っぽい茶色。英名はgray‐faced buzzardです。
しかし野鳥は個体により羽の色が微妙に異なることも多くあります。
サシバたちは巣を毎年作るようです。
水田の周辺や民家の近くなど、人の生活に身近な猛禽類でもあります。
幼鳥は胸がまだ白く、小型です。日本でのサシバの暮らしについては、詳しくはわかりません。
春になるとオスのサシバが先に戻ってきて、子育てによさそうな土地を探してメスを待ち、繁殖を行っていると考えられています。
一度に産まれる卵は多くても2、3個程。
約ひと月ほどで孵化して、親鳥が餌を運び、6、7月になると巣立ちするようですね。
サシバはタカ科タカ目タカ属の鳥です。
タカ(hawk)とワシ(eagle)にはそれほど明確な違いがあるわけではありません。
見た目の違いは、ワシの方がやや大きくしっかりした体格で、タカの方が若干細見でシュッとしているようなところでしょうか。
サシバの生息域
日本で見られるのは水田が広がるような農耕地、低めの土地など。
サシバの繁殖は九州地方とされていますが、埼玉県や長野県など北関東付近でも観測される事があるようです。
成鳥が見られるのは4月から9月まで。
冬は温暖な南西諸島で過ごしそこで越冬するか、もっと南下してフィリピンなどの東南アジアまで行くものいるとされています。
春になるとまた日本へやってきます。
秋の渡りの方が大規模であることが多いようですね。
また、個体数は少ないと見られており、2006年から環境省のレッドリストに入っています。
サシバが好むのは生態系が豊かに保たれている田園付近なので、致し方ないことではあります。
サシバの大きさ
成鳥で約50cmほど。
翼をひろげると1m以上。
タカの仲間としてはさほど体の大きい鳥ではないものの、サシバの別名は大扇です。
メスとオスの違いは、目の上の眉斑(びはん)という部分。メスの方が白っぽくくっきりしていることが多いようです。
翼は灰色っぽく見えますね。
ちなみにサシバにはアフリカサシバ、メジロサシバ、チャバネサシバの種もいますが、日本で暮らすサシバのように大規模な渡りを行うサシバは他にいないようです。
タカの渡り、サシバの渡り
サシバは9月になると、渡りを始めます。いい風が来るのを待ち、遠くまでいけそうな上昇気流に乗って南下します。
別名大扇とも呼ばれるサシバは大きな翼をひろげ、一羽、また一羽と気流をつかまえ次々に南へ飛翔します。
これがサシバの渡りです。
主な観測地は愛知県伊良湖岬、鹿児島佐多岬。伊良部島など。
見ることが出来れば実に圧巻でしょうね。
青空の下、翼をひろげた猛禽類が気流に乗って飛ぶ姿は、気持ちがよさそうです。
この秋の渡りには、その年に産まれた若鳥ももちろん同行します。
サシバの食性
サシバは水田の周囲のカエルやトカゲ類、ヘビ、両棲類などを好んで食べます。
多様な才物が生息する水田や農耕地のある里山などが、彼らの繁殖地、幼鳥を守り育てる場となります。
サシバのくちばしは下向きに少し下がっており鋭く尖っていますが、これは小型の動物を捕食するのにぴったりですね。
自治体などでサシバの保護を掲げているところもあるようですが、人が来すぎてかえってサシバが来なくなってしまったという事もあるようです。
野鳥の保護はとても難しい。
サシバと人間との関わり
最近では簡単に写真を撮ることができるため、野生の鳥に近づき過ぎたり騒いだりすると、サシバはその地に来なくなることもあるそうですよ。
サシバは本来人間の暮らしと近い場所に繁殖地をつくる鳥ですが、最近ではそれが減っているようです。
人間がその地の水田を放棄してしまうと、サシバも来なくなるという話もあるという。
古くから共生関係にある鳥ともいえます。
珍しい鳥に近づきたくなるのは分からないでもないですが、あまり知らないものに急に近寄られると、鳥たちは警戒します。それはタカの仲間のような猛禽類でも同じです。近づきたくないような恐ろしい鳥も存在しますが、サシバはそういう鳥ではありません。そっと見守る、くらいがよさそうですよ。
(ライター:おもち)