アカエリカイツブリは、北海道で繁殖をする水鳥で、バードウォッチングをする方々に人気があります。

このカイツブリ、実は万葉集や古事記の時代から、人々に慣れ親しまれてきました。

当記事では、そんなカイツブリ科のアカエリカイツブリについて紹介します。

アカエリカイツブリと人間との関り

アカエリカイツブリは、赤襟鳰と書きます。

この「赤襟」は、その字義のとおり「赤い襟(あかいえり)」のことです。

 

では「鳰」は、どうでしょうか。

そもそもカイツブリという水鳥は、室町時代以前は、「鳰(にお)」または「鳰鳥(におどり)」と呼ばれていました。この「鳰」という漢字は、入と鳥を合わせて作られたことから分かるように、水に没入することを示しています。

 

カイツブリは、頻繁に潜水をすることから、「鳰」という漢字をあてられ、「鳰(にお)」または「鳰鳥(におどり)」と呼ばれてきたのです。

古事記や万葉集にも登場

カイツブリは、『万葉集』や『古事記』にも「鳰鳥(におどり)」という名で登場します。

そのことからも、奈良時代の以前から、潜水をする鳥の代表として認識されていたことが分かります。

 

それが時代の流れとともに、ニオドリからカキヅブリ、カイツブリに呼び名が変化しました。そして「鳰(にお)」の漢字だけが残ったのです。

ちなみに、「かきずぶり」とは、水を掻いて潜るという意味です。

 

やはり、いつの時代でも、どの観測者においても、カイツブリの印象は「よく水に潜る鳥」です。

そして、アカエリカイツブリは、そんなカイツブリのなかでもクビからムネにかけて赤く、まるで襟(えり)のようにみえる種のことなのです。

アカエリカイツブリの生態

アカエリカイツブリは、カイツブリ目カイツブリ科カンムリカイツブリ属に分類される鳥類です。

アカエリカイツブリの生息地は、ユーラシア大陸、アメリカ合衆国、カナダ、日本。

 

日本では、冬季に冬鳥として九州以北に飛来します。

ちなみに日本国内で繁殖するカイツブリ類は3種で、そのなかでもアカエリカイツブリは、北海道でのみ繁殖します。

 

アカエリカイツブリは、カイツブリ類としては大型で、夏羽の姿は赤い襟がよく目立つ愛らしい水鳥です。

アカエリカイツブリの北海道での繁殖地は、道北や道東に限られ、そのなかでも道北のサロベツ原野が有名です。

アカエリカイツブリの浮巣

アカエリカイツブリは、水の上に浮いた巣を作ります。

その巣で産卵をすることが、古くから知られていました。

 

この巣を「鳰(にお)の浮巣(うきす)」といい、俳句の世界では夏の季語となっています。

水草などを積み上げたこのアカエリカイツブリの巣――鳰(にお)の浮巣(うきす)――は、風が吹けば波に揺られて、すぐに壊れてしまいそうなことから、不安定なことを示す慣用句としても使われます。

 

が。

実はこの「鳰(にお)の浮巣(うきす)」。

 

アカエリカイツブリの巣は、固定されたつくりになっていて、実際には不安定なものではありません。

ちなみに京都のお土産にも「鳰(にお)の浮巣(うきす)」という「くず湯」があります。

どろっとした「くず湯」に、水鳥を浮かべて味わいます。

 

ただ、この水鳥には赤い襟がついておりませんので、残念ながらアカエリカイツブリではありません。

京都のそばにある琵琶湖は、別名を「鳰(にお)の海」といいます。

 

たくさんのカイツブリが古くから生息しており、アカエリカイツブリもまた、越冬のために北海道から渡ってきます。

京都の人々にもきっと見られているはずなのですが、それでも銘菓にはなっておりませんでした。……なにかのキッカケでブームになりませんかね。

可愛いですよ、アカエリカイツブリ。早口で10回言うとか、アナウンサーや声優のトレーニングに最適ですよ。

アカエリカイツブリのまとめ

アカエリカイツブリについていかがでしたか?

先ほど「鳰(にお)の浮巣(うきす)」が、夏の季語だと書きましたが、実は「鳰(にお)」……すなわちカイツブリそのものは、冬の季語だったりします。

 

そのことは、もしかしたら北海道で繁殖するアカエリカイツブリが、冬になると京都を含んだ九州以北に、渡ってくることと関係があるのかもしれません。

古くからの言葉や歴史書にその足跡を残すなんて、なかなかすごい鳥なのかもしれませんね。

(ライター ジュン)