みなさんは「モズの銭勘定」や「モズの借金」といったコトワザや民話をご存知でしょうか。

モズは「百舌」とも「鵙」とも書く、スズメ目モズ科モズ属の鳥類です。

ここではそんなモズ属のなかから、アカモズを紹介します。

アカモズの生態

アカモズは、スズメ目モズ科モズ属の鳥類で、夏季に中華人民共和国や日本、ロシア東部、朝鮮半島で繁殖をします。

そして冬季になると、インドやインドネシア、東南アジアへ南下し越冬をします。

日本では、亜種のシマアカモズが九州南部や南西諸島、アカモズが北海道、本州東部に繁殖のため飛来(1)します。

本州西部、四国、九州では渡りの途中に飛来(2)します。

沖縄では越冬のため飛来(3)します。

 

このことからアカモズは、(1)夏鳥であり、(2)旅鳥であり、(3)冬鳥ということになります。

さて、そんなアカモズですが、平地から山地の農耕地や灌木林などを生息地としています。

 

特徴は、オスとメスがほぼ同色。

成鳥は、頭から背中側が赤茶色で、眉斑が白く額でつながっています。

 

オス・メスともに過眼線が黒く明瞭です。ほほから腹は白く、ムネからワキは、あわい橙色となっています。

ちなみに、メスはワキ腹がウロコ模様になっている個体が多いとのこと。

「ギチギチギチ」とさえずります。

 

亜種のシマアカモズが九州南部と、南西諸島を渡りの際に通過していきますが、しかしそれだけではなく、南西諸島では越冬個体も多く観察されています。

このシマアカモズの体色は、アカモズと比べて灰色が強いのですが、ただ色合いは個体差が激しいので、容易に判断はできません。

アカモズの食性

アカモズは開けた森林や林縁、草原などに生息します。

モズと同所に生息する場合は、モズの縄張りの間をぬうようにして生息しています。なんだか力関係が垣間見えてきますね。

 

そのアカモズの食性は動物食で、昆虫類、節足動物、両生類、爬虫類、小型の鳥類、小型哺乳類などを食べます。

モズ同様に、「はやにえ」をおこないます。

 

獲物に対しては、樹上から襲いかかる、もしくは、飛翔しながら捕えます。

そしてアカモズは、捕らえた獲物を、木の枝等に突き刺して「はやにえ」にしたり、木の枝股にはさんで貯蔵するのです。

はやにえとは?

はやにえ(早贄)……モズ類には、とらえた食物を小枝や刺(とげ)に突き刺したり、ひっかけたままにしておく習性があり、それら小枝などに放置されたものが「モズのはやにえ」とよばれる。はやにえにされるものとしては、昆虫、トカゲ、カエル、魚、小哺乳(ほにゅう)類、小鳥などがある。

この習性は1年を通じてみられ、とくに春から秋にかけてよくみられる。

はやにえにされたものの一部、あるいは多くは、そのあとに食べられる。(後略)

《引用:日本大百科全書(ニッポニカ)・小学館》

アカモズと人間との関り

アカモズと人間との関係を語るうえで、まず述べなければならないのは、アカモズが「絶滅危惧IB類」だということです。

アカモズは、開発による生息地の破壊などにより、生息数が減少しています。

 

そんなアカモズを含むモズ類は、日本人との付き合いがふるく、万葉の時代から古書や歌に登場してきます。

江戸時代ではありますが、小林一茶の「鵙(もず)の声 かんにん袋 破れたか」という俳句は、知っている方も多いかと思います。

 

ちなみにここで詠まれているモズの声は、「キーキー」というかん高い鳴き声で、高鳴きと呼ばれるものです。

この高鳴きは、狩り場を確保するための縄張り宣言だといわれています。

 

また、「百舌(もず)の銭勘定」というコトワザは、「鵙勘定(もずかんじょう)」ともいい、飲食の際に人に支払わせて自分では金を出さない、ごまかすことをいいます。

このコトワザで、モズと一緒に食事をしたのはハトとシギです。

 

このときハトは八文、シギが七文を支払っています。

もちろんモズは、びた一文払わなかったわけですが、この微妙な支払額の差から、ハトとシギが、むかしの人間にどう思われていたかが感じられて、ひどく味わい深いです。

「百舌の借金」という話もあります。

 

昔、馬方だったモズが沓職人のホトトギスから馬の沓を買い、代金を払わずに逃げまわったという……なんだかまた酷い役まわりです。

ちなみにその後、モズはホトトギスのために、木の枝に獲物を刺してご機嫌をとるようになりました。

もちろんどれも創作ですが、人間がモズをどのような目で見ていたのかよく分かります。

アカモズのまとめ

以上で、アカモズとアカモズを含むモズについての記事を終わります。

アカモズは、目が大きくてスズメによく似た愛らしい顔をしています。

 

しかしその本性は、どう猛で、自分の体と同じ大きさの鳥やケモノまで襲います。

そもそも動物食です。

そんなモズ属の見かけと性質とのギャップに、人は驚き、あるいはおそれから、上述の創作のようなズルい役まわりを与えたのかもしれませんね。

(ライター ジュン)