ニホンカモシカが岸壁に立ち、じっとこちらを見ているかのように見える光景は一瞬にして時間を止めてしまいます。

日本で唯一のウシ科の動物、ニホンカモシカについてのお話です。

ニホンカモシカの特徴と生態

ニホンカモシカは単にカモシカと呼ばれることもある、日本の天然記念物に指定されている動物です。

ウシ科カモシカ属に属し、京都以東の本州と四国、九州の一部の標高500~2000mほどの所に生息しています。

体長は105~112㎝、体重は30~50kgほどです。

白や灰色、灰褐色など地域によって毛の色には違いがあります。

頭骨の額が隆起していて、角は15㎝ほどのものがオスにもメスにも生えています。

 

単独で行動することが多く、4頭以上の群れをつくることはほぼありません。

臭覚や聴覚、視力がとても鋭く、目の下の眼科線や脚の蹄の間にある蹄間線から臭いを出し、マーキングし、なわばりを主張します。

 

オスメス共になわばりを作りますが、違う性別間では縄張りが重なり合うこともあります。

同性間では縄張りを巡って角と角を突き合わせて決闘する場面もあります。

 

オスの方がなわばりの範囲は広く、10~50haほどです。

食性は草食で、木の葉や広葉樹の草本、芽や樹皮、果実などを食し、休むときは樹の根元や斜面の岩棚で休みます。

 

朝や夕方に活動することが多く、岩壁にいるのは天敵のクマから身を守るためと考えられています。

じっと動かないでいる様子を時折見ることがありますが、それはウシ特有の反芻行動をしているのでは、と考えられています。

 

10月頃に交尾をし、妊娠期間は200日ほど、春の5~6月に一頭の子供を出産します。

生まれた子供は1年ほどを母親と一緒に行動し、その後独立しますが、この間の生存率は50%ほどなのだとか。

 

3年で性成熟を迎え、平均すると4年目くらいに初産を迎えます。

寿命は15年。飼育下では33年という記録もあります。

カモシカの食害

ニホンカモシカは樹皮などを食しますので、林業の盛んな地域にとっては害獣になってしまいます。

実際に1973年では岐阜で、1974年には長野で林業への悪影響のため駆除された歴史があります。

天然記念物としてのカモシカ

一方で、1934年には国の天然記念物に、1955年には特別天然記念物に指定され、山形や栃木、富山、山梨、長野、三重などでは県獣として位置づけられています。

愛媛や九州では絶滅の恐れのある動物として認識されているほどで、ニホンカモシカは日本にしかいない貴重な動物ということで天然記念物になっているのです。

ニホンカモシカに遭遇したら

もともと高地に生息しているニホンカモシカですが、生息場所の減少に伴って低い土地や海岸でもその姿を見かけるようになっています。

もしも、ニホンカモシカに偶然遭遇してしまったら・・・・

 

カモシカは好奇心が旺盛なので、遭遇するとじっとこっちを見つめてくるかもしれませんし、しばらくそのままで固まっていることもあるかもしれません。

でも大丈夫です、カモシカは決して人を襲ってくるようなことはありません。

 

カモシカが自分からその場を立ち去るまでそうっと見守りましょう。

人間の方が先に動いた場合は、きっとすぐに逃げていくと思います。

ニホンカモシカのまとめ

ニホンカモシカは国の特別天然記念物。

もともと高山に生息する動物が低地や海岸にまでその生息域を広げている。

 

木の皮などを食すため、林業の盛んな地域では害獣として扱われることもあった。

カモシカは人間を襲うことはないので、遭遇しても慌てず、カモシカの動きをじっと見守りましょう。

 

アニメの世界などでも、どこか神秘的な存在として描かれるカモシカ。

悠然と岩壁を歩き回る姿には、孤高で気高い雰囲気を感じるものです。

皆さんも機会があればぜひ、野生のカモシカを見に出かけてみてください。

(ライター ナオ)