サギというと、ヤマピーこと、山下智久主演のテレビドラマ「クロサギ」を思い浮かべてしまう筆者ですが、「クロサギ」とは詐欺師を騙す詐欺師、「アオサギ」とは企業を騙す詐欺師のことを指す隠語だそうです。今回は詐欺ではなく、鳥のサギ、「アオサギ」に注目します。

アオサギはホントに青い鳥?

アオサギはペリカンの仲間で、全長が88~98cm、羽を広げると150~170cmにもなり、日本で繁殖するサギの中でも最大の鳥です。

背中から羽にかけての色が青灰色に見えることから、アオサギと呼ばれるようになりました。

ただ、外国では灰色の鳥ととらえられています。

日本では古来白でも黒でもない淡い中間色を青とみなしていたため、灰色のサギを「アオサギ」というようになったともいわれています。

 

アオサギの顔や首は白く、目の上から後頭にかけて眉のような黒い筋があり冠羽につながっています。

首から胸にかけて破線状の黒い縦縞があり、クチバシは黄色です。

アオサギはどんな地域で見られる?

アオサギは、繁殖地と越冬地が異なるもの、1年中そこでとどまって暮らしているものなどさまざまです。

夏にユーラシア大陸中緯度で繁殖し、冬になるとアフリカ大陸中部や東南アジアに南下し越冬するものもいるし、大陸の南部に住むアオサギの中にはそこで1年中暮らすものもいます。

 

日本で見られるアオサギには、夏に北海道で繁殖し冬になると越冬するために南下するものと、1年中同じ場所で生活するものがいます。

アオサギはどんな生活をしているの?

アオサギは、川、沼や湖、湿原、干潟、水田など、水深の浅い水辺で主に魚をエサにしています。

魚だけではなく、両生類、昆虫、鳥類のヒナ、小型哺乳類なども食べ、30cm以上の大物を捕らえることもあります。

また巣から30kmも遠くまで狩に出かけることもあります。

アオサギの一生

アオサギは通常、単独か数羽で行動しますが、繁殖期になると松林などに、数十から数百のつがいが集まって集団繁殖地(コロニー)をつくります。

アオサギは一夫一妻制で、毎年同じつがいで同じ巣を使うことが多いようです。

 

巣の大きさは80cmにもなり、日本では4~5月に1回で3~5個の卵を産みます。

子育てはオスメス共同で行います。

1ヶ月ぐらいで孵化し、7~8週間で巣立ちますが、成鳥になるまでには2年ぐらいかかります。

 

アオサギの寿命は、37年という記録もありますが、そこまで生き続けられるのはごくまれです。

ヒナ鳥は天敵から狙われることも多く、幼鳥はエサをとるのが下手であるため死亡率が高いのです。

幼鳥が次の春まで生きられる確率は約半分ともいわれています。

アオサギは害鳥なの?

池で飼っている鯉や金魚を食べたり、養殖魚を食べたりするため、害鳥とみなされることが多々あるようです。

水田で稲を踏みつけることもあり、コロニーと民家が接近しているところではフンや鳴き声に対する苦情もでています。

 

イギリスなどでは駆除した結果、数が激減したこともあるとのこと。

一方日本では近年アオサギの数は増加傾向にあり、アオサギの姿を見かける機会が多くなっています。

人慣れするアオサギもいる!

アオサギは人慣れすることがあり、しかもかなりのお利口さんというか、むしろずうずうしいという例が報告されています。

 

釣りをしていると、そばに寄ってきてエサをねだったり、釣り人のバケツから魚を盗んだりすることがあるそうです。

また、池のそばでカモにパンを与えていたとき、それを見ていたアオサギはそのパンを狙っていたのかと思いきや、池に落ちたパンをめがけて集まってくる魚を狙って食べていたとの目撃談もあります。

アオサギの鳴き声ってどんな声?

通常は、「グワァー」という大きな甲高い声で鳴きます。

威嚇するときは、「ギャッ、ギャッー」。

 

飛行中には「グワッ」や「カァン」などと聞こえる短い声で鳴くこともあります。

求愛ディスプレイのときは、「グゥーー」とくぐもった低い声で鳴きます。

ヒナのときは「ピヨピヨピヨ」と弱い鳴き声ですが、大きくなりコロニーのヒナが一斉に鳴くとかなりそうぞうしい音になります。

 

アオサギは、いろいろな声で鳴くようですね。しかもかなり大きく甲高い鳴き声が多いので、近所から苦情がでることがあるというのもわかります。

日本人のアオサギへのイメージ

『枕草子』で清少納言は、現代語に直すと、「鷺は見た目がとても醜い。目つきなども気味 が悪いし、何かにつけてかわいくない」と述べています。

 

また、夏目漱石の『吾輩は猫である』で、苦沙弥先生の友人が、夜中の山中、小沼の奥で、「人の声にしては鋭すぎるし、鳥の声にしては大きすぎる」不気味な鳴き声を聞いたとありますが、これはアオサギの声ではないかといわれています。

 

さらに、『万葉集』などにツルを詠んだ歌はありますが、サギを詠んだものはないなど、サギやアオサギについてはどちらかというと負のイメージがもたれていたようです。

まとめ

養魚場などの方々にとってアオサギの被害の深刻さは受け止めなければいけませんが、駆除するのではなく防除する方法を工夫してもらいたいものです。

稲作中心だった日本では、サギは田んぼの神様「田の神」の使者だと信仰されてきた時代もありました。

いつまでもアオサギが身近にいる日本であってほしいと思います。

(ライター sensyu-k)