緑深い山々の合間を流れる清流のほとりで、デイキャンプをしてバーベキュー、夏が近くなると計画をたてずにはいられませんよね。

でもそんな楽しみをだいなしにしてしまうのがアブ、刺されたらたいへんです。アブに刺されないようにするにはどうしたらいい?アブの生態について見てみましょう。

アブってどんな昆虫?

アブとはハエ目・アブ科に属する昆虫で、ハエの仲間です。

アブの体長は2cm程度、色は全体的に黒っぽく、お腹に独特の黄金色模様をもっています。

大きな複眼が2つ、触覚は短く、半透明で大きな2枚の翅、筋肉の発達による背中の盛り上がりなどが特徴で、吸血性の害虫です。

アブは湿地、水田、川などの自然環境の中で棲息しているので、人間とはかかわりがないのですが、レジャーシーズンに人間が自然に分け入っていくと襲ってくるので油断できません。

アブの生態

アブは、ほぼ全国的に生息しており、飛び回っている時期は7月~9月です。

雑木林や渓谷など水辺の付近、家畜施設、糞尿がある不衛生な場所を好み、アブの多くは牛やブタなどの動物の血を吸って生活しています。

 

アブの卵は発生源近くの植物の葉裏などに塊状に産み付けられ、約1週間で孵化します。

幼虫はハエのウジに似ており、土壌に潜って微小昆虫などを食べて生活します。

 

約1年から3年ほどの幼虫期間を過ごし、春~夏の活動期になると蛹になり羽化します。

成虫の寿命は10~30日と言われています。

ハチ、ハエ、ブヨとアブの見分け方

暖かくなると、人間にまとわりついたり攻撃してきたりするうっとうしい害虫が増えてきてイライラしますよね。

それらの害虫はどうやって見分けたらいいのでしょうか。

ハチの特徴

ハチとは、ハチ目に分類される昆虫で、アリもその仲間になります。

アブとは違い、翅が4枚あるのが特徴です。

ハチは自ら人を刺すことはありませんが、ハチにいたずらをしたり、巣に近づいたりすると威嚇して襲ってきます。

ハチは、黒いものを目指して寄ってくるとも言われているので、ハイキングのときなどは服装の色にも注意しましょう。

ハエの特徴

ハエは、もちろんハエ目の代表です。

アブはハエ目に属しているのでハエの仲間です。

 

”五月蠅”と書いて「うるさい」と読みますが、ハエは私たちをイライラさせるうっとうしい存在です。

しかしそれだけではなく、恐ろしい病原体をまき散らすことがある害虫なのですが、うっとうしいだけで攻撃してくることはないので見分けがつきますね。

ブヨの特徴

ブヨは、ハエ目ブユ科に属しています。

アブと同じく人間などの哺乳類から吸血しますが、アブの体長が2cmぐらいあるのに対して、ブヨは2mm程度しかありません。

 

アブと同じく渓流や森の近くなどの自然環境で多く見られますが、アブとブヨでは活動期間が異なります。

アブの活動期間が7~9月であるのに対して、ブヨは3月~9月と活動期間が長いので、春先にも注意が必要です。

人間を刺すアブ、刺さないアブ

アブは動物から吸血しますが、実際に行うのはメスのみです。

メスは産卵のためにタンパク質が必要なので、獲物から吸血し養分を得ます。

人から吸血するアブの中で、よく見かけるものを挙げてみましょう。

  • イヨシロオビアブ:体長1.5cmほどの小型のアブで、大群になり人の周りを飛び回ることがあります。
  • ウシアブ:体長1.7~2.5cmぐらいで、目は緑色、ハエをふたまわりほど大きくしたような体です。山里にごく普通に見られるアブです。
  • アカウシアブ:体長2.5cmぐらいの大型のアブ。オレンジがかった縞々があるのが特徴で、一見、ハチとまちがってしまうような姿をしています。
  • 【アブに刺されないようにするためには?】

アブの多くは湿地や小川などが多い自然環境の中で棲息しており、昼間活動型で、特に早朝や夕刻などの薄暗い時刻が活動のピークと言われています。

なのでまず、自然豊かなところにレジャーにいくときには、事前に十分な準備をしておくことが大切です。

 

できるだけ露出をおさえた長袖・長ズボンを着用し、帽子をかぶり首の周りはタオルなどを巻いてカバーしましょう。

朝晩の活動は特に注意が必要です。アブに効果的な市販の虫除けスプレーなどもでているので、アブが多いところに出かけるときはそれらを用意して虫除け対策を行いましょう。

アブの駆除方法

河原などでデイキャンプをするときのために、手近にあるもので作れる超簡単アブ捕獲トラップの作り方をお教えしましょう。

《用意するもの》

  • ペットボトル2Lぐらいのもの1本
  • 酒150cc、酢50cc、砂糖50g程度
  • カッター、ひも

《作り方》

  1. ペットボトルの上のほうに、2、3箇所1、2㎝ぐらいの四角い穴を開けます。穴の底辺は、アブが止まれるように容器内側へ折り曲げてください。
  2. 酒150cc、酢50cc、砂糖50gをまぜて容器に入れます。
  3. あとは、フタをしたペットボトルを近くの木や花などの枝に吊り下げておきます。

簡単にでき、比較的安全なトラップなので、アブに困った時は、ぜひ試してみてください。

アブに刺されてしまったらどうすればいい?

アブはカのように針をさして血を吸うのではなく、鋭い口で獲物の皮膚を切り裂いて血を吸うので、アブに噛まれたときは「チクッ」とした痛みがあります。

噛まれた痛みと同時に出血を起こし、時間がたつにつれ腫れて痒みも増してきます。

 

刺されたときの対処法としては、まずは患部を洗い流して冷やしてください。

冷やすことで痒みも治まり、腫れも酷くなりません。

 

冷やした後は、市販の薬やステロイド剤を塗ります。

もし、いつまでも痛む、腫れが引かないといった場合は病院にいってください。

可能なら、刺した虫を持っていけばより的確な対応をしてもらえるでしょう。

アブは俳句の季語

アブの中には、全く吸血しない種類もあるし、春になり花が咲くと蜜を吸って受粉に役立ったりするおとなしいものもいます。

意外にもアブは、俳句歳時記で「春・晩春」の季語となっているのです。

 

明治時代を代表する俳人、正岡子規なども、アブを使った俳句を詠んでいます。

アブへのうとましさや親近感が伝わってきませんか。

・虻よ虻世にうとましき名なりけり

・馬の股ぬけつくぐりつ虻遊ぶ

・大仏の鼻の穴より虻一つ

・障子明け居れば病牀に虻の来る

まとめ

日本の昔話に「わらしべ長者」がありますが、ワラにしばったアブが出発点なんですよね。

都会ではほとんど見かけることはなくなったアブですが、昔から私たち日本人とは関わりが深かったと言えます。

夏に自然豊かな場所にレジャーでお出かけする際は、アブに刺されないように十分注意をしてください。

(ライター sensyu-k)

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