ゲンゴロウに似ているガムシは近年農薬などの影響で急速に減少したと言われています。

水を浄化する昆虫でもあるガムシについて、ゲンゴロウとの見分け方など詳しくお話しします。

ガムシの生態

ガムシは甲虫目ガムシ科に分類される昆虫です。

多くの種類は淡水の水中で生活しますが、3分の1ほどは陸生です。

水生のガムシ類は水田やため池などの止水域、河川や渓流などの流水域等に生息しています。

 

一方陸生のガムシ類は湿原に水際の地表などの水分の多い場所や森林のリター、腐敗した植物、海藻中、牛や馬などの湿りけのおい塊状の糞をする草食獣の糞塊中などが生活の場になります。

 

得意な例としては、シロアリの巣の中に生息する種類も知られています。

成虫の餌はおおむね水中のデトリタス、水生植物、糞等。

飛翔力があり、夜間灯火に飛来することもあります。

 

幼虫は肉食性で小動物の捕食者です。

ガムシや小型が虫といった大型種は水生の巻貝を主な獲物としています。

 

捕食する時は大顎を使ってまるで缶詰を開ける缶切りのように機能して巻貝の殻を切り裂き、中身を食べます。

そのため、モノアラガイのような右巻の貝や平巻きの貝は容易に摂食することができますが、サカマキガイのような左巻きの貝は上手く摂食出来ないことが知られています。

 

捕食の際は獲物の肉を嚙み砕きながら口から出す消化液と混ぜて溶けた肉を飲み込むという食べ方をします。

幼虫は20日間程度で2回の脱皮を経て終齢幼虫になり、十分に成長すると上陸して蛹室を作り、羽化後は体が硬くなると蛹室を出て水中へ戻ります。

卵から成虫になるまでの期間は約50日。その後は成虫で越冬し、寿命は半年から1年ほどです。

ガムシの繁殖方法

ガムシのメスは成熟し、5~6月に繁殖期を迎えます。

メスは交尾後ちょっと変わった形の卵袋を作り産卵します。

 

尾端から絹糸状の糸を分泌してこれを水草や落ち葉などの下面につけ、これをどんどん厚くすることによって横に口のある袋状にし、その中に産卵し、最後は再び絹糸状の白い分泌物で口を閉じてその上の部分を1㎝程マスト状に突出させます。

 

卵袋の外側の分泌物は厚い壁になり、卵が水にぬれることはなく、乳白色で光沢があります。

一つの卵袋の中には30~34個の卵が産み付けられます。5日ほどで孵化します。

ガムシとゲンゴロウの見分け方

ゲンゴロウはオサムシ上科に分類され、ガムシとは全く違った昆虫なので生態に関しては色々な点で違いがあります。

しかし、見た目は若干似ていることもあり比較されることも多いようです。

 

見た目の大きな違いは触覚。ガムシの触角はカブトムシのように短く、先が太く棍棒状になっていますが、ゲンゴロウの場合は長くてムチ状になっています。

また、付属肢に水掻きの役割をする細網が発達しているゲンゴロウと違いガムシは後肢の特殊化が進んでいないのでゲンゴロウ程上手に泳ぐことができません。

 

ガムシのどの種類も水中で体を小刻みに震わせながら早歩きするといった感じの遊泳方法をとり、ちょっと不格好でもあります。

更に小型のガムシでは遊泳毛のないものもいます。

 

水中で見るとガムシの腹面は銀白に光って見えますが、ゲンゴロウ類の腹面は光って見えることはありません。

また、呼吸方法にも違いがあるので、水面に上がってくるときにゲンゴロウが尾端からであるのに対し、ガムシは頭から水面に向かってきます。

ガムシのまとめ

ゲンゴロウと同じく、今では珍しくなっているガムシ。水中のギャングと言われるゲンゴロウと比べるとどこか不器用で愛嬌のある顔立ちに見えてきます。

皆さんも水中でゲンゴロウのような甲虫をみつけたら、その様子を観察してみて下さいね。

(ライター ナオ)