他の生き物の体内に寄生して生きる、寄生虫。

世の中には様々な寄生虫がいますが、人間に寄生するものも数多く存在します。

「日本住血吸虫」もそのうちの一つ。

 

聞いたことがないという人も多いかもしれませんが、じつはこの日本住血吸虫、下手をすれば死に至ることもある恐ろしい寄生虫なのです。

その被害を防ぐためにも、今回は日本住血吸虫の生態、そして寄生された時の症状などについて詳しく見ていきましょう。

日本住血吸虫の生態

日本住血吸虫は、人間を含め様々な哺乳類に寄生する寄生虫です。

淡水に生息する小型の巻貝「ミヤイリガイ」を中間宿主としており、哺乳類が水に触れることで皮膚から侵入し、疾患を引き起こします。

 

口や鼻からではなく、皮膚からってところが怖いですね…。

防ぎようがありませんから。

彼らは宿主の血管に寄生し、赤血球から養分を得て成長します。

日本住血吸虫の一生

日本住血吸虫は、水中で卵から孵ると、ミヤイリガイの体表から体内に侵入。

ミヤイリガイの体内でセルカリア幼生という形態になった後、再び水中へと戻るのです。

 

そして人間を含む哺乳類たちが水に触れると、その皮膚から体内に入り込み、肝臓の門脈付近に移動して成体となります。

成体の大きさは体長9mm~25mmほど…思ったより多くてビックリ。

 

こんなものが体内にいるのを想像すると、ゾワゾワしますね。

成体となった日本住血吸虫は消化管の細血管まで移動して、そこで産卵をします。

 

卵が産み付けられると細血管とその周辺の粘膜組織が壊死し、卵は壊死した組織もろとも消化管内へと零れ落ち、最終的には糞便と共に体外へ排出され、再びミヤイリガイに寄生して最終的には哺乳類へ…という循環を繰り返すのです。

日本住血吸虫に寄生されるとどんな症状が出る?

さて、いよいよ気になる症状について見ていきましょう。

まず一番初めに起こる症状としては、セルカリア幼生が皮膚から侵入した際に起こる「皮膚炎」が挙げられます。

 

炎症の一つ一つは2~5㎜ほどで、強い痒みを伴うのが特徴。

そしてその後は蕁麻疹や倦怠感、微熱などの軽い症状が見られるようになります。

 

感染時はこのように大したことのない症状であることがほとんどなため、感染に気付かないこともあるのです。

このくらいの症状なら、「虫刺されかな?」とか「風邪でもひいたかな?」と勘違いしてしまいますよね。

 

感染直後はまだ日本住血吸虫が成体になっていないため、症状が軽いのですが…彼らが卵を産み始めると、他にも様々な症状が。

上で少し触れたように、卵が産み付けられた細血管と周辺粘膜が壊死したり炎症を起こしたりするため、産卵された箇所で様々な症状が起こってしまうのです。

 

感染してから3~10週間ほどの期間を経て、突然の発熱…そして熱は上がったり下がったりを繰り返します。

そして下痢や血便、貧血、喘息ような発作などが引き起こされ、これが4~5週間ほど続くのです…。

 

しかし最も危険なのは、産み付けられた卵が血流にのって肝臓や脳に運ばれてしまった場合。

肝臓や脳に運ばれた卵がそこで血管を塞栓すると、肝硬変や脳炎を引き起こしてしまうケースがあるのです。

こうなると最悪の場合、死に至ることも…。

日本住血吸虫に寄生されないために

かつては地域的に大流行したこともある日本住血吸虫症ですが、現在では滅多に感染することがありません。

水田の側溝などをコンクリート製のものに変えたり、殺貝剤を使用することにより、中間宿主であるミヤイリガイを駆除することに成功したのです。

 

しかしミヤイリガイが絶滅したわけではありませんから、水田や用水路に入る時は裸足にならないなど、出来る限りの予防をしましょう。

(筆者は、今回調べるまで全く日本住血吸虫の存在を知りませんでした…。毎年、完全に裸足で田植えとかしちゃってました…。)

 

幸いにも日本住血吸虫症には特効薬があるため、もし万が一気になる症状が表れた場合は、すぐに病院を受診してください。

ただし一度ダメージを受けた肝臓は元に戻るわけではないので、なるべく早く受診することが大切です。

日本住血吸虫についてのまとめ

日本住血吸虫は、人を含め様々な哺乳類の血液に寄生する恐ろしい寄生虫です。

現在の日本ではそう心配することもありませんが、気になる症状が出た場合は速やかに病院へ。

感染していた場合、早期治療が健康を取り戻すカギになります。

(ライター もんぷち)