大きく雄大に海を泳ぐクジラたち。
彼らには天敵などいないように思えますが、じつはとても小さなある生き物によって、その生命を脅かされることがあるのを知っていました?
その生き物の正体とは、「クジラジラミ」という寄生虫。
一体クジラジラミとはどんな生き物で、どのような被害をクジラにもたらすのでしょうか。
かなり謎の多い生き物クジラジラミ、今回はその生態などについて詳しく見ていきましょう。
クジラジラミってどんな生き物?
シラミと言えば、他の生き物に寄生して吸血する寄生虫(昆虫)を思い浮かべる人が多いでしょう。
しかしクジラジラミは「シラミ」という名がついているものの、昆虫ではなく、エビやカニと同じ甲殻類の仲間です。
その中でも「端脚類」という種に分類され、「ワレカラ」(海草などにくっついているアレです。)に近い種だと言われています。
虫のようなエビのような、なんとも言えない見た目をしていますね。
一匹の大きさは数ミリ~数センチほどです。
クジラジラミは様々なクジラ類の表皮に寄生し、その皮膚などを齧り取って栄養源としています。
特に口元や生殖器周りなどのデリケートな場所や、傷口付近の柔らかい場所を好んで寄生するようで…。
寄生されたクジラにとっては、とても厄介な寄生虫ですね。
長く鋭い角をもつ「イッカク」も、角の根元などに寄生されることが多いそう。
一匹ずつはとても小さいクジラジラミですが、大量発生してしまうとクジラの命に関わることもあります。
頭の先から尻尾まで、ビッシリとクジラジラミに寄生されている個体が発見されることもあるんだとか。
全身の皮膚をちょっとずつ齧られるなんて…想像しただけで体中が痛痒くなってきそうですね…。
クジラジラミの詳しい生態についてはまだほとんど分かっておらず、今も研究が進められているそうです。
そもそもがクジラ自体、観察することが困難ですから、それに寄生する生き物なんてのもなかなか研究する機会もないでしょう。
生きたクジラを調べるのはもちろん難しいですし、座礁した亡骸などもそうそうお目にかかれるものではないですし。
まだまだ多くの謎に包まれています。
クジラの「ブリーチング」は寄生虫対策だった?
クジラたちがその大きな体を水上へとジャンプさせる「ブリーチング」。
とても迫力のある光景ですが、彼らがなんのためにブリーチングをするのか知っていますか?
あの巨体でジャンプしようと思うと、かなりのパワーが必要です。
1回やるだけで、きっとかなり疲れますよね…。
それなのになぜクジラたちはブリーチングをするのか…それはクジラジラミなどの寄生虫を、身体から振り落とすためです。
クジラジラミは、鋭い爪と腹にあるトゲで、ガッシリとクジラの皮膚を掴んで離しません。
また、クジラの表皮にしっかりと張り付くために、身体が平たくなっています。
普通に水中で振り落とそうとしても、なかなか落ちてはくれないのです。
ブリーチングはクジラジラミVSクジラの壮絶な戦いのシーンだったんですね。
また、クジラはクジラジラミの他にも、「フジツボ」などに寄生されています。
私たちが海岸で見かけるフジツボは1~2㎝ほどの小さなものですが、クジラに寄生するのは手のひらサイズもあろうかというような巨大サイズ。
時折、まだら模様だったり表皮が凸凹しているクジラがいますが、それはこのフジツボによるものです。
クジラジラミについてのまとめ
クジラジラミは研究できる機会が限られていることから、その生態はまだまだ多くの謎に包まれています。
フジツボなどと共にクジラの表皮に張り付き、その皮を削って食べてしまうという厄介な寄生虫。
大きく強いクジラにも、こんな天敵が存在したのですね。
(ライター もんぷち)