ケープハイラックスという動物がいます。
イタチのような感じですが、横顔はきりっとしていて、正面から見ると山にいるナキウサギのようでもあります。
どこに棲息し、何を食べ、いつ休み、どのように生きる動物なのでしょうか。
ケープハイラックスとは?
ケープハイラックスは岩のある地域に棲んでいます。ロックハイラックスと言われる事もあります。
分類上はイワダヌキ科ハイラックス目ハイラックス科ハイラックス属の哺乳類です。
彼らの具体的な棲息地は、アフリカ大陸の中部より南やエジプトからアラビア半島などです。
半分砂漠の様な樹が点在する地域にも、標高が2000mを超えるような地域にも棲息できる事から、環境に柔軟に適応する動物のようです。
ケープハイラックスの外見の特徴
ケープハイラックスは、灰褐色の体毛にどっしりした胴体に、短い四肢があります。
脚の先の方は黒っぽく、腹部の方が体毛の色合いが濃いようです。
体長は40cm~55cmほどで尻尾は殆どないように見えます。
肩のあたりまでの高さは20cm~30cmほどと、小型ですが体重は重く、2,5kg~5kgくらいです。
ケープハイラックスの外見の特徴は、脚の指です。
前脚には4本指があり、後ろ脚の指は3本です。
合計すると17本の指があります。
ケープハイラックスは脚も短く、大きいウサギのような体型ですが、木登りが速いようです。
頭は比較的小さく、猫のように頭が入る大きさの穴ならするりと通り抜ける事もできます。ケープハイラックスが大きく口を開けると尖った犬歯のような前歯が見えます。
上の歯の前歯2本のみが牙と化しているのです。これもちょっと変わっています。
この2本は無根歯です。他の歯はわりと普通なので、下顎から生えている有根歯によって摩耗し、一生伸び続ける2本を保っています。
このような尖った歯があると言う事は、ケープハイラックスは肉食なのか、せめて肉食傾向のある雑食なのかと思われますが、そうでもないようです。
ケープハイラックスが食べるものは、植物の葉や昆虫など、ごく小さいものです。
葉を食べる時は、前葉でなく、奥にある臼歯で食べているようです。
頭部の骨格標本を見るに、サイだとかそういう動物にも少し似ているように見えます。
ケープハイラックスの群れについて
ケープハイラックスは岩のあるようなところに棲息していますが、自分たちで巣穴を作る事はしません。
何となく土くらい掘れそうな気がしますが、岩の隙間や割れ目など自然にできたところや、ツチブタなどが作った巣穴のようなところに暮らします。
家族単位の群れをつくり、岩の上に登り、くっついて日光浴のような事をしています。
ケープハイラックスは体温調整があまりうまくできないので、時折日差しを浴びたくなるのです。
温まると、巣穴に入り込みます。ケープハイラックスは鋭い牙のような歯は2本ありますが、実際に役立てる気もあまりないようで、天敵も多くいます。
そのため、のんびりしているように見える時があっても、何かを察知すると素早く巣穴へ逃げ込みます。
そんな彼らの繁殖期は雨季です。
ケープハイラックスの妊娠期間は長く、7ヶ月~8ヶ月です。
寿命も比較的長く、10年ほどではないかとされています。
乳離れはひと月の事もあればもっと長くかかる事もあります。
ケープハイラックスのツメ
体に四肢を持つ動物にとって、脚は重要な部位です。
ケープハイラックスの脚はゾウの脚によく似ているのです。
脚のみを見てみると分かりますが、ツメが平たくなっているところが特に似ていますね。
肉食獣などの尖ったツメとは違う成り立ちのツメのようです。
ゾウの脚の画像を縮尺してみたら、角度によってはそっくりに見えるかも知れません。
その為に蹄を持つ有蹄類たちと近いのではないか、と言われています。
実は後足には鋭めのツメを持ち、毛づくろいなどに使っているようです。
しかしこのツメのようなものも、そんなに鋭くはなく痒いところに足が届く、というようなくらいです。
何か他の動物に攻撃を仕掛けるというものでもなく、巣穴すら掘らないのもそうだろうな、と思うような見た目はペロンとした脚です。
ケープハイラックスは、アクロバティックな恰好で後脚を使い耳の後を掻いている事もあるのです。
四肢がとりわけ短いので、体が柔軟でなければ頭には届かないでしょうね。
足裏からは分泌物を出し、岩やガケのようなところを登る時に滑り止めの役割を果たしています。
歩き方も変わっており、つま先のみを地面や岩につけて動くのです。馬のようです。
ケープハイラックスの特徴について
ケープハイラックスの特徴や生態は様々な動物を混ぜたようなものに見えます。
ますますわからないのは、DNAの調査ではゾウに近縁である、と言われている事です。
ゾウとケープハイラックスの類似点として、鎖骨がない、平たいツメのようなものを持つ、ケープハイラックスのメスの乳頭の位置、オスの精巣は腹の中にある事などがあります。オスの精巣が腹部付近にあるというのは他の動物にもありそうです。
鎖骨というのは四肢を持つ哺乳類にはあるようにも思えますが、猫や犬にはありません。
脊椎動物の頭骨と鎖骨は、他の内骨格と成り立ちが異なる事が分かっているので、鎖骨の有無はけっこう重要視されます。
余談ですが、人間の鎖骨は肩回りの動きと関係があります。
鎖骨のあたりの柔軟さが失われると肩こりになりやすい傾向があるようです。
私は鎖骨がほぼ水平なのですが、肩が360度回ります。
だからと言ってどうと言う事もありませんが、皆そうだと思っていたのでそうでない事を知った時は衝撃でした。
さらにケープハイラックスには胃が3室あると言われています。
反芻はしません。なぜでしょうか。棲息地が広いのでどんなものでも消化できるように具えているのでしょうか。
こういった事は、体の形に関する事が多いですので、他にもあれ?と思う点が多々ありそうな動物です。
しかし彼らは用心深く、高い岩山なんかを容易に登り、人間が近づくと俊敏に逃げてしまいます。
(ライター:おもち)