日本にはおよそ130種類ほどのムカデが生息していると言われています。その中で人家に侵入してきて悪さをするムカデはほんのわずか。しかしそうは言っても、これから梅雨の時期にかけてや、夏場は特に注意が必要。僅かとは言っても入ってくるムカデは入ってきますから。
私たちが注意したいムカデや愛好家たちの間で人気のムカデをまとめてみました。
トビズムカデ
トビズムカデは体長が8~15㎝、稀に20㎝近くにもなるムカデでその大きさは日本最大級と言われています。
赤い頭に黄色い足を持つ個体や朱色の頭と足を持つ個体など体色は様々。個眼は4つ、21対の脚があります。
北海道から沖縄にかけて生息し、春から晩秋まで雑木林の林床周辺で見られますが、暖地や屋内では一年を通して見ることもある日本産最大のムカデです。
肉食性でゴキブリ、バッタ、ガ、ネズミなどの小動物を捕食するので住宅地でもゴキブリなどムカデのエサになるものが繁殖している人家にはエサを求めて侵入します。また農地などにも出没するため人と遭遇することも多いムカデです。
頭部にある顎肢部分には毒腺があり、それを刺すことで相手の体内に毒を注入することができます。農作業中に誤って掴んだりすると人が噛まれることもあり、激しく痛みます。
毒の成分はヒスタミン、セロトニンなどのアミン類、また結球溶解作用を有するタンパク質が主成分。
アオズムカデ
アオズムカデは体長が75~100㎜程のムカデで全身がくすんだ深い緑色をしています。頭部と胴はほぼ同じ色で、足は黄褐色から赤色、先端付近はやや緑色をしています。頭部には1対の触角と左右4個ずつの個眼があり、歩脚は21対。
本州、四国、九州に分布する日本特産の亜種で普段はあまり日の当たらない雑木林や緑地に生息していますが、夏の産卵期前後に郊外の住宅地に侵入することもあります。
トビズムカデ程頻繁に目にするムカデではありません。
基本的には昼間は倒木の陰や草が生い茂った場所の土中や落ち葉、石の下などに隠れていることが多いのですが稀に葉や枝の先にいることもあります。活動は夜で、ゴキブリやコオロギ、昆虫やクモを鋭い牙で捕らえて食べます。
毒は日本に生息するムカデの中では2番目に強いとされるヒスタミン物質と溶結タンパク質が主体となった毒で血球溶解作用を持っており、噛まれると大きく腫れて痛みも激しいのが特徴。
アカズムカデ
あかずムカデは体長80~120㎜程のムカデで頭部と脚は濃い赤色で、体は黒いのが特徴でトビズムカデとよく似ています。本州、四国、九州に分布し石や落ち葉、朽ち木、ブロック、葉の下などの湿気の高い所に生息しています。
トビズムカデ、アオズムカデと同様に家屋に侵入してくることもありますが頻度としてはトビズムカデ、アオズムカデに次いで3番目くらい。湿気の多い床下から畳をくぐってエサを求めて侵入してくることが多いようです。
エサはトビズムカデ、アオズムカデと同様に昆虫。ゴキブリやコオロギなどを食します。
日本に生息するムカデの中では最も強い毒を持っているとされ、噛まれた時にはかなりの痛みと共に疼痛やしびれ、赤くはれるなどの炎症を起こします。また、アナフィラキシーショックを引き起こすこともあるので注意が必要です。
日本の屋内で咬傷を起こすムカデはこれまで紹介したトビズムカデ、アオズムカデ、アカズムカデの3種類。毒性の強さはアカズムカデ>アオズムカデ>トビズムカデだと言われています。
更に次に紹介するタイワンオオムカデも家の内外での咬傷被害が起こっているムカデです。
イッスンムカデ
イッスンムカデは名前の通り体長が2~3㎝程で、体全体が光沢の強い濃褐色をし、体節と歩脚は15。触角は20個の節からなり模様が入っている様に見えます。全体としては暗い赤褐色をした太くて短めのムカデです。
東アジアに分布し、日本では全国的に見られます。林内の朽ち木や倒木、石の下などに生息していますが人家付近でも比較的多く、見た目が不気味であることから不快害虫として扱われます。
エサは小型の昆虫で、子育てが終わった頃にそれらの昆虫を求めて家の中に入ってくることもありますが基本的には屋外で生活しているムカデです。人を噛むこともほとんどありませんし、毒性も強くありません。
ヤンバルオオムカデ
ヤンバルオオムカデは体長12㎝前後で沖縄本島に分布している珍しいムカデです。最大では30㎝程の個体もいると言われ、体色は緑がかった黒色で脚が薄緑色のグラデーションになっていてとても美しいムカデです。
個体によって多少色合いの違いはありますが翡翠色~黄色というのが一般的です。
分布などの詳しい範囲は明らかにはなっていませんが、沖縄本島を中心分布。沢などの水辺のような湿気の多い所に生息しています。
他だのオオムカデと同様に肉食性で獲物は昆虫です。
美しい体色と見ごたえのある大きさが人気で、国内では飼育している人も多いようです。
毒性についての記述は見当たりませんが、ムカデですから多少なりとも毒性はあると思っておいた方が良さそう。何より体長の大きなムカデは大顎も大きい場合が多いので、飼育の場合も噛まれないようにハンドリングなどには十分な注意が必要です。
タイワンオオムカデ
台湾オオムカデは体長が200~250㎜程で大著区は黄色、各節の間に黒いバンドが入っていて、頭部は亜黒い個体や赤い個体などが存在します。脚部も赤や黄色の個体が存在し、色彩変異は多い種類です。
中には全身が赤色をした毒々しく美しい個体もいます。後脚が太いもの特徴です。
日本では南西諸島に広く分布していて、現地では普通に見られます。他のオオムカデと同様比較的湿った環境に生息していて、農道脇に捨てられた木の板の下、林内の朽木の内部、庭先の植木鉢の下、石の下の環境に生息しています。
家屋に侵入することもありますが毒性はそれほど強くなく、噛まれても命に係わるほどのことはありません。
家屋に侵入すると害虫として駆除されてしまうことが多いのですが、畑の作物を荒らすイモムシなどを捕食するので、益虫としての側面も強いムカデです。エサは他のムカデと同じく肉食で昆虫類です。
ガラパゴスオオムカデ
ガラパゴスオオムカデはガラパゴスジャイアントなどとも呼ばれ体部分がとても分厚く、鬼航肢がとてもギザギザしています。曳航肢は外敵に触角と勘違いさせてどちらが頭部かを分かりづらくするための飾りと言われていて、ラパゴスオオムカデは触角がとても長いのでも長いのが特徴。
体色は光沢のある黒褐色で脚は黄色でまるで虎のような雰囲気があります。
最大で60㎝程にもなり、もはや私たちの知っているムカデの域をはるかに超える大きさです。その大きさは世界最大です。
通販サイトなどで大型個体が7万円程の高値で販売されることもありますが、毒性も強く動きも早いので飼育するには十分な注意が必要です。
ベトナムオオムカデ
ベトナムオオムカデは体長が30㎝程にもなる大型のムカデで、体表は通常は赤色、赤褐色で脚は黄色または黄褐色です。東南アジアに分布しています。
食性は昆虫の他小型の哺乳類や爬虫類なども口にし、大型の個体はネズミを毒で殺して食べたり、ベトナムオオムカデを捕食しようとして近づいてきたヘビを食い殺してしまうこともあると報告されています。
子供が首を噛まれて死亡した例もある程気性が荒く攻撃的で、強い毒を持っています。
通常人間がこの毒を注入されると、激痛がはしり正しい処置をしないと死に至ることもあるので注意が必要です。
日本ではペットとして飼育されていて、かなり人気の種類であるようです。通販サイトなどで10,000円前後で手に入れることができます。
ペルビアンジャイアントオオムカデ
ペルビアンジャイアントオオムカデは世界最大のムカデで体長は通常20~30㎝程、最大で40㎝を超える巨大種です。
頭部の色は赤で胴体はワインレッド、節目の関節の色がピンク、脚の色が黄色という派手な体色。
ブラジルやペルーなどの南米に分布し、熱帯雨林の地上層に生息しています。基本的に夜行性で場所によっては昼間も活動し獲物を求めて木に登ることもあります。
肉食性で獲物は昆虫類やクモ、サソリ、タランチュラ、トカゲやカエルにマウスや小鳥、時には小型のヘビなど。
とても獰猛で触れたものには全て容赦なく噛みつきます。毒の有無は不明ですが体の大きさや捕食している獲物から判断しかなり危険と言われています。
ムカデの種類のまとめ
いかがでしたでしょうか。
ムカデと一言で言っても害虫として扱われ0円にもならない、まして駆除する為にはかえってお金がかかってしまうムカデから、かたや注目を浴び10万円程のお金を出し購入されるムカデまでご紹介していきました。
まるで人間社会を見せつけられているようで何だか複雑な気持ちになりもしますが、これからの時期、参考にしていただけたら幸いです。