肝吸虫(clonorchis sinensis)は人間を含む哺乳類を最終宿主とする、吸虫類とも言われる寄生虫の一種です。

かんきゅうちゅう、と読むようです。肝吸虫の寄生というよりもジストマ、という方が聞いたことがある方もいるかも知れません。

昔はたしか肝臓ジストマと呼ばれていました。

肝吸虫の寄生による症状や人間の胆管の役割について

肝吸虫の寄生が少ない場合、自覚症状がほぼないのが特徴です。

そのため、存在に気付かずにまた生食をしてしまう事もあるようです。

 

肝吸虫が人間の体内に入ると、長くて15年は生きると言われています。

肝吸虫は人間の胆管に寄生します。

人間の胆嚢の役割は肝臓で作られる胆汁を貯蔵する事で、胆管の役割は胆汁を十二指腸に運ぶ事です。

 

胆管は幾つかの部位に分かれていますが、全長10cm前後である事が多いです。

胆嚢と胆管を合わせて胆道と言います。

 

何かを食べるとまた胆汁が作られるので、胆汁のタンクである胆嚢は収縮し胆管を通って十二指腸へ運ばれ消化吸収が行われます。

この辺りに肝吸虫が寄生すると、摂食や消化吸収に関する重要な働きが正常に働かなくなり、寄生虫が多いと重篤化する恐れがあります。

 

ただし、あまりに寄生虫が増えた場合はとても体調が悪い状況、食欲不振、悪心や腹部の腫れ、腹部を痛みがあるなど、主にお腹まわりの症状が出始めているはずです。

悪化すると肝硬変などになってしまう可能性があります。

 

病変してしまうと、寄生虫の駆逐は可能でも、体の調子を大きく崩してしまいます。

北大路魯山人はタニシの食べすぎでなくなったのではないか、などと言われる事があるようですが、彼の好みは淡水に棲む生のタニシだったらしいのでそういう話が出るようです。

吸汁虫の棲息地

主に東南アジア、台湾、中国、日本などに棲息しているとされます。日本では八郎潟、利根川、琵琶湖、吉野川、筑後川など淡水の川に棲息していると言われています。

淡水や釣りが趣味の方はよく注意しましょう。

よく知っているつもりの生物でも、実際にどこでどのように何を食べているのかを人間が正確に掴むのはとても難しい事です。

肝吸虫の感染経路や予防について

肝吸虫は卵から生まれます。寄生虫は宿主を変える事で徐々に成長していきます。

その卵が淡水に棲む貝類のマメタニシなどの体に入りセルカリアというものに成長し、淡水を漂うようにして動物食の淡水魚の体内に侵入します。

 

棲息地によりますが、コイ、琵琶湖などに棲息するモロコ、最近は珍しいコイ科のヒガイ、タナゴ、などです。

この時点で肝吸虫の体の大きさはたったの0.15mmです。

 

メタセルカリアと呼ばれる状態になった肝吸虫に寄生されている魚を人間が生食すると、十二指腸内で排泄し、人間の体内の胆管に寄生し、4週間ほどで成虫になります。

肝吸虫の成虫は平べったい扁平状で、大きさは10mm~25mm、幅は3,4mmほどだそうです。

 

肝吸虫の感染経路の特定や生態がはっきりしにくい原因に、体が小さいという点にあります。

体が大きいと寄生虫として生きる事は困難なので当たり前ですが、感染経路の特定が難しい為、肝吸虫の寄生を防ぐにはやはり淡水魚を生あるいは生焼けの状態で食べない、という事が肝要です。

肝吸虫の寄生による症状について

寄生された川魚を生で食べた場合、初期症状はほぼありませんが連続して淡水魚を生で食べると、知らないうちに肝吸虫の寄生が増え、症状が出てくる事もあり得ます。

また、アジア圏に旅行に行き、例えばメコンで獲れた魚を生焼けで食べてしまう、というような場合も注意が必要です。

 

昔はそれこそ外国で生ものは食べない方が良い、などと言われていましたが、現代ではそう口やかましく言われる事もそんなにないようです。

しかし場合によっては寄生虫というリスクがある事も頭に入れておきましょう。

 

生食を避けるのもそうですが、酢漬け、塩漬けあるいはワイン漬けの川魚を食べた場合もそのような危険性があると言われています。

お腹の具合がよくないなど症状や心当たりがある場合は内科を受診しましょう。

寄生虫の検査は便を調べれば判りますし、肝臓の数値は血液検査でわかります。

(ライター:おもち)