多くのチョウは草食性であり、葉の上で孵化した幼虫はその葉を食べることで成長していきます。
そして蛹を経て成虫になった後は花の蜜を吸って生きています。
しかしまれに食性の異なる種が存在します。
ごく少数派のチョウとなります。その中でもゴイシシジミというチョウは完全な肉食性として有名です。
碁石が並んでいるような模様
ゴイシシジミは「碁石」が名づけの由来と言われています。
それはゴイシシジミの翅の模様に関係しています。
翅の表側は黒っぽく地味な色をしていますが、裏側を見てみると白く、その中に黒い斑点が散りばめられています。
この様子を碁石に例えたようです。
翅の裏面がこのような模様となっていますが、どこかに止まっているときには翅を閉じるので模様がよく見えるようになります。
ゴイシシジミのいる場所
アジア東部に主に生息しており、日本でも全国的に分布しています。
山地や林など、そして民家近くでも現れる可能性はありますが、実はゴイシシジミのある特徴によって局所的にしか発生せず、発見には時間がかかるかもしれません。
局所的にしか発生しない理由は、ゴイシシジミが肉食性でありアブラムシしか食べないからです。
ササやタケなどにアブラムシがついているのでそのような場所にしかゴイシシジミは現れません。
日本で唯一の完全肉食性
チョウのほとんどは草食性です。しかしなぜかゴイシシジミは肉食性です。
幼虫期のみ肉食性を示すものもいますが、完全な肉食性、つまり幼虫から成虫にかけて全期間において肉食性であるのは国内のチョウではゴイシシジミのみとなっています。
しかし一般に肉食性と言えば肉をむしゃむしゃと食べるイメージであるのに対してゴイシシジミはアブラムシの分泌液を吸い取ります。
アブラムシはカメムシの親戚のようなものであり、植物の上で生活する弱い虫です。
小型で力も弱く、集団で生活することから敵から狙われることも多いです。
ゴイシシジミの場合は分泌液を吸い取るだけですが、テントウムシはアブラムシにとって明らかな天敵となります。
ゴイシシジミは成虫になってもアブラムシの分泌液を頼りに生きているので発生個所も限られることとなっています。
植物などは一切口にしないという徹底ぶりで、食事の際にはストロー状の口でアブラムシから出る蜜を吸い取ります。
やや似ている種もいる
ゴイシシジミはシジミチョウ科に分類されます。
この分類の枠内のチョウは似ている性質を持っているものもおり、特にクロシジミと呼ばれる種はゴイシシジミに近いと言われています。
クロシジミは色味が異なるものの翅の裏側に斑点が付いている模様などは共通しています。
さらに肉食性であることもゴイシシジミと近い性質を持っています。
しかしクロシジミの場合完全な肉食ではありません。
幼虫期には同じようにしてアブラムシの分泌液を吸い取りますが成長に合わせて変化していきます。
興味深いことに幼虫期の途中からはアリと共生し、アリから餌をもらうことで成長すると言われています。
アブラムシの分泌液はゴイシシジミのみならずアリを引き付ける効果もありますが、その結果アリとクロシジミにも関係性が生まれているようです。
ゴイシシジミは碁石のような模様とアブラムシがポイント
クロシジミは性質が近いと言ってもゴイシシジミと見間違えることはありません。
ゴイシシジミのほうが黒と白のキレイな翅をしています。
幼虫期にはアブラムシの分泌液を摂取するという点で共通しているもののゴイシシジミのほうがアブラムシに依存して生きているので、タケなどがあり、アブラムシの集団がいる場所でチョウを見かけることがあればこの種である可能性が高いです。
あとは模様をよく確認してみると簡単に見分けができるでしょう。
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