海というのは陸に棲む生物にとって、それ自体が神秘といってもよいくらいです。
広大な海の中に棲むクラゲは、一口に「クラゲ」といってもたくさんの外見の特徴、生態の特性、あるいはよく分かっていない部分に満ち満ちています。
その中でもクダクラゲは全く神秘的であるとしか言いようがなく、他に形容詞を思いつけないくらい変わっています。
クダクラゲの特徴やクラゲの種類など
クダクラゲの最大の特徴は「群体」をつくる事です。「群体」はその呼び方が示す如く、群れの様になっている、という事で、クダクラゲの群体の長さは長いもので50m~80mにもなるといわれます。
クダクラゲの棲息する海域は、600mから1000mくらいの深海である事が多いようです。
クダクラゲの鮮明な姿が映像にうつる事は稀であり、どのような姿なのかはっきりしない事すらあります。
クラゲは刺胞を持つものと持たないものに大まかに分かれています。刺胞を持つものに箱虫類、ヒドロ虫類、鉢虫類がいます。
クダクラゲはヒドロ虫類に属します。ヒドロ虫の仲間の生物にはカツオノエボシ、花クラゲなど、似ても似つかないような外見や生態をもつ種が多くいます。
一般に傘のようなものの下に細長いものがついた昔の火星人スタイルを思わせるクラゲは、鉢虫類の仲間です。
クダクラゲの群体の役割
クダクラゲの生態について語る上で欠かせないものに、群体の役割があります。
クダクラゲは、浮遊するヒドロ虫が一緒の生命体のようなまとまった形になり棲息している生物です。
しかし、ただ連なっている訳でもなく、個体ひとつひとつに異なる役割が与えられているらしいのです。
遊離や浮袋に徹する個体、捕食、消化が得意な個体、生殖に適したものなど、生存する為に必要不可欠な役割をそれぞれが担っていると言われています。
もはやひとつの生命体というより、生きた歯車のようです。2002年に相模湾沖水深760mほどの海域で見つかったクダクラゲの一種、ヒノオビクラゲは細長い透明な体にオレンジ色の部分もあるクダクラゲです。
比較的透明なヒレのような器官が泳ぐのに適した個体だそうです。
760m程の海域は中深層といわれ、太陽光線はわずかに届くくらいの海域です。
そのため、植物性のプランクトンは棲息せず、植物性プランクトンを捕食する動物性プランクトンなどが棲息します。
広義にはクラゲも動物性プランクトンに入るようです。
クダクラゲの構造
このように役割分担が決まっている群体のクダクラゲは、受精卵から発生します。
その文化の途中に生殖器官、泳ぐ為の器官などに分かれていくといわれています。
移動に関する器官は泳鐘(えいしょう)と呼ばれたりします。
個の集合体のように考えられるクダクラゲの生存法ですが、発生していく段階で個の役割分担が決まっていくのかもしれません。
クダクラゲの餌
クダクラゲは何を食べるのでしょうか?クダクラゲの仲間にシニガミノカマというものがいます。
このシニガミノカマは、普段は深海を何気なく漂っていますが、鎌状のものがついた体をしています。
鎌状の器官は発光器でもあり、餌となる微細な生物を誘引するといわれます。深海に棲む生物たちは、発光器を持つ場合が多いのですが、クダクラゲの仲間も多くは発光するようです。
水深200m以下に棲息する生物たちは、何らかの目的をもって光っている場合が多いようです。
クダクラゲの成長
群体を構成するクダクラゲの成長過程も判然としないのですが、生殖時期になると幼体がばらばらと海中に散り、大きな生物の表皮にくっついて栄養を摂取するものもいるようです。
その後出芽といわれる、クダクラゲの分化のような事によって個体が増えていくと、固着型の生活を終え、めでたく「群体」になると考えられています。クダクラゲが群体になるのは容易ではなく、海中に浮遊する時点で捕食される事が多いようです。
「出芽」というのは分裂のようなもので、出芽により生じた個体の役割が異なる場合に使われる用語です。
クダクラゲの神秘
クダクラゲは群体の姿で棲息しているので陸にあげると散り散りになってしまいます。
最近では2500mほどの深海で球体のようなものに細いハリのような触手をもつ、海底を移動する事ができるらしいクダクラゲの仲間が発見されたそうです。
一見何かを探査しているロボットのようです。
細長い群体をつくるだけではないクダクラゲは、一体どんな生き物なのか実像が見えにくい未知の生命体のようです。
(ライター:おもち)