「龍」や「ドラゴン」と聞いてその姿をイメージすることのできる人が多数だと思います。
しかしこの両者は現実に存在するものではありません。
にもかかわらずこの名称が風化することなく現代においても通じるということには、それだけ印象的な存在であり、ある種象徴的な存在であるということが関係しています。
しかし龍とドラゴンは厳密には異なる存在です。そこで、この両者にどんな違いがあるのか考えていきましょう。
一般的に共通する龍とドラゴンの特徴
現実には両方とも存在しない生き物であり、そして本来異なるものですがなぜか龍を英訳するとドラゴンになります。
その理由はこの両者にいくつかの共通点があるためです。どちらも架空の生き物で、強大な存在です。
そして爬虫類型の巨大生物という点も似ています。
色んな時代に色んな地域において色んな形態で描かれていますが、区別すると西洋のドラゴン、東洋の龍というように分けるのが一般的です。
東洋の「龍」
では具体的にどのような違いがあるのか見ていきます。
大きな爬虫類のような生物という点までは似ていますが、龍の場合体が長く蛇をベースに手足を生やしたような容姿をしていることが多いです。
それに対してドラゴンはトカゲがベースで胴体部分がしっかりとしており大きな羽を持って描かれることが多いです。
龍はその由来が中国における伝説上の生物からきています。
古来より神秘的な存在として扱われ、神聖で、尊いものを表します。神の一種のようにも扱われます。
容姿はドラゴンに比べるとデザインが人によって大きく変わることは少ないです。
その理由は容姿の設定がしっかりと体の各部分までされているからです。
詳細に説明すると、龍は九つの生き物の特徴を備えた神獣でありその角は鹿、目は鬼、体は蛇、腹は蜃、鱗は鯉、そして鷹の爪と虎の手、牛の耳を持っています。
蜃とはこれまた伝説の生き物で、蛇とキジが合わさったものです。
この性質を持ってこそ龍なので、龍そのもののデザインは安定しているのです。
西洋の「ドラゴン」
ドラゴンも龍と同様神話などに登場する伝説の生き物です。
しかし最も大きな違いはその立場や扱われ方です。
龍は神聖なものでしたがドラゴンは悪しきものの象徴とされることが特徴です。
悪魔の使いとされることもあり、ドラゴンの持つ大きな羽も悪魔の持つ羽と同様のものとして描かれます。
ベースとなっているトカゲや蛇は西洋で嫌悪される文化があったことからこうしたポジションになったと考えられますが、このことに加えて龍とドラゴンの差は意外な理由で生まれています。
どうしてドラゴンと龍に差が出たか
そもそも異なる生き物なので扱いに差が生じるのは当然とも言えますが、とても良く似た伝説上の生物であるにもかかわらず神のような扱いを受ける龍、かたや悪魔のような扱いを受けるドラゴンというように差があります。
その理由には宗教が関係しています。
日本では特に、八百万の神という言葉があるように万物に神が宿るという考えがあり、様々な神が存在してよいとされています。
一方で西洋では一神教の考え方が強く、神は世界にただ一つ存在するのみであると考えられ、その姿は人間に近いことが多いです。
そのため伝説上の生物であるもののドラゴンは化け物というネガティブな存在になっているのです。
そもそもこれらの地域での蛇は人間にとっての敵であり神々に敵対する存在とされています。
龍とドラゴンは普段それほど区別して言葉の使い分けをされることはありませんが、両者の違いを探ってみると色んな時代背景まで見えることとなり、文化や考え方の地域性がこの架空上の生物に現れているということが分かるのです。