手足がなく、目や口も見当たらず、ただくねくねと気持ち悪く動くミミズ、「目見えず」から「メメズ」になり「ミミズ」という名前になったといわれています。

庭や畑の土を掘るとよく見かけ、農業では土壌改良をする益虫として扱われているミミズですが、ミミズは虫なのでしょうか。

ミミズの分類を通して「虫」とは何かについて掘り下げます。

ミミズとは?

ミミズは環形動物門貧毛鋼に属する動物の総称で、目がなく、手足もないひも状の動物です。

ミミズの体は細長いのですが、たくさんの体節に分かれています。

よく見ると体節ごとに剛毛が生えていて、この剛毛により前方へ移動することができるのです。

体節は柔らかい膜状で囲まれており、そこに水分を溜め込むと水圧により頑丈になり、土を掘ることもできます。

 

血管はありますが、呼吸器はなく皮膚呼吸のみを行っています。体表には微小な視細胞が散在し、光の方向を感知することができます。

雌雄同体で、2匹が体を逆方向に向けて互いの精子を交換し産卵します。卵からはほぼ親と同じ姿の幼生が生まれます。

 

産卵を終えたミミズは冬に死に絶え、寿命はほぼ1年です。

ミミズは、敵に襲われるとトカゲのように自らの体を切って逃げます。けれども前半身からは再生しますが、後半身は死んでしまいます。

ミミズと形が似ている仲間

環形動物

ミミズのようににょろにょろくねくねと動く生き物は、そのほとんどが環形動物門に分類されます。

さらに、手足のないミミズ全般は貧毛類、ミミズと同じく釣り餌にするゴカイ、イソメなどミミズに足が生えたようなものは多毛類、血を吸って膨れ上がるヒルも環形動物の仲間で、ヒル類に分類されます。

線形動物(線虫)

くねくねと線のように細い生き物で、寄生虫、回虫・蟯虫がこの仲間です。

種類・数ともにどんどん増加していくので数えきれないほどの種がいるとのこと。

 

人間の寄生虫として悪さをする回虫・蟯虫などが有名ですが、最近は、魚介類を通して感染するアニサキスなどが問題になりました。

植物に寄生して病気や傷害の原因となる線虫もいて、ときに農作物に深刻な被害を及ぼします。

一方で、がん患者とそうでない人の尿のにおいを識別する線虫の研究なども進んでいるとのことなので驚きです。

サナダムシ

扁形動物門に分類される生き物の総称です。

成虫はすべて寄生する虫で、真田紐のように体が扁平でくねくねと長く、10メートル以上になるものも存在するとのこと。

 

魚介類などを通して人間の体内に寄生を始めますが、サナダムシそのものには毒があるということはなく、症状がでないことが多いようです。

ただ、サナダムシは食いしん坊なので、人間の吸収した栄養を横取りして成長します。

 

そのため、腸内でサナダムシを飼育して余分な栄養をサナダムシに与えるというダイエット法が話題になったこともありましたね。

サナダムシにもいろいろな種類があり、脳に寄生して激痛を起こしたりすることもあるようです。

そのほか

シャクトリムシ、イモムシ、蚕などの蝶や蛾の幼虫も形の上では、ミミズに似ているともいえます。

ミミズは虫なのか?

ミミズは漢字で表すと「蚯蚓」になります。

同じくねくね仲間の線虫や、寄生虫のサナダムシの名前には、「虫」、「ムシ」がついています。

線虫やサナダムシが「虫」なら、ミミズも「虫」ではないかということになりますが、どうなのでしょう?

虫と昆虫はイコールではない!

その混乱は、私たちは「虫」と「昆虫」とを混同していることから生じると思われます。虫イコール昆虫ではないのです。

昆虫の特徴としては、「6本の脚がある。頭部・胸部・腹部の3つでできている。羽がある。」ことが挙げられます。

一方、日本では昔から、小さな生き物や目に見えないけれど悪さをするものをみんな「虫」と言っていました。

そのため、ミミズもサナダムシもイモムシもクモ・トカゲなども、小さな生き物は、みんな虫と呼ばれてきたのです。

 

ちなみに、日本には「腹の虫」、「疳の虫」という言葉もありますね。

怒りが収まらなかったときや、赤ちゃんの夜泣きが収まらなかったとき、昔の人はお腹に悪い虫がいるのが原因だと考えていたからです。

ミミズは昆虫ではない!

虫という言葉は、生物学上の分類ではありません。

ミミズを昆虫に似ている小動物として、一般生活上の言葉では虫といってもいいのですが、ミミズを昆虫と分類するのは間違いだということになります。

まとめ

イモムシは、蝶や蛾の幼虫なので昆虫です。

ちなみにクモは昆虫ではなく節足動物です。

 

フナムシも節足動物で、カニ・エビの仲間の甲殻類です。単細胞のゾウリムシは、繊毛虫ゾウリムシ属に属しているので昆虫ではありません。

一方で単細胞のミドリムシは、昆虫ではなくユーグレナ植物に分類されます。

いままでひとくくりに虫と呼んでいたものにも、いろいろな種類があるんですね。分類学の奥深さに気づかされました。

(ライター sensyu-k)