カバの歯は大きく発達していますが、あれは何故なのでしょうか?カバは確か草食動物で、そうであれば歯は臼のようなもので充分なはずですね。

しかしカバの歯は口からはみ出るほど長く牙のようです。

カバの特徴

カバの特徴は何といっても体が大きい事です。

動物園や画像などで見慣れていて当たり前の様な気もしますが、カバの大きさと体重は度を越したものではないかと思われるほどです。

成獣で体長は3,8m~4,5mにもなり、体重は2500kg、重いカバで3500kgを超えます。

四肢も短くどっしりしています。脚指は4つの蹄になっています。カバは走ると最高で時速40kmは出るのだそうです。

2,5トンの動物がそんなスピードで走っていたら驚いて腰が抜けるかも知れません。

水中のカバ

カバは水中での生活が多い事でも知られます。

昼間は水中で過ごし、夕方になると餌を求めて陸に上がるようです。

 

あの巨体ですから、水の中に入る時は肺を空気で膨らませて、体の密度を小さくしているようです。

なぜカバが水の中に入りたがるかというと、カバの皮膚は乾燥しやすいからだとされます。

 

カバの皮膚には皮脂腺や汗腺がないので、アフリカ大陸のサハラ砂漠より南の川の近くなどに生息しているにもかかわらず、皮膚を保護したり体温の調節をする為に皮脂を出し汗をかく事ができないのです。

 

また、体毛もほぼありません。

口の周りに少しある程度です。カバは、強い紫外線から皮膚を守る為にピンク色の分泌物を出しています。

カバの頭

カバの頭の大きさや顔のつくりも個性的です。

体の大きさに比例するかのような頭部には、鼻息の荒らそうな鼻孔、飛び出た眼球がほぼ直線的についています。

 

少し上に外耳があります。水の中にいても周囲の音を聞くためです。

カバの目は飛び出ているように見えますが、骨格を見るとずいぶん大きな眼球に見えます。

 

カバの頭部はまるで恐竜のようです。下顎の発達は草食動物とは思えないほど頑丈です。

カバの噛む力は1000kgともいわれるほどです。

 

カバは水面から目を出してじっとしている事があります。

動物の目は一般に黒目がちに見えます。

 

それは人間の眼球と異なり、単に黒く見える部分が外から見えるような作りになっているからだそうです。

カバの目もよく見ると白い部分が見える事があります。

カバの口の中

大きな頭部の中でも極めて大きいのが口周りです。

よく見るとカバの頭部の半分くらいは口のようにも見えます。

 

カバは150度近くも口を開け、あくびのような行動をします。

人間がそのような大あくびをしたら顎関節が外れます。なぜあんなに口を開けるかというと、一説には威嚇とも言われますが、下顎から生えている牙のような犬歯を見せつける行為だともいわれています。

 

実際、カバの顎には秘密があります。

カバが口を開けた時に見える大きな門歯と犬歯は、生涯伸び続ける無根歯です。

 

通常であれば少しづつ磨り減るので、歯が異様に伸び切ってしまう事はないようですが、中には伸びすぎてしまう場合もあるようです。

前歯にあたる門歯は上顎、下顎合わせて4本で、下顎の牙のような歯が犬歯です。

 

他の歯と合わせてカバの歯は40本だそうです。また、カバの歯は黄色いですが、カバの歯の表面のエナメル質が黄色いものだからだそうです。

カバは主に草食ですが、その気性の荒さから他の動物と争いになる事もあるようです。

有名な糞飛ばしもあれだけの巨体ですから、相当インパクトがあります。

 

動物園で飼育されているカバの歯が伸びすぎた場合、ノコギリで整えます。

動物園でカバの歯を見て何か違和感がある、という人もいるかも知れません。

 

ノコギリなどで切ったカバの歯の断面は楕円状になっているので、ごく普通の「牙」のような鋭さがないからです。

柔らかいものを多く食べると、歯が伸びすぎる傾向にあるともいわれます。

カバの出産

カバは哺乳動物です。群れをつくり一夫多妻制のようです。

カバの交尾時期は乾季に入る頃です。妊娠期間は8ヶ月程度とされ、雨季に入る頃に出産します。

 

カバは出産や授乳も水中で行うとされます。

水中でのカバは泳ぐというよりもがくといった感じにも見えますが、スピードはまずまずといったところです。

 

子供のカバは体重25kg~50kgといわれます。

カバの体重から考えるとそう重くもない気がしますが、そんなに大きいものを産むにはやはりしっかりした胎盤を備える必要があります。

 

外見からは分かりにくいですが、メスのカバには腹のあたりにへそがあります。

へそは母体の中で胎児を大きく育て栄養補給をするものの証拠ですから、カバは有胎盤類である事になります。

カバの分類について

偶蹄目といわれるカバでしたが、最近ではカバは鯨偶蹄目ではないかともいわれます。

他の蹄をもつ動物よりも、より鯨の仲間に近縁ではないかという事です。偶蹄目は蹄のある動物の中でも蹄の数が偶数である動物の事です。

 

他にはウシ、ウマ、イノシシ、シカ、ラクダ、キリンなどがいます。

蹄が奇数の動物は奇蹄類ともいわれ、蹄のある動物は合わせて有蹄類といわれる事もあります。

 

これは正式な動物の分類というわけではないようですが、カバがどのように今のカバの姿になったのかを辿る上でひとつの道しるべとなるものかも知れません。

というのも、鯨偶蹄目にはクジラ、ネズミイルカなどが入り、共通の祖先としてはアントラコリウムという絶滅種が有力とされています。

 

しかし蹄をもつ動物は基本的に草食性の哺乳類です。カバの歯は何のために牙のように発達させたのは何故なのか、不思議なのです。

まだカバの祖先ではないかという動物の化石は見つかっておらず、そのためカバの歯はちょっとした謎でもあります。

 

現生動物でカバの仲間とされるのはコビトカバですが、よく見るとあまりカバには似ていない気もしますね。

他にカバのような動物がいないので、仲間といわれるとそうなんだ、と思ってしまうようにも思えてきます。

カバの歯の不思議

動物園にいるカバは水の中でゆっくりしているように見えます。

実際ゆっくりしているのでしょうが、飼育下では縄張りを守る必要もなく、争う事もないからかも知れません。

 

カバは基本的には草食ですが、餌が足りなくなると死肉を食べる事もあると言われます。

肉食ではないにも関わらず、なぜあそこまで立派な歯を必要としているのでしょうか?もしかするとカバの歯は強力な武器であり、それを大きい口のなかに隠しているのかも知れません。

いかにも大暴れしそうな動物よりも、カバは巧妙で危険な動物なのかも知れません。

(ライター:おもち)