アケビコノハという蛾をご存知でしょうか?
成体もさることながら、幼虫もまた特徴的な形状をしています。
生き残るためにビジュアルを進化させた蛾、アケビコノハについて詳しくご紹介します。
アケビコノハの特徴と生態
アケビコノはチョウ目ヤガ科の昆虫で大型の蛾の一種です。
日本、中国からヒマラヤ、ロシア連邦アムール地方に分布します。
日本では北海道、本州、四国、九州、対馬、トカラ列島、沖縄島、石垣島、西表島などに5~11月にかけて出現します。
前翅は枯葉状で緑褐色、後翅は黄色や橙色に黒色紋があります。
静止時にはこの葉では後ろ翅を完全に前翅の下に隠して枯れ葉そっくりに擬態します。
前翅の長さは50㎜程もあり、人間の眼で見ても大きさも形も枯れ葉そっくりで、枝についていれば木の葉が引っかかっている様にしか見えず、地面に落ちていれば枯れ葉が落ちている様にしか見えません。
裏返すと橙色の模様が現れ、初めて枯れ葉ではないと気付きます。
成虫はミカン、ナシ、ブドウ、モモなどの果実を吸汁します。
アケビコノハの幼虫
アケビコノハの幼虫は滑らかな芋虫で、体全部に大きな目玉模様があり、刺激を受けるとその部分を持ち上げて頭を内側に折り曲げるようにします。
これは蛇が威嚇する時に首を持ち上げる様子に似ていると言われ、それを模しているともいわれています。
これは目玉模様が目立つ姿勢で、鳥類などの攻撃を避け、威嚇の意味をあると考えられています。
紫がかった黒色の幼虫と緑色の幼虫を見かけることがありますが、個体差である場合ももちろんですが、脱皮に伴って幼虫の体色が変化していくこともあるようで、茶色の幼虫が脱皮に伴って終齢幼虫になる頃には緑色になっているということも良くあるようです。
幼虫はゴヨウアケビやミツバアケビ、ムベ、ヒイラギナンテン、メギ、カミエビ、コウモリカズラ、ヘビノボラズなどの葉を食べます。
アケビコノハの幼虫や成虫は毒を持っていません。
終齢幼虫を経た幼虫はアケビなどの葉の中に真っ黒い蛹を作ります。
蛹になってから12~16日ほどで羽化しますが、飛ぶのが下手で昼間はほとんど動かないで隠れていることが多いようです。
アケビコノハと人間の関係
アケビコノハ庭木などでも多発することがありますが、多発は1年程で終わります。
食害によって木の調子が悪くなったり、枯れてしまったりした報告はなく、外観が多少悪くなってしまう程度のようです。
しかし、そうは行っても果樹園などでは害虫です。
成虫は見た目によらず強靭な口吻を持っていて、果実に吸って吸汁します。
果実に食害痕が出来てしまうと出荷できなくなるので果樹園では妨害対策が欠かせません。
果樹園全体をネットで覆ってしまうという方法が一般的です。
6㎜程度の細かい目の紋をかけ、アケビコノハが果実に近寄れないようにしてしまいます。
また、アケビコノハは夜行性の蛾です。
1ルクス以上の明るさがあるとエサを食べなくなる習性があり、果樹園ではその習性を利用して防蛾灯などを置いています。
アケビコノハの幼虫に興味がある人はぜひアケビなどの植物のあるところに出かけてみましょう。
幼虫を見つけるポイントは食害されている葉を見つけることと、地面に落ちた糞を見つけることです。
糞や食痕を見つけたらその周辺にかならずアケビコノハの幼虫がいるはずです。
また、成虫の擬態っぷりを見たい人は果樹園に出かけてみてはいかがでしょう。
運が良ければ飛んでいる姿を見ることもできますし、注意深く目を凝らしてみたり、枯れ葉を触ってみたりすれば、アケビコノハの成虫を見つけることが出来るかもしれません。
(ライター ナオ)