「虫がつくのはおいしいお米の証拠」など、低農薬や有機栽培のおいしいお米だからこそ虫がつくんだといわれていた時代もあったようですが、虫が湧いたお米を食べる気にはなれませんよね。

世界中で穀物につく害虫として知られている虫、コクゾウムシの生態やどうしたらつかないようにできるかなどについて調べてみました。

コクゾウムシとは?

コクゾウムシは、ゾウムシという甲虫類の仲間です。

イネ科穀物類を食べる害虫として世界中で嫌われ者になっています。

成虫の体長は約3mm、幼虫は0,5mmで、赤褐色や暗褐色の細長い形をしています。

象のように長い口吻をもち、穀物に穴を開けて産卵し、孵化した幼虫は穀物を食い荒らします。

像の鼻のような口吻をもち穀物を食い荒らす虫ということが「穀象虫」と名付けられた由縁と思われます。

 

コクゾウムシは、1ヶ月程度で成虫になり寿命は100日~200日ほどです。

強固な後翅をもち飛ぶことができ、優れた嗅覚でエサの臭いをかぎつけ穀物の貯蔵庫や貯蔵袋に侵入します。

気温が18度以下になると活動を休止し木の樹皮や草むら、民家の中では壁や床などの隙間に隠れて越冬し、春になり暖かくなると活動を始めます。

1匹のメスは年に3、4回、一度に200個以上の卵を産みます。

エサは、米、小麦、トウモロコシなどの穀物で、パスタや乾麺などを食べることもあります。

コクゾウムシは縄文の昔から

コクゾウムシは稲作栽培技術とともに、米にくっついて日本に侵入したと考えられてきました。

ところが、稲作が確認されていない縄文時代の土器からもコクゾウムシの圧痕が発見されています。

土器を作る土に混入したコクゾウムシは焼かれると燃えてしまいますが、その虫の形は残ります。これがコクゾウムシの圧痕です。

 

稲作伝来前にコクゾウムシがいたとすると、何を食べて生息していたのでしょうか。

日本の広葉樹林帯を形成するドングリ類をエサにしたり、卵を産みつけたりしていたのではないかと考えられています。

信長時代のコクゾウムシ

織田信長の居城である清洲城があった清洲城下町遺跡からは、多数のコクゾウムシの成虫の化石が発見されています。

ほかにも貯蔵穀粒を好む昆虫類が発見されていることから、遺跡の周辺には穀物の貯蔵施設があったと推測されます。

 

また、名古屋城三の丸遺跡からも発酵した漬物やぬか床を好むヒメイエバエとともにコクゾウムシも発見されました。

この遺跡の場所は漬物やぬか床ではなかったかと言われています。

日本人とコクゾウムシには古くからの長い歴史があったのです。

米好き昆虫の仲間

コクゾウムシのほかに、お米を好む昆虫として有名なのが、ノシメマダラメイガという蛾です。

コクゾウムシが成長してノシメマダラメイガになると勘違いしている方がいるかもしれませんが、両者は全く別の昆虫です。

コクゾウムシは、小型の甲虫で、お米の中に卵を産み、幼虫はその中で成長しさなぎとなって成虫になり、内側から食い破って外に出てきます。

 

ノシメマダラメイガは、1cm程度の蛾で、お米の周りに卵を産みます。幼虫はお米の外側から胚乳部分やぬか層を食べ、繭を作ってさなぎになり成虫へと羽化します。

成虫はお米を食べません。

 

コクゾウムシの卵と幼虫は米の中にいるので見えず、ノシメマダラメイガの卵と幼虫も米の外にはいますが、白色で米にまぎれているのでわかりにくくなっています。

したがって、コクゾウムシもノシメマダラメイガも成虫の姿しか見えないので両者の混同が生まれるのでしょう。

コクゾウムシの駆除方法

コクゾウムシ自体には毒はないので、食べてもお腹をこわしたりすることはないとのことですが、食べるどころか遭遇することも避けたいですよね。

コクゾウムシの駆除と予防の方法を調べました。

駆除

・米びつなどにコクゾウムシを発見したら、物理的に箸などで一匹一匹除くかフルイにかける。

・コクゾウムシは光に弱いので、天日干しをする。

予防

・米びつなどに唐辛子を入れておく。

・市販されている食品由来成分の防虫剤、忌避剤を入れておく。

・穀類は冷蔵庫の野菜室など冷暗所に保管する。

・家の中にこぼれた米粒、小麦粉などを放置しておかないで掃除する。

まとめ

コクゾウムシやその卵・幼虫には毒はないといっても、一度ついたお米や乾麺などを食べるのは避けたいものです。

そのためには、コクゾウムシがつかないように予防することが大切です。

お米などは冷蔵庫に保管し、食べ物や調味料は密封保存し、保管しておく戸棚などの場所は、こぼれがないようにしっかりと掃除をしておくとよいでしょう。

(ライター sensyu-k)