桜毛虫という虫をご存知ですか。読み方は「サクラケムシ」とそのままのようです。
桜毛虫について
桜毛虫が発生するのは年に一回、8月から9月頃です。青葉になった桜の葉の裏にびっしりいることがあります。
その頃の桜毛虫は赤黒い体色で、体長は5mmくらいです。遠目に見るとミミズのようでもあります。
白くふわふわした長めの毛がついています。
葉を食べて成長した桜毛虫は黒っぽくなり、白い毛の量も増し食欲も増します。桜毛虫は毛虫の姿をした幼虫です。
蛾の幼虫である桜毛虫
モンクロシャチホコという蛾の幼虫時代は、桜毛虫とよばれます。
おもに街路樹として植えられている桜の木につくことが多いことからついた呼び名のようです。
桜のほか、ウメ、ナシ、クヌギなど高木の高いところについています。モンクロシャチホコの幼虫はバラ科の木の葉が大好きなようです。
人に害はなく毒もありません。
ただ、街路樹の桜などは初夏や夏になると青葉になっているので日差しがあたると赤黒さがより目立って気持ち悪く、落ちてきたらどうしようと思うこともあるでしょう。
桜毛虫はわりと高いところにつくので目視でどれくらいいるのか確認しにくいのですが、糞の量でわかります。
木の根元に黒くて丸いものがたくさん落ちていたら、桜毛虫が桜の木の葉を思う存分食べた証拠です。
あまりに葉を喰いつくすようだと駆除対象になってしまいます。高所にいるので薬剤を使います。
桜毛虫の一年と面白い呼び名
桜毛虫は年に一度、発生します。その後桜毛虫たちは7月から8月にかけて羽化し、成虫になります。
桜毛虫はモンクロシャチホコというチョウ目の蛾の一種です。
モンクロシャチホコは成虫になってからも面白い呼び名がついています。
人面蛾です。成虫のモンクロシャチホコは体色がベージュがかった白なのですが、黒い模様がありそれが人の顔にように見えることからついた別名だそうです。
ほぼ全国的に見られるシャチホコ蛾の一種です。
そういえば真夏にそんなような蛾を見たことがあるな、と思う人も多いでしょう。
翅を広げた時の大きさは5mmくらいでメスの方がやや大きく、オスメス共に毛が多くもさもさしてボリュームがあります。
成虫になったモンクロシャチホコは交尾後、葉の裏に産卵します。
卵の数は100~300ほどです。孵化した幼虫は蛹をつくり越冬します。
そしてまた、気温が上がる時期になると、街路樹などの葉を食べに桜毛虫がやってきます。
モンクロシャチホコの幼虫は頭とおしり部分が黒いのですが、危険を感じるとその部分を持ち上げるような恰好をして威嚇することから「フナガタムシ」とも呼ばれます。舟の舳先ととも(船尾)を模したような姿です。
現代の大きな船よりも昔の舟のかたちに似ていますね。モンクロシャチホコは漢字だと「紋黒鯱」です。
モンクロシャチホコの幼虫時代のフナガタの威嚇姿がシャチホコに似ていること、成虫になった時の紫がかった黒い斑点が由来となっているようです。
モンクロシャチホコの天敵は鳥類などです。
桜と桜毛虫
別の呼び方が多いということは、昔から桜といえば桜毛虫、モンクロシャチホコはメジャーな存在だったに違いありません。
もともと日本には各地に人工的に植えられた街路樹としてソメイヨシノという桜の品種があります。
桜というとソメイヨシノをさす場合も多いでしょう。
ソメイヨシノは、江戸末期頃江戸染井村の職人が作出した桜の品種で「吉野桜」と命名されました。職人が集まる集落のようなものを村、と呼んだりします。
ソメイヨシノが本格的に各地に広まったのは明治以降だそうです。
名所と名高い奈良の吉野の山桜にちなんで命名された吉野桜ですが、本家の吉野桜と紛らわしいのでソメイヨシノとしたと伝えられます。
吉野山まで桜見物に出向けない遠方の人々はさぞ喜んだことでしょう。
現代でも桜の名所の吉野桜は、山桜の一種で野生種です。
ソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒガンの交配種だといわれてきましたが、実はそうでもないらしいという説もあるようです。
桜毛虫
桜の木には毛虫がいる、と聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
見た記憶があるのは、体色が黒く白い毛がびっしりついた終齢のモンクロシャチホコの幼虫です。
道路の上をくねるようにして移動しているのを見た気がします。
桜の木は花の開花時期以外はあまり関心をもたれないような気がしますが、青葉の桜もまた綺麗なもので冬の落葉前には日のあたり具合により紅葉します。
(ライター:おもち)