大きな体躯にゆったりとした歩みが気色悪いコモドドラゴンですが、万が一人間が噛まれたらどうなるのでしょうか。
コモドドラゴンの特徴
コモドオオトカゲ、通称コモドドラゴンはインドネシアのコモド島を含む約5島に棲む、インドネシア固有種であり絶滅危急種です。
現存する爬虫類の中では最大サイズのトカゲの仲間です。
発見されたのは20世紀初頭のようですね。
爬虫類特有の古代生物を思わせる皮膚に、四肢についたカギ爪、歩き方や時折見え隠れする長くて細い舌と共に垂れる唾液などが外見の特徴です。
卵生で生後5年くらい経つと体重は25kgになり、大人の個体になると大きいもので尻尾も含めた体長は3m、体重は70kgほどになります。
コモドドラゴンは旺盛な食欲の持ち主であることから、胃の内容物などによって体重が変わることがあります。
飼育下のコモドドラゴンはもっと重いこともあります。
肉食でシカやブタなどの哺乳動物、ヘビなどのトカゲ類その他多くの動物を餌としています。
コモドドラゴンは7、8月に交尾期を迎えその時期にはオス同士が尻尾を補助的に使い、後ろ脚で立ちメスを取り合います。
メスの産卵期は9月頃で一度に30個ほど産卵し、約8ヶ月で孵化します。
また、コモドドラゴンは単為生殖を行い共食いもします。
単為生殖の一例として、イギリスで飼育されていたメスのコモドドラゴンが無精卵を産みその卵が孵化したという事があったようです。
寿命も長く、彼らの棲息地にはこれといった天敵は見当たりません。
コモドドラゴンの歯と唾液
コモドドラゴンは尖った歯を持ちその間に毒管をもっています。
毒を持つ動物の場合、歯又は毒のどちらかが弱まる傾向にあるようですが、コモドドラゴンの場合はどちらも強いままなのです。
コモドドラゴンの毒腺のようなものの正確な仕組みはよく分かっていないようですが、毒物は血液の凝固を妨げるように働く種類のものだそうです。
その為、コモドドラゴンが一度噛みつき出血すると、本来の血液凝固システムが働かずにどんどん出血する可能性があります。
血液凝固の仕組みは人間でいえば、何らかの理由で出血が起こった時に血中の血小板が働きさらにフィブリノーゲンがフィブリンとなり血小板と一緒に働く事で血液を凝固させるシステムです。
この状態だと血栓ができた状況ですから、さらにプラスミンという物質が出てきて血栓に働きかける事で血液の流れを正常に戻します。
コモドドラゴンは一度に多量の肉を消化できるといった食溜めのようなこともできるので、一度大きな獲物を仕留めると安心です。
食後は砂地などに寝そべり胃をこなしています。
彼らが島に生息する限り、狩りに失敗したり飢え死にすることはまずなさそうです。
コモドドラゴンの捕食スタイル
コモドドラゴンの狩りはまちぶせ型です。
獲物が付近にいる事を優れた嗅覚で察知し、身を潜めて獲物が近づくのを待ちます。
コモドドラゴンは100mほどなら時速20kmで移動できるので、十分な距離まで詰めてから一気にとびかかります。
尖った歯で肉を引き裂き、例の毒を仕込む事で獲物の血圧を急激に降下させます。
同時に毒物も注入しているので、コモドドラゴンに喰いつかれた生物は激しい出血と共に絶命するのです。
コモドドラゴンは無駄な動きはしない主義みたいです。
コモドドラゴンは水中を泳ぐ事もあるようです。
コモドドラゴンは口腔内に残った食べ物のカスから腐敗菌を含む唾液を分泌していると考えられています。
獲物に噛みついた際にこれらの腐敗菌が獲物の体に敗血症をおこさせているのだと考えられていたのですが、それは違うようです。
しかもコモドドラゴンは四肢の一部に損傷をうけ、不衛生な環境下でも生きています。
毒と歯の威力も相当なものですが、コモドドラゴンが具体的にどのような体の仕組みで生きているのかは不思議な点も多々あります。
コモドドラゴンの血液
アメリカの研究チームによると、コモドドラゴンの血液中にはある特殊な効果をもつ物質が含まれているのだそうです。
抗菌ペプチドという菌に強い物質です。
その構造をまねて人工的に作成された物質「DRGN-1」というものが、多剤耐性菌に対しきわめて高い耐菌性をもつ事がわかりました。
今のところマウスの実験において、細菌に対する効果があると認められているようです。
細菌物質は身をまもるために、バイオフィルムと呼ばれる膜をつくりますが、そのフィルムを破壊し細菌の増殖を抑制する効果が認められたそうです。
現代に生きる人間にとって細菌のもたらす感染症は深刻ともいえます。
多剤耐性菌というのは、多くの抗生物質(抗菌薬)が効かない又は効きにくい細菌のことです。
現時点でも抗菌薬の種類は非常に多くあります。
多剤耐性菌が体内に入っても全ての抗菌剤が全く効かないという事ではなく、治療が難しくなるということのようです。
菌にも多くの種類があります。
多剤耐性菌についてもわからない事が多くあるようです。
このような事情からコモドドラゴンの血液に期待が集まっているようではあります。
ただこの動物からどのようにして安全に血液を採取するのでしょうか。コモドドラゴンはしばしば人間を襲っています。
記録によると30人ほどがコモドドラゴンに噛まれ、絶命した人間は5人ほどいるそうです。
最近では2015年にネブラスカ州の動物園で飼育されていたコモドドラゴンに女性飼育員が噛まれたそうです。
抗生物質などの投与で一命をとりとめたようですが、回復には6ヶ月ほどを要したのだそうです。
コモドドラゴンと人間
コモドドラゴンに噛まれたら丸腰の人間はひとたまりもありません。
ノコギリ状の歯で噛まれると同時に唾液に含まれる腐敗菌も同時に体内に入り、毒も注入されます。
また、コモドドラゴンに襲われたら、どんな人間でも多少はびっくりすると考えられます。
何となく臭そうでもあります。
あのむくつけき姿を見ただけでショックを感じる事もあるでしょう。
コドモのコモドドラゴンは木の上で過ごす事が多いようですが大人の姿に成長すると木には登らないようなので、いざという時はきわめて迅速に木に登りましょう。
コモドドラゴンは幼いころから飼育すると意外に人間に慣れる生物であるといわれますが、飼育していたとしても人間に対してどのような認識を持っているのかは図りかねるように思えます。
(ライター:おもち)