カツオのエボシという名前の生物をご存知でしょうか?
聴きなれない名前のちょっと美味しそうな、ちょっとおめでたい名前の生きもの。
今回はそんなカツオノエボシについて詳しくお話しします。
カツオノエボシの特徴
カツオノエボシはクダクラゲ目カツオノエボシ科に属する刺胞動物です。
猛毒を持ち、刺されると強烈な痛みを伴い、死亡例もあるという、そう電気クラゲのこと。
1個体に見えますが、実は多くのヒドロ虫という動物が集まって1個体を形成している半永久的な群体です。
大きさは10㎝程。透き通った藍色の浮袋を持っていて、とてもきれいです。
中には主成分が二酸化炭素の気体が詰まっていて、これで海面に浮かんでいます。
浮袋は常に膨らんでいるわけではなく、必要に応じてしぼんだり、一時的に沈降することもあります。
浮袋には三角形の帆があって、風を受けて移動しますが、カツオノエボシ自身には遊泳力はほとんどありません。
浮袋からは海面下に職種が伸びていて、平均で10㎝程度。長いものでは約50㎝にも達し、触手が何らかの刺激を受けると表面に並んでいる刺細胞から刺胞という毒の針を発射します。
刺胞には毒が含まれていて、獲物の小魚や甲殻類を殺して食べたり、防御のために使われます。
ヒドロ虫はそれぞれが触手になるもの、ポリプになるもの、そして刺胞嚢になるものとそれぞれに役割があり、すべてが融合して一つの個体になります。
体壁は一続きになり、内部は栄養や老廃物などを運搬する空洞ができます。
カツオノエボシの名称
カツオノエボシは本州の太平洋沿岸にカツオが到来する時期に海流に乗ってきます。
浮袋の見た目が烏帽子に似ていることから、この名前が付けられたと言われています。
日本では一般的に電気クラゲの方が有名ですが、これは刺された時の痛みの衝撃を例えたもの。
決して電気を発電するわけではありません。
カツオノエボシに注意!
カツオノエボシに刺されるとかなりの痛みを伴うことは先にもお話ししましたが、それだけではなく、傷口もかなり傷みます。
刺されてから3日間ほどは熱が出て寝込むこともあり、赤く腫れあがった部分の腫れが引いても傷跡はケロイド状の傷跡になってその後何十年も残ります。
一度刺されると次にアナフィラキシーショックを起こす可能性があるので注意しなければなりません。
カツオノエボシは普段は沖合を優雅に漂っています。
しかし、風によって海岸近くまで吹き寄せられてくることがあり、この時に被害が起こりやすいと言われています。特に台風のあとなどは様々な動物尾一緒に打ち上げられていることも多く、乾燥すると青いプラスチックケースのような状態になります。
生きている時は体は透明で青っぽいので海の色に溶け込んでしまい、遠くからでは見つけることが出来ない上に、毒を発する触手部分は更に見つけにくいです。
生きている時はもちろんですが死んでいる時や、乾燥したカツオノエボシにも注意しなければなりません。
何故なら、刺胞は物理的な刺激に反応するものであり、生きているか死んでいるかは全く関係ないからです。
乾燥した個体でも水分が与えられれば復活しますので、容易に素手で触ることは危険です。
カツオノエボシの天敵
恐ろしいカツオノエボシですが、彼らの毒をものともしない生物もいます。
エボシダイという地中海や大西洋東部以外の世界全域に生息する体長25㎝程の魚は、この毒に対して耐性を持つ時期があり、その間はカツオノエボシの触手を住居にして共生することがあります。
また、アオミノウミウシというウミウシは一生を通してカツオノエボシの毒に耐性を持っています。
そして、このウミウシがカツオノエボシにとっては最大の天敵です。
アオミノウミウシの体長は2~3㎝、カツオノエボシの5分の1ほどの大きさです。しかし、簡単にカツオノエボシをエサにしてしまうのだそう。
他にもマンボウやアオウミガメ等がカツオノエボシをエサにしています。
皆さん海で遊ぶときにはくれぐれもご注意を。
(ライター ナオ)