よく似ている「イナゴ」と「トノサマバッタ」。
もしかしたら、中には同じ種類だと思っている人もいるかもしれません。
しかしイナゴとトノサマバッタは同じバッタ目ではありますが、違う種類の昆虫です。
今回はそんな彼らの見分け方や違いについて、まとめていきたいと思います。
イナゴとトノサマバッタの見分け方
パッと見ではその違いが全く分からないほど、よく似ているイナゴとトノサマバッタ。
しかしやはり別の種なので、全く同じと言うわけではありません。
大きさ
イナゴが全長約3cm程なのに対し、トノサマバッタは3cm~5㎝と一回り大きいサイズです。
しかし個体差もあるので、トノサマバッタより大きなイナゴもいることでしょう…。
一つの目安にはなりますが、大きさだけでの判断は、確実ではありません。
翅や脚
トノサマバッタは飛翔能力に優れているため、翅が大きいという特徴があります。
また、トノサマバッタには脚の半分がオレンジ色だという特徴も。
(ただし、中には全体的に褐色のトノサマバッタもいるため、確実ではありません。)
それに対してイナゴは、トノサマバッタほど翅が大きくはありません。
特に「コバネイナゴ」はその名の通り翅が小さいので、簡単に見分けることができますよ。
しかし中には「ハネナガイナゴ」という翅が長い種類もいるので要注意。
喉の突起
両者を見分ける最も確実な方法…それは喉の突起を確認すること。
イナゴやトノサマバッタを裏返して喉のあたりを見ると、喉仏のような突起物が確認できる場合があります。
その突起物のある方がイナゴ、ないのがトノサマバッタです。
これが唯一両者を見分ける外見上の明確な違いなので、ぜひ覚えておいてください。
なぜトノサマバッタは佃煮にならないのか
日本においては数少ない昆虫食である、「イナゴの佃煮」。
しかし、「バッタの佃煮」と言うものは見たことも聞いたこともないですよね。
同じような見た目なのに、どうしてイナゴだけが食用とされるのでしょうか。
それにはまず、イナゴを食べるようになったルーツを知っておかなければなりません。
イナゴは田んぼにも多く生息し、その名の通り稲を食べるため、農家の人々にとっては迷惑な害虫だったのです。
そこで害虫駆除と食料確保の目的から、イナゴは食用とされてきたのです。
稲を守れて貴重なタンパク源も確保…食料の少ない時代には、一石二鳥の解決策だったのですね。
そう考えるとトノサマバッタは、田んぼよりも草原などの方によく生息しているので、稲に対する被害は少なかったのでしょう。
また飛翔能力が高く捕まえるのも容易ではないため、より大量で捕まえやすいイナゴのほうが食用とされてきたのも頷けるのではないでしょうか。
味に関しても、トノサマバッタよりも美味しいと言われています。
ただしトノサマバッタの方がより美味しいという情報もあるので、気になる人はぜひ食べ比べを…。
(私は、どちらであろうとも絶対に食べるのはご遠慮したいですが。)
蝗害について
「蝗害(こうがい)」とはバッタ類が大量発生し、農作物に対して深刻な食害を及ぼすことを言います。
かつては蝗害が起こると飢饉に陥り、世界各国ではそのために戦争が中止したこともあるほど。
まさに自然災害の一種と言っても過言ではないほどの脅威だったのです。
蝗害の「蝗」はイナゴのこと。
ただし、実際にはイナゴが蝗害を起こすことはありません。
蝗害を引き起こすのは、トノサマバッタやサクトビバッタなどのバッタたち。
しかし、日本では環境的にトノサマバッタが蝗害を起こす可能性はほとんどないそうです。
虫が苦手な人にとっては、蝗害なんて恐怖以外の何物でもありませんからね…。
もしも日本国内で蝗害が起こるようなことがあったならば、佃煮にされていたのはトノサマバッタの方だったかもしれませんね。
イナゴとトノサマバッタの違いについてのまとめ
外見上の違いはわずかではありますが、慣れてくると一目で違いを見分けることも出来るようになるそうです。
次に見かけた時には、イナゴなのかトノサマバッタなのか、じっくりと観察してみてはどうでしょう。
(ライター もんぷち)